第14話能登国、越中国




雪解けで久しい日々なのに、それは唐突とうとつにやって来たぜ。

来るかもと思っていても、こんなに早くとは・・・せっかちだ。


「三言さま、服部城より第一報の入電が来ました。飛騨、能登、越中の3国が攻め入る仕度をしていると申してます。石山本願寺の慶寿院鎮永尼けいじゅいんちんえいにが黒幕と申してます」


「なに!飛騨までもかーー。して慶寿院鎮永尼って誰・・・」


後で分かったことだが、石山本願寺の偉い坊さんの顕如けんにょのおばさんらしい。


「それを聞かれても・・・」


「分かった。越前の守備に2千、服部城の後方に5千、能登に5千、残り全てを越中の守備に回せ。くれぐれも拙僧が行くまで攻め込むなときつく言っとけ」


検索の間に行き着替えた。

返り血を浴びてもいいように、黒装束で・・・

誰もやらないから自分自身で忍者の格好をするぞーー。

一生懸命に黒く黒く染めたよ。

もう真っ黒、黒助だよ。なんかいい感じだよ。




俺は能登に飛んだ。

そして待ちぼうけをくらったよ。

待てど待てど誰も来ない。早く来過ぎたようだぞ。

まいった、まいったよ。


「あ!来たぞ・・・」


集まったお百姓さんは、凄い格好だよ。

びしっとした者や、え!ってレベルまで様々だよ。

けれど武器だけは、いい物を持ってるんだな。


「いいか!同じ一向一揆だった者だが、今は我らの敵ぞーー。心して向かうのだ!」


「お!--」声が響いたぞ。


俺らが攻め入った時は、まだまだ集まって間がないのか、ぽかんとしてたよ。



南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


戦意喪失、天罰恐れてこっちに転べと念じ続ける。


こっちのお百姓さんも大声で怒鳴ってるよ。


「投降しろ。死んだら地獄ぞ!針地獄が待ってるぞ!かまゆで地獄が待ってるぞ!」


なにやら怖い事を言ってるよ。


もう、土下座して悔い改めてるよ。

そして、その人の手を取り「よく改心した。なんじの御心は仏もお認めになるだろう」


そんな風に布教してるよ。

もう涙目で喜んでるし・・・「ああ、救われました」とも言ってる。


村々は、早くも投降の意思を表明。

惜しくも・・・見ていた坊主は、たまったものではないぞ。


又もや来たよ。

感情あらわにして激高した坊主が幾人も来たぞ!

もう顔は真っ赤だ。お前は赤坊主かーー。


あれあれれ、味方だった人を斬り殺ろしてるぞ・・・なんてひどい事よ。


だからやったよ。


「天罰を下れ」


一気に天候が崩れてだしたんだ。


「バチバチ、ゴロゴロ」ってカミナリが落ちた。


今まで暴れ回った坊主は、おんだ。


それを見た改心組みは、更に手を仰ぎひざまずくよ。


「おお、我らを許して下さり、ありがとう御座います」


もう、そこらかしこで祈るんだよ。




あっちこっちの寺と城をバンバンと分捕ってやったよ。

そして能登攻略は、日の沈む夕暮れと同じくして終わりを告げた。


「後は、事前に配布した通りに能登を任せたからね」


「はい、お任せくださり感謝しております。越中での御武運をお祈りしてます」





越中にやって来た時には、死体、死体、死体で凄かった。

全てが越中側だ。

こちらは、組み立て式の柵がずらりと並んでいる。

そして、有刺鉄線に絡まる死体達。


鉄砲隊が「バン、バン、バン、バン、バン、」と撃ち鳴らす音が凄かった。


バタバタバタバタバタと一斉に人が呆気なく倒れるだよ。


「なにが起きた!音が鳴る度に人が倒れているではないか。なぜなのじゃ・・・」


僧兵のおっさんが、倒れた男を抱きかかえて調べだす。


「なんと、穴があい」


あ、僧兵のおっさんの眉間に当たって倒れたよ。

後ろに仰け反るように、ゆっくりと倒れている。


俺はそれを見て「南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」




俺の錬金術で作った火縄銃は、評判が良くてよく当たるんだね。

もう引張りダコだよ。


なので鉄砲隊が持つ火縄銃の数は、1000丁に達した。


「撃ち方やめーい!」と怒鳴った。


方々で白い煙で視界が悪い中、一斉に音が止まったよ。


静寂がいつまでも続くと思う程だ。


「三言さま、なぜお止めになるのですか・・・」


「ああ、稲葉歳三か・・・ここからは、念仏作戦でいくから」


「あ!かしこまりました」



一斉にうねるように念仏を唱えだした。

8000人の念仏だよ。

さぞや肝を冷やすことだろう。


南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


もう、あっちこっちで唱える。

聞かされる敵は、恐怖と極楽の狭間につき落とされる気分だろう。

俺なら、即降参だよ。


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」


その念仏は一晩中・・・越中を支配し続けたよ。

家に閉じこもって、家の中で同じように念仏を唱える。

その数は、徐々に増えるのは目に見えている。


あたかも死んでいった人の冥福を祈っているように・・・

そして、寺が燃える火の粉が昇天しょうてんをあらわすかのように・・・


寺の鐘が終わりを告げるかのように鳴り響いている。

改心した坊主が鳴らして「早く改心するのだ!」と叫び続ける。


後に暴れん坊と呼ばれる坊主だ。





そして、朝日が昇りだす。

越中のいくさは、多くの犠牲で幕を閉じる。


「ああ、朝日だ。戦いは、終わったぞ」


「終わったのか・・・」


抱き合いながら勝利に喜び合うつわもの達。

精魂尽きて座ったまま槍で支えるように眠る者まで様々だ。



そんな中で、1人黙々と治療に励む俺だったよ。


「三言さま、次の患者です」


「光よ、この者を光を・・・」


「三言さま、次の患者です」


「まだ、居るのか・・・」


「はい、まだまだ居ます」


「光よ・・・」


「・・・・・・・・・」



終わった。治療がようやく終わったぞ。




ここに加賀国、能登国、越中国の3国の大半を領地とした。

これで前田利家の加賀百万石になれたのか・・・利家は織田家に居るのかなーー。

悪さして浪人になった時期もあったような・・・




後は、飛騨だけだぜ。

待ってろよ飛騨の野郎ども・・・



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