第19話船と磁器




大型運搬船が出航してゆくよ。

海を走る姿は勇壮ゆうそうだ。

そんな大型運搬船をすり抜けるように漁船が横切ったぞ。


あ、海事法かいじほうをやぶりやがったぞ。


「見たか御坂、あきらかに海のルールを破ったぞ。と捕まえて船舶免許剥奪にしろーー」


「見た感じでは離れています。それに1回は見逃す約束ではありませんでしたか、なので今回は許してやって下さいませ」


「え!そんな約束したっけ・・・」


「はい、しました・・・今回は厳重注意で・・・」


「そんな約束したなら仕方ないな。許そう」



それにしても大型運搬船の乗組員は、ディーゼルエンジンの使い方も慣れたものだ。

はじめは、頭がパンクしそうだと泣いてた奴らが・・・


結構遠くまで行くことになってる。

勿論、モールス信号を載せてるから、いざって時は助けに行くけど・・・



もう、モールス信号の取得認定者があっちこっちの国に行かせてる。

そして、商売をさせてこっちの特産品を売ってるんだ。

持ち株制の店だ。ほぼ俺が持ってる。

働きしだいでは、持ち株を売る約束になってるよ。

商売の才覚はあるが金がないのが実情だからね。

これで独り立ちして欲しいな。


そして、情報も定期連絡させてるよ。

ぼちぼち堺にも出そうと思っているぜ。

堺は、あっちこっちの情報が入って来るからね。

座ってるだけでも入って来るよ。



売る特産品は、磁器だよ。加賀は九谷焼で有名だから・・・

中国の磁器を錬金術で分析。色々な技法を読み取ったぜ。

まあ、窯は登り窯の知識ぐらい知ってる。


たしか、豊臣秀吉の朝鮮出兵して朝鮮半島から連れて来た陶工が作ったのが始まりだ。

なんでも肥前有田で磁器の原料を発見したことから製作が始まったんだ。


だから、豊臣秀吉の秀も聞いてないから、こっちが日本初の磁器発祥の地になるのか・・・

それならそれで良いのだが・・・





あの船の中は、米俵で一杯だ。

秋の収穫になれば米相場が安くなるから、その前に売ることにしたよ。

ドンドン売って金儲けしなくちゃあ~。

なぜって・・・今回の収穫量はハンパないからだよ。


それに忍者集団が高く売れる国を調べあげてくれたからね。

そこに船が向かってるんだよ。

もう笑いが止まらないよ。

本当は俺自身が行けば大量に売れるけど、やる事いっぱいだからね。



その1つが小型漁船だ。

小型漁船の製造は、プラスチック製だよ。

いわゆるFRP(繊維強化プラスチック)だ。

船体が軽いってメリットがあるんだよ。多少の傷や穴ならポリエステル樹脂などで簡単に直せるからね。

それに修理キットも製作済みだ。後は漁師本人が直せって感じかな。

こっちは暇じゃぁーないから・・・


錬金術で小型漁船を、製作するのに手こずったね。

失敗しては、錬金術で元の素材にもどして作り直しだよ。

1回完成すれば、後は簡単にちゃちゃっと製作だよ。


しかし・・・

飛騨以外、海だからね・・・注文が殺到して困って困って仕方ないよ。





今、堺の今井宗久の所にいる。


ずらりと並ぶ中国産の磁器。

それに混じって加賀九谷焼も並んでいるよ。

特産品だからね。


唐の時代の白磁の壷。


明の時代の永楽青花龍紋扁壺、永楽青花海水白龍紋扁壺。

いつの時代か分からない青磁の数々。


そして、曜変天目茶碗ようへんてんもくちゃわんが2つ・・・もう、茶器狂いにはたまらない一品だね。


これって3つは国宝、1つは重要文化財になってるからね。

あれ!2つ増えた事になるの・・・


あ、商人が騒ぎだしたよ。

もう目の色を変える商人達。もう、その眼光は凄い。

さあさあ、オークションの開催だよ。


「名前と金額と欲しい物の番号を書いて箱に入れてね」


「・・・・・・」


「え!触って見たい・・・仕方ないな~・・・この白い手袋をしてね」





こっちは新潟県糸魚川市まで行ってヒスイを仕入れたんだよ。


糸魚川ヒスイの加工は、約5000年前の縄文時代中期だ。

ヒスイは頑丈なのに加工するなんて、信じられないよ。

代表は、勾玉まがたまだよ。Cの形に穴が開いた奴だな。


そのヒスイを使ってとんでもない加工をしてやった。

錬金術なら朝飯前だから・・・精巧な絹をまとった弥勒の姿・・・高さ30センチ。

女性の裸体にしようと思ったが、売れないと困るのでやめた。


弥勒像で目に浮かぶのは、国宝で有名な飛鳥時代の「弥勒菩薩半跏思惟像みろくぼさつはんかしゆいぞう」。

それを再現。 右足を左膝に乗せて静かに思索にふける姿は半跏思惟と言うらしい。

そっと頬に当てた指の先には、アルカイックスマイルと呼ばれる微笑みが浮かぶ尊い姿。

それをリアルに作ったよ。


それ以外にもカニ、アリ、麒麟きりん、クモなどなどを・・・

足の細いのなんの、折れないギリギリの細さにしたよ。




そんでもって船で中国まで行ったよ。

海で大荒れになるの嫌だった。

だから雷魔法で天気を操って、穏やかな航海だったよ。


そこで物々交換して仕入れた物が磁器の名品揃い。


中国での言語文字通訳の威力はハンパなかったよ。

もう、俺の話術でだますことなんか出来ない。

いいものをどうぞどうぞと出してくるんだ。


それ程に精巧なヒスイの弥勒やカニが欲しかったみたいだぞ。


そして悪い人間は、どこでも居るもんだ。

この時代の権力者には、言語文字通訳も通じない。

欲まみれで悪だからだろう。ちょとクソ坊主と似てる。

変な格好の役人が襲ってきたが、大きくジャンプして逃げてやったよ。


「どこの武人だ!」と叫んでいたが完全無視だ。





商人代表2人と俺で開票。

素早い今井宗久の目がギョロギョロッと動く。

ニコッと今井宗久が微笑んだ。


曜変天目茶碗1番と2番。

2つも最高金額で今井宗久が落札してたんだよね。

もう1人の代表の悔しがる顔って見てられないよ。

後1銭が足らなかった。やるな今井宗久。




金をアイテムボックスにしまったよ。

そして、信用手形みたいな物まで・・・まあ、信用してるよ。

踏み倒したら倍返しだから・・・




大通りをぶらぶらしていると、悪そうな若者らに絡まれたよ。

路地裏に引張れて黙ってついて行ってやった。

もう、あるあるのテンプレだな・・・


「おいおい、金をだしな!」


「お前らにやる金はない」


そしてボコボコにしてやったぜ。


この集団のボスらしい奴が「俺も強いと思っていたが、あんたは更に強いな」


「君の名は・・・」


「石川五右衛門だ」


「そうか、悪さするなよ」


聞いたような名だな。まさか・・・ないないって。

同じような名はあっても不思議はないから・・・

人目のない場所で瞬間移動した。



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