第34話若狭国




若狭国わかさのくに武田信豊たけだのぶとよと義元の親子で攻めて来たんだよ。


服部半蔵の話だと、武田信統は室町幕府12代将軍・足利義晴より晴の一字を貰って晴信と改名。

その後も足利義輝より偏諱を受けて義元と改名。

ころころ将軍に取り入って名を変えるんだ。

初名は信統→晴信→義元


だから将軍との関係も親しい関係なんだって。

今の将軍の足利義輝あしかがよしてるからも、俺の悪口を散々聞かされたらしいぞ。

足利義輝も朽木から京へ帰って間もないはずだ。


武田義元は、めちゃくちゃ強かったらしい。

弟の信方を当主にしようとする重臣の粟屋勝久あわやかつひさと戦い勝利。


弟の元康に家督を譲ろうとした信豊(父)を近江国に追放。


そんな状況で俺が近江に侵攻して来た。


武田信豊にとっちゃーーたまったものではない。

将軍から聞いてるからね。殺されると思ったにちがいない。

あんなに世話になった近江をあっさり見捨てたよ。

そして、若狭へ逃げ帰った。


あんなにケンカしてた親子なのに、俺に対しては意気投合。


「三言なるクソ坊主を成敗して、将軍からお褒めの言葉を頂きましょうぞ」


「よく言ってくれた義元」


そして、互いに抱きつき泣いたそうな・・・あれあれだよ。


そんな話の内容だったな。



「それで、向こうの動きは・・・」


「昼には、先発隊が出るようです」


俺は服部半蔵にこそこそっとささやいた。


「分かりまいた」とササササと去った。





「三言さま、向こうも陣を張るようです」


「くれぐれも攻撃を仕掛けるな。向こうが向かって来るまで待て」


「それは何ゆえでしょうか・・・」


「作戦を実行してる最中なんだ。だから時間稼ぎがしたい」


「かしこまりました」



ああ、稲葉歳三は、気合が入ってるね。

鉄砲隊は加賀で留守番だから、ライフル隊を任せてる。

褒美にライフルを10~20丁をやろうかな・・・






その頃。

漁船が若狭の海から上陸。

ライフル隊1000人、鉄砲隊1000人と大勢がザザザザザと行進している。


目指すは留守で数が少ない城。


「地図だとこっちだ!!」


「本当に、たしかか・・・」


「間違いないって、方位磁石もこっちだと指してるから」


「お、ホントだ」





ようやく見えた城。


「あれが目指す城か・・・行ってくる」


「おいおい、誰も止めないのか」


「暴れん坊を、誰が止められるって言うんだよ。止められるのは、三言さまだけだ」


降り注ぐ矢もへっちゃらで火縄銃の鉛球も平気だった。

そのまま門に金棒を何度も何度も叩き、とうとうぶち破る。


手向かう兵には容赦なく、金棒で叩きつける。

「グシャーー」と血が飛び散る。


更に捕まえた兵の首もへし折る。


この男は尋常じんじょうでない。

身長は2メートル越え。力もバカ強い。

それで素早い動きが出来る大男だった。


本来、坊主であった。

三言に会って改心。


そして、防刃と防弾の服を着用。大切な頭に角2本の兜を被っている。

手甲と具足に胸と腰も軽くて丈夫な合金製。

それら全てが赤く塗りたくっている。


暴れん坊と赤鬼の2つ名を持つ男だった。

そして、決して本名を名乗らない。なにやら願掛けをしてるようだ。




「今度は、俺らの番だからな」


次の城では、皆から止められ暴れん坊は金棒を地面に叩きつけた。


「早く終わらせろよ」


「先発隊行くぞ!」


竹で何層にもした盾で防御しながら門に突っ込んだ。

矢も跳ね返して、鉄砲の鉛球も防いだ。


「こりゃー無敵だ」


「今だ!投げろ」


投げられたのは火炎瓶だ。

一色義龍が使った酒の壷でなく、本物の瓶を使用。


門に当たって砕けた瞬間に燃え広がる。


敵側は、門を開けて消したかったが、目の前に兵が待構えてるからどうしようもない。


あれよあれよと燃えている。

中には、門の向こうまで火炎瓶を投げ込んだ。


「ギャーー」って凄い悲鳴が・・・


「おい、伊之助。お前・・・やっちまったな」


「敵兵だ。仕方ないことだ」


「早く門が焼け落ちないかな・・・」


そんな2人が話し合ってる間を走り抜ける影が・・・


門を蹴り破って入ったのは、暴れん坊だ。


「こら!!ルールを守れよ!クソ坊主」


立ち止まってギロリと睨みつける。


「嘘、嘘だから勘弁してくれーー」


そんな暴れん坊に槍が襲う。

一振りで3人がなぎ倒される。そのまま城内へ・・・


「ひでなーー、こんな死体には、なりたくないよ」


「お前、なりかけたぞ」


「そんなことはしないだろう。味方なんだから」


「それは甘いと思うぞ。知ってる奴なんか、奥歯をガタガタにされたって・・・三言さまが居なかったら食べる事も出来なかったぞ」


「それって本気マジな話か・・・」


「ああ、本気だ。ほら、城内から悲鳴が・・・」





「ああ、なんて事だよ。城の中は真っ赤に染まってるぞ。掃除する身になってくれよ・・・それになんで掃除するんだ」


「仕方ないだろーー。三言さまは、血を嫌うから綺麗にして俺らの手柄を見てもらわないとダメだぞ」


「お前は良いよな。田辺村一番の出世頭だから・・・」


「伊之助、本気で言ってるのか・・・お前こそ、婿養子の話があるのを知ってるぜ。稲葉歳三さまと遠い親戚になるんだって」


「その話がまとまればの話だよ。田吾作じいさんに頑張ってもらわないと・・・」






「三言さま、狼煙が見えました。数も合ってます」


「ヨシ、全員突撃だ!!」


ライフル隊の銃声が一斉に鳴った。

そして、走りだす。


途中でしゃがんで弾込めをして撃った。


皆は、分かっているようにライフルの邪魔にならないよう走り続ける。


一気に千人以上が倒れるのだ。もう、武田側は総崩れ。

とうとう追いつかれて、後ろから斬られたり突かれバタバタと倒れる。

城に戻る事もなく全滅。


ここに、若狭国の武田氏は滅んだ。



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