第13話越後国




越後国でも雪が降っていた。

正月から数えて4日。


ここに来るまで苦労したもんだよ。

正月そっちのけの荒行に近いものだよ。




それは吹雪で目の前が真っ白な銀世界。ハッと気付かなかったら死ぬ寸前だったよ。


ある時は、音がするので振向いたら雪崩で、必死に走り抜けたりしたんだよ。


かんじきをはいてるのに、雪にズズズズと足を取られながらの1人旅。


くじけたら検索の間に帰って「寒い、寒い、寒い」と囲炉裏に駆け込むのが日課だ。


「熱いの一杯ちょうだい」


「熱い白湯で御座います」


人の温もりを感じるね。

熱い湯のみを両手で抱え、暖を取るしかないなんて・・・

防寒対策の服からも湯気が立ち昇るのを見てホッとする。

あったかいな・・・


「さあ、行くか」


「もう行かれるのですか・・・もう少しすれば食事の用意をします」


「あ、いいよ。決めたらやる男だから」


そう言ってかっこよく決める。


又も1人旅が続く。


途中の越中の城や寺の位置が確認出来て都合が良かったぜ。

手書きの地図にメモまくったからな。

春か秋が楽しみだよ。




そんな思いをして通されたのは、誰も居ない部屋だ。

2時間も待ちぼうけだよ。


あ、足音だ。

右手を枕にして寝てる姿は見せられないぞ。

ガバッと起きて身を正す。


間一髪、間に合ったぞ。完全にセーフだ。


6人がゾロゾロと入ってきたぞ。


「ソチが加賀の使いの者か・・・」


立ったまま言うのかよ。


「は、はーー某、三言の家臣、大山十兵衛で御座います」


ようやく座ったぞ。そして下からのぞくのはやめてくれよ。


「聞いていたが、面妖な面よのーー火傷きずと聞いたが見せてくれぬか・・・」


「去年の戦での火傷きずで御座います。それで良ければ御免!」と面を取った。


「ゲゲ」


「ウッゲ」


なんなの、その声は・・・

無理やり火傷したきずだからね。みにくく焼いたからね。


勿論もちろん、後で治すよ。きれいな肌にして・・・


「もうつけてよい」


「恐れ入ります」


コソコソと面をかぶる。

白塗りで目と口だけが開いた面だよ。

シンプル過ぎて怪しさが前面に出た感じだな。


「持参した物と目録を確認し申した。今年の越中の戦働いくさばたらで戦勝後に寄越す目録は間違いないのか・・・」


「間違い御座いません。某が持参します。戦働きを見守って下さるようお願いします」


「こちらから兵を出さなくてもよいのか・・・」


滅相めっそうも御座いません。見守って頂くだけでありがたいと申していました」


「わかった。戦を楽しみにしているぞ。正月が過ぎてこのような幸運がこようとは、良い事よ」


そそくさと部屋から出ようとした時「お館さま、名を名乗っておりません」


「名乗ってなかったとな・・・・・・上杉憲政うえすぎのりまさと申す」


あ、もう出ていったよ。


あれ、あれれれ、上杉謙信じゃないの・・・

上杉憲政って誰よ。

知らん人に手渡ちゃったよ。どうすだよ。

服部半蔵も越後まで忍者を送り込んでないからな~。情報不足だったーー。

謙信って死んじゃった。それはないと思うけど謙信に会いたかったな~。


まだ後を継いでないだけかな・・・



たずね歩いた時、上杉の殿様に会いたいと言ったのがまずかった。

しかし、偉い人の下の名を言っちゃいけないって口酸っぱく言われたし・・・

どうすりゃいいんだよ。



まあ、筋は通したから越中攻めには、参加しないだろ。

参加されても困るんだけど・・・


火縄銃10丁

火薬と鉛球

銭500貫


手付け金に、これだけ送ったから約束は守ってもらわないと・・・

後で痛い目に合わすぞ。

勝った時は、更なる金や品々がガポッと入ってくるから、『果報は寝て待て』か・・・この事を言ってるんだな。


負けた場合は、越中に攻めてくるだろう。

絶好のチャンスだから・・・



▼1文銭

元々、1文銭は1文銭の重さから文目もんめ(1文の目方の意味)と呼んでいた。

それがもんめと書くようになった。

1匁の重さ3.75グラム。

1文銭を1000枚を紐で貫いて使う習慣ができて1貫匁かんもんめになって、1貫と呼ぶようになった。


銭100貫=1文銭10万枚=375キロ




越後国に来たついでに探し回っているんだよ。

なんと検索で日本の油田がヒット。

それが越後国らしい。


『日本書紀』に、越後国より天智天皇に「燃ゆる水(燃水)」が献上されたという一文があった。

よくよく調べたよ。


国内主要油田の年間生産量


順位 油田名  県名  生産量(千キロリットル) 

1  南長岡  新潟県 180

2  岩船沖  新潟県  88

3  由利原  秋田県  68


もう上位1、2が新潟だよ。探すしかないよね。

手に持った手書きの地図で見つけちゃた。


見つける気満々だから、たるも沢山持ってきたからね。

寒い中、黙々と『燃ゆる水』を入れたよ。

プール、一杯分は入ったかな。


「そこに居るのは誰だ!」


大声で言われて、焦ったよ。

ダッと走って思い出して、瞬間移動を発動。

検索の間で「ハア、ハア、ハア・・・」と息をきらした。

本当にビックリだよ。冷や汗じゃじゃ濡れだよ。


このままだと風邪を引くと思って、パッパッパッと脱いだよ。

トランクス1枚で囲炉裏に行ったら「キュアーー、ご無体な・・・」

もう真夜中だよね・・・


あ、田吾作じいさんと孫娘だ。


「何ゆえに裸に・・・」


「え!健康のために乾布摩擦かんぷまさつをしようと思って」


ちょうどタオルも持ってた。


「こうやってタオルで裸の体をこするんだ。自律神経鍛錬、体力向上、風邪予防、免疫力アップでいい事だらけなんだよ」


俺は知ってる。

学術的な研究結果も乏しく、やり過ぎると皮膚炎を起こすことを・・・


「それは、良い事を聞きました」


あれあれ、裸になって擦りだしたよ。


「これは、よう御座いますな~」


あれれ、気に入ってるよ。

さすがに孫娘は、しなかったけど・・・


乾布摩擦、知らない間に流行ったらしい。





持ち帰った『燃ゆる水』を錬金術で精製。

空中に舞う『燃ゆる水』。

ちょっと手こずったが天然ガス、ガソリン、灯油、軽油、重油が取れたぞ。



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