第16話紙芝居
手際がいいね。見とれてしまうよ。
描いた本人以上に絵がきりりっとして良いではないか・・・
「浮世絵にしては、太い輪郭線が目立っていい感じだ。それに『ふきだし』が誰が言ってるかよくわかるよ」
感心しながら次の工程の人に手渡した。
恐縮しながら受け取り、作業する台の横に置いたよ。
薄い板にトントンとのりを載せて、刷毛でシャーシャシャーと引き伸ばす。
木版画を載せて空気を押出すように引き伸ばす。不具合がないか確認したら完成だよ。
「ようやく出来たか・・・」
何十枚の薄板をトントンと揃える。
「それは、なんで御座いますか・・・お教え下さい」
又も田吾作じいさんの興味を引いたようだぞ。
孫娘を又も連れて来てるよ。その孫娘もガン見だ。
「これは紙芝居だよ。今回の戦を世間に知らしめるために作ったんだよ」
「変わった絵が描かれているだけにしか見えませんが・・・」
そりゃーそうだろう。俺が漫画風に色を塗った物の木版画だからね。
これは、実際にやって見せないとダメらしいぞ。
「じゃーあ、やって見せるから後で感想を聞かせてくれよ0」
紙芝居用の箱を持って来て。紙芝居をセットする。
こりゃー、ぶっつけ本番だ・・・上手く出来るかな・・・
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい。【加賀百万石に挑む男】の話だ。名は三言で
紙芝居の箱を「タ、タン」と叩く。
『我こそは、天竺帰りの三言ぞ。なにゆえに民をいじめる』
「タ、タン」
「悪鬼の如く怒るクソ坊主が襲ってきた。そこは修行して強い三言は、ちっぎっては投げ、ちぎっては斬った。そして、あっという間に加賀国を制覇。それで終わりじゃーなかった。翌年には、能登と越中のクソ坊主が襲ってきた。能登を手始めに『
「わーい、わーい、凄く凄く面白いよ」
ああ、孫娘が喜んでるぞ。
なんなんだ、田吾作じいさん。
「感動しました。これ程の作品だと思いもしませんでした。しかし、飛騨は・・・」
田吾作じいさん褒め過ぎだよ。てれるなーー。
飛騨か・・・忘れてた。
三言寺に数十人がやって来たぞ。
伊賀国の百地正永が従える百地忍軍だ。
伊賀国名賀郡の武士で地頭だ。
勿論、忍者の上忍クラスで伊賀でも有名だよ。
それを服部半蔵が今回の戦で手に入れたの越中の領地で引き抜いて来たんだよね。
もう服部半蔵に足を向けて寝れないって言ったりもしてるらしいぞ。
服部半蔵にも飛騨1万石と加賀4万石を増やしたよ。
2万を足して7万石になったんだよね
「三言さまに召抱えて頂きありがとう御座います。それも手柄無き者に越中5万石を頂けるとは、この百地命にかえてお守りします」
「守ってくれるのか、それはありがたい・・・早速だが仕事を頼みたい。この紙芝居で加賀の宣伝をして来てくれないか・・・」
「宣伝とは・・・」
百地の前でも同じように実演して見せたよ。
何回やらせるんだよ。
しかし、田吾作じいさん以上に感動してるぞ。
うっすらと涙を流してるよ。
忍者なのに・・・大丈夫なのかな・・・まあ許してやるよ。
「その時に販売するのが、醤油せんべいに砂糖を少しまぶした『あまあませんべい』だ。1度食べてみるといいぞ」
『あまあませんべい』を食べた途端にびっくりしてるぞ。
この時代って甘味のはっきりしてるのって無いからね。
甘くて醤油のしょっぱさで美味しいのは間違いない。
あ!部下の忍者も食べたそうにしてるぞ。
「その方らも食べるがいい」
小分けされた袋に悪戦苦闘だ。
ああ、やっぱりな。
プラスチック製の袋は、はじめてなら戸惑うのも仕方ないよ。
「このようにギザギザの所を引き千切れば簡単だぞ」
うまうまって食べてるよ。
「それで、紙芝居で我が国の宣伝をして、逆らったら痛い目にあわすぞって感じかな・・・こっちはめちゃくちゃ強いぞーー的な情報を知ったら攻めて来ないだろう。そう思わないか」
「某も紙芝居を見て攻めようとは思いません。もし攻める者がいればバカです」
うんうん、もっともな意見だぞ。
百地、分かってるね。
百地が越中に居れば、信濃、越後に睨みを利かせられるだろう。
情報もドンドンと入ってくるから・・・
なんと、信濃、越後で紙芝居は大人気だよ。
娯楽が少ないから客はわんさかと寄ってくるらしいぞ。
もう、あっちこっちで【加賀百万石に挑む男】を見たさに待つ者もいるらしい。
子供~じいさんまで何回も見て、あきないだねーーこれが・・・
『あまあませんべい』も低価格で売ってるからね。
先行投資だよ。
なかなか良い作戦だ。
加賀百万石に手を出させな情報操作だから・・・嘘も言ってないからね。
これ程大きくなった加賀百万石だから手出しするとは思わないね。
手出しする奴はバカだ。
服部忍軍も同じように美濃、越前に紙芝居をしに行ってる。
そして、情報収集もやって貰ってるよ。
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