第22話武田の交渉




ああ、今年で2回も大きな戦いをしてしまったよ。

勿論、俺は悪くない。

本当に本当に悪くない。



それにしても、なぜこの男が居るんだ。


もう、頭は薄くなってるのに髭だけは、ぼうぼうと生やして・・・

ストレスが溜まってでっかい円形脱毛症か・・・

あご髭を剃るのが面倒なのか、薄くなった頭のかわりにしてるのか・・・

あ、兜がずれない工夫か、そうに違いない。


「どうか、真田領を返して貰えないでしょうか、返して貰えるなら命にかえて忠義を尽くす所存で御座います」


「まあ、返してもいいけど・・・領地を持っているのは、有益な存在と認められた者だけなんだよね。鉄砲隊だったり、忍び働きの忍者集団みたいな・・・」


「某の家系は、知略に優れた真田の家系で御座います。どうか知略の場をお与え下されませ」


この人、真田幸綱さなだゆきつなって言うんだ。

真田幸村に関係ありそうでどうしたものか・・・

もっとドラマで名前を覚えるべきだったよ。脇役なんか覚える気がないからね。


「わかった。今回の戦いで甲斐の武田氏まで戦ってしまったが、悪気があってやった事ではない。それは分かるな・・・」


「存じています」


「うん・・・真田幸綱がこちら側に来るにあたり武田氏に話を通す必要があるよね。それに信濃を取ってしまったが農民の事を思うと信濃を武田に返す気はない。それでは武田も気の毒であるから・・・戦いの賠償金とか色々とあるよね。もう、戦いたくないからそれをひっくるめて同盟を結んでほしい。出来るなら領地を返すよ」


「・・・・・・賠償には何をお考えでしょう。そして、どれほどの賠償を・・・」


「米でいいよね。武田って米の収穫量が少ないって知ってるから・・・そうだな50万石内で収めてよ」


50万石なら余裕で出せるからね。

武田も同盟をすれば、攻め先は駿河国、相模国に違いないぞ。

だって海が欲しいってドラマで言ってたから・・・まあ、それはどっちでもいいや。


甲斐の武田問題が済めば、儲けものだ。


越前国、上野国、武蔵国、甲斐、駿河国、遠江国、三河国、美濃国、越前国って接し過ぎだよ。


武蔵は、ちょびっと接してる。

駿河国、遠江国、三河国は今川と話し合えばいいのか・・・

これら全てを真田幸綱に丸投げしよう。

問題解決したら石高をあげてやっていいなーー。

これで決まりだ。


面倒な事は、真田幸綱だ。





なんと真田幸綱は、1ヶ月後に同盟の確約を貰って来たよ。

人質に出していた息子も返して貰ったよだね。


話によると甲斐は、今年に大規模な水害に襲われたんだって・・・

そして、飢饉きがが発生してるらしい。

苦労して信濃を平定したのに、まんまと俺に取られた。


もう、踏んだり蹴ったりだね。


あれ!・・・水害って、もしかして俺が原因。


台風の被害を抑えるために必死だったから・・・

何処どこに大量に雨が降ろうがかまってられない状況だったよ。

気をつけないと・・・




「それにしてもダメもとの交渉だったのに、よく同盟出来たね」


「鉄砲の威力に恐れたようで御座います。それに、戦うための米が御座いません。なので50万石を丸々譲渡することになります」


米が喉から手が出る程にほしいようだな。


なんと、あれ程恐れられていた武田の農民兵が、戦いたくないって言ってるらしい。

紙芝居が役にたったようだよ。

それにしても、どこまで『せんべい』売ってるっだよ。



鉄砲はあるし、天罰が下ると噂が広がってるみたいだからね。

そりゃー忍者軍団に噂を広げてくれって頼んだから・・・そうなるのは当たり前だよ。

ここは真田幸綱をほめよう。


「真田、よくやったぞ。2万石の領地を真田に褒美としてやろう」


「え!2万石をですか・・・ありがたき幸せです。一生忠義を尽くす所存です」


それ、前にも聞いたよ。


「あの・・・」


「なんだ、まだ問題でもあるのか言いにくいのか」


「交渉のために米を持っていったのですが、美味い米過ぎて追加を頼まれまして、どうしたものかと・・・」


「わかった。好きなようにやっていいぞ」


「は、はーー」


おいおい、言うだけ言って帰ったよ。

美濃の交渉をさせようとしてたのに・・・





「もう、入っていいぞ」


「御免」


服部半蔵、百地正永、薬袋庄馬みないしょうまの3人がススススと入る。


薬袋庄馬は、甲斐の忍者で甲斐を裏切ってこちら側についた。

一種の抜け忍かな・・・甲斐が嫌になって家族や同僚を引き連れて来たんだ。

合わせて126人。戦いのどさくさに紛れて無事だったようだよ。

そして、飛騨の85人の忍者を取り込む。

それに信濃の忍者も取り込んで我楽がらく忍者を結成。

3つの忍者軍団を抱え込むことになったよ。




服部「甲相駿三国同盟は取り消しとなりましょう。今川、北条は武田を見限ったようで御座います」


「今川が織田を攻めるって情報はどうなった」


服部「来年に向けてちゃくちゃくと進めていましたが、取り止めになりました。我ら加賀三言寺を警戒してのことでしょう」


ええ!桶狭間の戦いが1560年だと知ってたが、無くなったのかよ。

全て俺の行動で変わったのかよ。

もう、俺の少しの歴史認識が崩壊してゆくぞ。


徳川家康の独立も頓挫とんざしたのか・・・

織田信長の美濃攻略も怪しくなったぞ。


百地忍軍が仕入れた情報も驚きだよ。

そもそも上杉憲政は、2年前に長尾景虎ながおかげとらを養子にしてたんだよ。

山内上杉家の家督を譲って、長尾景虎は改名して上杉政虎うえすぎまさとらになったらしい。

そして、憲政の「政」の1字をもらってゴマをすったらしいよ。

上杉憲政は、関東管領職の譲渡までやってるんだよ。

関東管領職って何か知らんよ。知りたくも無いよ。


なら俺に言ってよ。

上杉憲政は、あの金もピンはねしたに違いない。

だから黙ったのか・・・


1度でいいから知ってる人物に会ってみたいな~。



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