第30話逆子




またまたSOSの緊急連絡だよ。


瞬間移動でやって来たのは、三河養生所だ。


俺を呼んだ医療見習いは、何も言わない。

イライラするな緊急以外呼ぶなって言ってるのに、何を黙ってるんだ。


黙ったまま案内されて、がらがらと引いて入ったよ。


驚いたね・・・まったくもって・・・

目の前に女のあそこが丸見えだ・・・

産婆のばあさんは、へたり込んで泣いてるよ。


俺を見た瞬間、足にすがりついた。


「どうか、どうか孫娘を助けて下さい」


え!お前の孫娘なのか・・・成る程、親子とも危ない状況だよ。


仕方ない・・・

駆け寄って光魔法を発動。

あそこが異常に拡張・・・逆子のままポッコンと出産。

危ないと思った瞬間に両手で抱えてしまったよ。

なんと変な感触だ・・・赤ちゃんはぐったりしてるが、徐々に光に包まれる。

そして、母親も光った。


「オギャーァ、オギャー」と泣き出したよ。


親子は助かった。


「ババ、はやくなんとかしろ。いつまで持たせる積もりだ」


なんでこんな事までさせるんだよ。ちょっとイライラだ。


「ババ、逆子の経験はあるのか・・・」


「はい、あります」


「それで・・・」


「全て死産です。母親も死ぬ場合も、それは仕方ないことです。誰がやっても同じです」


俺は、責めてないから現状を知りたいだけだから・・・

予備に用意されたタライで手を洗って、その場を去ったよ。




検索の間で検索だ。


各地から呼び寄せた産婆達。

やはり高齢者が多いぞ。若いので30代だよ。

そして、新しく産婆候補で出産経験のある15~19歳のピチピチギャル。


そんな歳で出産か・・・

なになに13歳での出産もあるのかよ。

驚いたねロリコンの世界だよ。



「いいか、月経から説明してゆくからな・・・」


本当はしたくない。しかし、やるしかない。


紙に描いた子宮と卵巣の絵や胎児の入った子宮の絵をボードに貼った。



「この卵巣から卵子が飛び出して子宮にくっつく。男から飛び出した種が頑張って這って卵子と合体して赤ちゃんが出来る。この絵のようにな・・・出来なかった場合に月経として子宮のこの部分が流れ出すんだ」


「子宮からなぜ流れ出すのですか・・・」


「そこまで調べてないから知らん・・・多分、新しく作りなおしてリセットしてると思うぞ。古い卵子が残ったままだし、新しいのが妊娠に成功しやすいかも・・・」


「なんとなくわかりました」


本当に分かってるのかな・・・俺もよう分からんのに・・・


「女性の月経(生理)について何かのトラブルを経験したことがあるだろう。女性の健康状態を知るバロメーターかもしれないな・・・まずは正常な月経の4つ。1つ、月経周期(月経が始まった日を1日目と数えて次の月経が始まる日まで)は、25日~38日が正常な範囲。2つ、月経時に排出される経血の量は、1回の月経期間で20~140mLであれば正常。3つ、1回の月経の出血持続日数は、3~7日が正常な範囲。4つ、出血が1~2日で終わってしまう、又は8日以上だらだらと続くような場合は、問題ありでこれ以外は正常な範囲だよ」


なんかぽかんとしてるな。

俺も書いたことを読み上げてるだけだからね。


3ヶ月も生理が来ない妊娠以外の【続発無月経】。

女性ホルモンが不足で健康にも影響する。


経血量が多く、レバーのようなものが出る【過多月経】。

子宮の病気が考えられる。


ひどい月経痛は【月経困難症】

病気が原因で、思春期の女性に多いのは【機能性月経困難症】


などなどレクチャーしたよ。


そして、体温計で月経周期を正確に把握する方法。

それによって避妊できる日や妊娠しやすい日の特定まで教えたよ。

避妊は期待できないが・・・


この時代は、女性にとって妊娠が重要な問題だったらしい。

妊娠できないから離縁って当たり前にあった時代だから・・・




ここでいよいよ逆子対策だよ。


逆子の確率は、妊娠中期には40%。

妊娠36週までに自然に回転し頭が下になるんだ。

頭が重くなるから・・・

しかし、最終的に分娩時の逆子の確率は4%。



妊娠したら月経で逆算して、妊娠した日をおおよそ特定。

個人差があるから日頃から、自分自身の月経周期を知るべきだよ。

妊娠して36週が目安で逆子判定した場合に【外回転術】を行なうよう進めるね。


妊婦を横に寝かせて子宮の筋肉の緊張を緩める薬を点滴する。

妊婦さんのおなかの外から、赤ちゃんの頭とお尻をしっかりとささえて、前回り、または後ろ回りに回転させる。

正常の戻れば成功だよ。


失敗するリスクもある。なので準備もして挑むのだ。

刺激したことで破水した場合は、帝王切開しかない。

その手順もしっかり教えたよ。



撃ち殺した鹿で、腹を横に切った。


「横に切るのは、体の負担を少しでも軽減できるからだ」


「なぜ、軽減できるのですか・・・」


「よう知らん・・・横に切っての赤ちゃんの取り出しは、縦よに難しいぞ」


「わたし達はどうすれば」


「ケースバイケースで判断しろ。技術的に不安なら縦に切開しろ」




失敗したら困るので、産婆さん達にも帝王切開の練習までさせたんだよ。


え!っと驚くてぎわで腹を切ってるよ。

メス鹿だから、子宮がどうのこうのと子宮まで切ってたよ。

妊娠した鹿でなくて良かった。


やっぱこの時代の女性は違うね。


そもそも出産で女性が死ぬリスクが1番高い時代だったと思うよ。

10代の幼い出産が危ないからね。

100人の女性が妊娠すると、15人は流産してしまうデータもあるからね。

女性は大変だよ。



ああ、なぜなんだ。


盲腸患者まで外科手術で30代の産婆が切開してるよ。

産婆の亭主が盲腸と判明。


「わたしが外科手術をするわ」と言ってやってしまう。


ほっといたら死ぬからね。



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