第28話帰蝶と義龍




織田信長は、部屋の中を行ったり来たりして考えにふけっていた。


「殿、どうなされましたか・・・」


帰蝶きちょうか・・・どうもこうもあった物ではないぞ。せっかく上洛じょうらくして将軍に謁見えっけんしたのに、加賀三言寺のツテがないとは・・・情けないわ・・・あの役立たずめ。それなのに金だけ奪いやがった」


「もしかして、加賀三言寺と同盟を結ぶお積りでしょうか・・・」


「それしか無いではないか・・・加賀一向一揆を見事に打ち破るまでは良かった。しかし、能登、越中、飛騨と相次いで破るとは只事ではないぞ。事も有ろうに信濃まで取ろうとは・・・それも武田を打ち破ってだ。武田は嫌いだが実力は知っている積もりだ。それなのに武田は呆気なく同盟を結びよった。見栄も外聞も無い行いよ・・・そして今川まで負けるとは、情けない」


「殿は、恐れているのですか・・・」


「ああ、怖いぞ。得体の知れない怖さだ」


「それでは、どうするお積りですか・・・」


「もう分からん。どうすればよいのじゃ・・・」


「それなら一色義龍いっしきよしたつと和睦なされませ」


「なにを言うか帰蝶、そなたの父の仇ではないか・・・義龍め、将軍に頼み「一色氏」の名を許されよった。一色を名乗ることで父殺しの汚名を避ける大義名分を得たのじゃ。美濃国人を結集させる事にも成功しおった。それだけでなぞ・・・某が上洛する時に火縄銃で暗殺を企んだ事を忘れたのか・・・帰蝶!!」


「忘れてはおりません。しかし、ここは我慢をして和睦なされませ。そして、美濃と尾張の2国で同盟を申し込むのです。きっと加賀三言寺も納得するでしょう。近江を攻め入った時には、我武者羅がむしゃらに手助けなさいませ。織田の力を見せるのです」


成る程、良い考えじゃ。

しかし、誰を使者として差し向ける。下手すれぼ殺される運命ぞ・・・


「殿の考えは、分かってます。帰蝶が使者として行きます」


「帰蝶・・・本気か・・・妹は、さすがに殺すことはないと思うが・・・良いのか・・・」


「はい、帰蝶は、織田の者ですから・・・」






なんと織田の使者として帰蝶が来るとは・・・


「一色殿、織田と和睦をすすめるために来ました。和睦後は加賀三言寺に同盟を申し込むのです。それしか、美濃と尾張が生きる道が御座いません」


「某を一色殿と呼ぶのか・・・寂しいではないか・・・」


「一色殿は、体調が優れぬご様子。昔なら笑っていたでしょう。そんな一色殿に良い事を教えしましょう。三言さまに体の不調を治して頂くのです。三言さまは、天竺帰りの霊妙不可思議な力の持ち主と聞き及んでいます。きっと治りましょう・・・治った時は、息子として育てた喜太郎を女子として育てるのです。この事はある忍びより聞きましたが、親として情けなくはないのですか、喜太郎の幸せを考えてやりなさい。さすれば昔の斎藤義龍に戻れるやも・・・」


なんと帰蝶は、なにもかも知っていたのか・・・娘のことまで・・・

もう、父を殺してから何もかも変わってしまった。

某のエゴで娘まで不幸にしてしまった・・・悪い親だ。


奇病が発覚して子が授かりにくいと言われた時はショックだった。

偶然にも授かった。しかし、女子だった。

父からもうとまれた時だ。女子なら家督も継げないと思い嘘を突き通した。

それは、正解だと思った。しかし、あやまちであった。


父がしていた事を、同じように娘にしていたと・・・ようやく気づいた。

ああ、なんてバカな親だ。


もう、何も言うまい。


和睦して加賀へ行こうではないか・・・

父と弟を殺してしまいすまない。






わずか50人を引き連れて加賀三言寺に来たが凄いの一言であった。


「あれが全て石垣なのか・・・あのような大きな石を・・・それにしても面妖であるが美しい」


堺に寄ったことがあったが、それより栄えている。

なんと子供が、ぷくぷく浮く大玉をヒモで引張っている・・・まさに面妖よ


「あの乗り物はなんなのだ・・・」


「あれは、自転車だよ。乗るにはコツがいるから初心者は無理だよ」


家来なら普通「無礼であろう。この方を誰だと思っておる」と怒るはずなのに・・・

気はそそろで、家来はきょろきょろとするしかない。






なんでこうなった。


身長197センチ、俺よりでかいぞ。

この男が一色義龍か・・・あまり知らん名だ。


それに対して帰蝶・・・よく知ってるよ。

中々な美人さんだね。

織田信長の嫁さんで有名だぞ。はじめて見る有名人だ・・・

それに・・・12歳の息子だと言う喜太郎も連れて来ているぞ。

あれ・・・何かが違う。

あ、女だ。

しかし、光魔法が男の人格で支配してるって知らしているぞ。

え!いわゆる二重人格なのか・・・トラウマがそうさせたに違いない。

そのトラウマは何だ・・・



いかんいかん、書状を読まないと・・・

書状には、同盟を結びたいと書かれてるね。

いい事だよ。


よくもバチバチにケンカしてたのに仲直りさせるなんて・・・こっちはありがたいよ。


帰蝶「お願いで御座います。義龍を治してやって下さい。そして、この子も治して下さい。自分自身を男と信じてます・・・じつは、女なのです」


え!何を急に・・・




成る程ね、兄は奇病で妹は不妊症か・・・そして、子は二重人格か・・・

問題だらけの家族だよ。


光魔法で分かるのだが、兄は1年~2年で死ぬな・・・間違いなく死ぬ。

これで治しても良いのか、またまた歴史が変わるよ。

もう全然変わったからいいかも・・・


「わかった。治すよ」


淡く光りが3人を包み込んだ。

そして消えてしまう。


「もう、治ったよ」


「某の体が・・・これほどに活力がみなぎるなんて、この感覚は・・・一生感謝します」


あ、3人して泣いてる。



ああ、美濃なら竹中半兵衛が有名だぞ。

半兵衛をスカウトしよう。軍師、竹中半兵衛か・・・いいね。

うちの田吾作じいさんも軍師と言えなくはないな・・・



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