第21話なんでこうなる




もう、なんて日だ。

なんでこうなる。


刈り入れ最中なのに、空を見れば台風だと丸分かりだ。


一報は、モールス信号だった。

それは、堺に出店した加賀屋からの一報だった。


『サカイ、オオアメ、キケン』


それに続くように堺~加賀の間の加賀屋から続々と一報が入る。

同じような内容だ。


「能登、越中、飛騨にも連絡を済ませました。今は必死に刈り入れをしているでしょう」


「お前らも必死になって刈り入れをしろ!ここは、俺がなんとかするから・・・」


「なんとか出来ましょうか・・・相手が悪い・・・」


「よけいな心配だーー」


俺は天に向かって念仏を唱えた。


南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


お、感じるぞ。いい兆しだ。

なんとか雷魔法が天に通じたぞ。

日本海に進路をかえたぞ!!

やったーー、やったーーぞーー。


なぜか知らないけど分かるんだ。これで台風の被害は無くなるハズだ。




「チュン、チュン」あ、スズメだ。落穂おちぼを突っついている。

なにげにプクッとまん丸と太っているスズメだ。

ああ、可愛い・・・



田は、ようやく刈り終わっていた。

俺は、ガッツポーズを取った。

拳を天高く上げて・・・「勝ったぞ!!」

それに驚いたスズメが一斉に飛び立つ。

え!そんなに居たのか・・・

空は、雲1つも無かったよ。




「本当に・・・ありえません。」


おい、やめろ!俺に向かって拝むな。


もう、あれよあれよとお百姓さんに囲まれて拝み倒されたよ。




加賀国、能登国、越中国、飛騨国を合わせて110万石。

その全てが3倍になったよ。

110万石×3倍=330万石


4対6でお百姓さんは、198万石を丸々収入になるわけだ。

もう、国中が踊り狂う程に喜んだね。



110万石以外にも、俺があっちこっちで開拓したのが40万石。

金で雇った兵に農業させたから、実質120万石がボンと懐に入ったよ。

それも、2万人も雇われ兵の給料にパッと消えてゆく。


それで、110万石から服部、百地、稲葉歳三、青葉一などの30万石を引くと80万石。

80万石は、俺の直轄地ちょっかつちになる。

4対6で計算すれば、32石が実質取分だよ。

嫌々食える量じゃーーない。


ああ、蔵があっちこっちでパンパンだよ。

アイテムボックスに入れているから大丈夫なんだよね。

新鮮なまま長期保存で完璧だ。




もう、お百姓さんは家の建設ブームだよ。


お百姓さんの蔵の数が足りないと苦情が来たんだよ。

仕方ないから買取ったよ。


はじめて自由に出来る金だ。

使いたくなる気持ちは分かるよ。


だからローンシステムを提案したよ。

それで断熱完備の農家でも建てればって・・・


農家を建て替える人がわんさか現れたよ。

もう、住宅ブーム到来だ。

大工は、あっちこっちで引っ張りだこだよ。


俺は、断熱材のグラスウール製作(耐熱性ヨシ、吸音性ヨシ)にてんてこ舞いだよ。





もう、そうなると歯止めが利かない。

信濃に逃げ出した次男や三男を呼び寄せる家族がいっぱいだよ。

越中は、戦いがあって働き手が大勢死んだからね。

後家の婿むことして家を継がせる気らしい。


それに、国中で豊作を喜んでるから、もう帰って来るが早いよ。

空いた土地が多くあるから、信濃から多くのお百姓さんが夜逃げみたいに来るわ来るわ。

この手の情報は、広がるのもはやい。



信濃が一番に国に接してる面が多いからね。



トラブルが発生。

お百姓さんが逃げ込んだのが原因。

追い駆けてきた信濃の国人とめたようだよ。


「罪人を引き渡せ」


「もう、こっちの領内だぞ。勝手に入ってきて、お前こそ罪人だぞ」


そうなのだ。

越中の村まで来て、逃げたお百姓さんを無理やり探し出して連れて帰ろうとしてるのだ。

それを見ていたお百姓さん達は、黙ってないね。

下手したら見せしめに殺される。


もともとが一向一揆だから、お百姓さん意識が高い。




あ!っという間だった。

1人の信濃の国人が刀で斬ってしまったよ。

もともとが手ぶらだったから、好きなように斬られまくった。


それが、あれよあれよと戦に広がってしまった。

加賀三言寺対信濃の戦いだよ。

なんでこうなる。



俺も、最初に聞いた時は、え!って驚いたよ。

こんなに大国になってるのに戦いになるなんて・・・

信濃に話をつけておけば良かったな~ぁ。


越前、越後は、書状や会って話し合った。

美濃は、書状を送ってるが音沙汰おとさたなしだよ。




もう、突発に始まった戦いだ。

最初はごちゃごちゃでなんとか押返すことに成功。


徐々に集まる武装した農民兵と雇われ兵。

もう農民兵はカンカンに怒ってるよ。


「ここは、交渉だ」と言ってるのに行ってしまったよ。


もう、ほっとけないよね。


「全員突撃だ!!」




火縄銃は、バン、バン、バン、バン撃って怯んだ瞬間に、バッタ、バッタと斬り捨てる。

首なんか切って持ち帰らないから・・・

俺が、ダメダメと断ったよ。

なんで切った首なんか見なきゃならない・・・まっぴら御免だよ。


俺の念仏も効きが悪い。

相手が恐怖と怒りが混じり合っているからなのか・・・



ああ、いっぱい居るな。


魚淋ぎょりんの陣形だよ。

あ、突撃が始まったぞ。


これは、無防備でいると危ない。

一気に土魔法で土壁を作った。火縄銃が撃てる穴も確保。


南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


これで誤魔化そう・・・

土壁に向かって拝んでるぞ。上手くいったのかな・・・


バン、バン、バン、バン撃った。

更にバン、バン、バン、バンと撃った。



ああ、信濃国は落ちた。


金で雇われる身分になるか、信濃国から去るか2択だ。

半分が残って、半分が去った。

去った者は、殿と呼ばれた身分らしい。


これで信濃約40万石が手に入った。


もう、武田カンカンだよ。苦労して手に入れた信濃なのに・・・

1日で戦が終わったからね。


兵を集めだした時には、もう遅い。



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