第2話 ワタシ

 放課を知らせるチャイムが鳴った。生徒が教室から次々と出て行く。白くなった黒板を教師は有無を言わず消していく。花瓶を手に、教室の扉を施錠した。

 廊下を教師が歩くと、窓の外から生徒の声が聴こえた。花瓶を持ったまま、教師は立ち止まり窓の外を見据える。朱色がひどく眩しかった。

 少しして教師はまた歩き始めた。水場に着くとワタシをわしずかみ、瓶の中の水を流した。蛇口から出る水が弾ける音をさせる。

 ワタシの黄色い葉をむしり取った。痛くはなかった。水場の鏡に私の姿が映った。シルクの様な弁が大きく反っている。縦線が入った葉は健康的は翠色。

 そんなワタシの姿を見ず、教師はまた瓶に戻した。水が教師が触れた所を少しづつ冷ましてくれる。教師は、ワタシを置いて行ってしまった。

 鏡に子供が濡れたランドセルを固く握り締めているのを、ワタシはずっと見ていた。


【第3話? さくら】

 緑の桜を見た者は居るだろうか。高気温によって葉が目立つようになり、葉桜となったと言う訳では無くである。生い茂る葉が花と化し、薄まった緑色をした花が咲くことがある。

 私はそんな話を聞いて、ふと思い出してしまった。

「なんでさくらってももいろなんだろうね。」

 カラフルな絵本を見据えた彼女はそう言っていた。

「あかいろのさくらも、みどりいろのさくらもさいているのに」

何も知らなかった私は、同調して不思議に思ったことだ。

緑色の桜はまだしも、赤色の桜を見た者は居るだろうか。フィクション小説には『赤い桜の根元には人が埋まっている、血を吸っているから』などと記されている。

 だが別に桜は多種類ある訳で、梅の様な色をした桜だってある。赤色の桜を見つめただけで人が埋まっているなんて火曜サスペンスの見過ぎたか、フィクションに限るだろう。

(※ただ上の話がとてつもなく短くなってしまったので、最近考えていることを書きました。赤色の桜を見ても作者のように「体が?」なんて考えてはいけませんよ?)

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短編集 縹 完 @mirato

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