第22話 スゼモリホダンジョンをソロ攻略する。


 三人と別れ、俺もスゼモリホダンジョンに潜る。

 ヤマウサギをサクッと倒し、今日は、その先に進む。

 マップは頭に入っているので、最短距離を全力疾走する。


 リオンたち三人は、この一週間はヤマウサギ・マラソン。

 ひたすら倒し続ければ、今週中にレベル2になるだろう。


 俺がキャリーすれば、もっと早くレベルを上げられる。

 でも、今はレベル上げよりもプレイヤースキル優先だ。


 テスレガではステータスが第一。

 どんなモンスター相手でも、ステータスが足りなければ、絶対に勝てない。

 本当に勝てない。マジで勝てない。


 ここまではゲームとして、それほどおかしい話ではないだろう。

 だが、テスレガではステータス条件を満たすのが大前提。

 その上で、プレイヤースキルがないと勝てないのだ。

 これこそがライトユーザーが投げ出した理由。

 かつ、死にゲーマーを虜にした理由だ。


 かといって、「レベルを上げて物理で殴ればいい」は通用しない。

 そんなことしていたら、圧倒的に時間が足りないのだ。


 なので三人には、最初にプレイヤースキルを身につけてもらう。

 昨日見た限り、リオンは何の問題もない。


 問題なのはナタリアーナとファヴリツィアだ。

 アルダに頼んだのは、厳しい育成プラン。

 昨日のナタリアーナはへばっていた。

 王女さまはついていけるだろうか。


 もっとも、俺の方が何百倍もキツい二年間を乗り切ったのだ。

 二人には根を上げず、頑張ってもらいたい。

 ダメな場合には、もっとキツいプランを考えてある。

 できれば、女の子にアレをやらせたくはない……。


 そんなことを考えながら、第1階層を駆け抜け、第2階層へ降りる。

 ここまで30分。ゲームでのタイムアタックでも出せない数値だ。

 まあ、このレベルだから、当然ともいえる。


 ダンジョンに潜れるのは、午後3時から6時まで。

 昨日、確認したが、午後6時になると、強制的にダンジョン外に転移させられる。

 この点はゲームと一緒だ。

 ただ、この世界では裏の手を使えば、ごにょごにょな方法で時間外も入れる。

 じゃなきゃ、そもそも、俺が二年間もスンレオイヴァ・ダンジョンにこもれなかったからな。


 ともあれ、時間は限られている。

 さっさと次に進もう。

 ちなみに、ダンジョン内にはセーブポイントがいくつかある。

 一度セーブすれば、次回以降はそこから再開できる。

 テスレガではパーティーメンバーを入れ替えするので、主人公が登録しておけば、他の仲間がセーブしてなくても問題ない。

 その仕様がこの世界でどうなってるかは未確認。

 必要になったら試そうと思っている。


 第2階層におり、セーブポイントで登録。

 この階層、プレイヤーを絶望に叩き込んだフロアだ。

 ヤマウサギに次ぐ、第二の初見殺しだ。


 第2階層に登場するのはゴブリンとその亜種。

 ゴブリンなら余裕だろ――それが初見プレイヤーの感想だ。

 なにせ、ゴブリンといえば、ゲームでも、他の創作物でも、スライムと双肩を担う最弱キャラだ。

 俺もそう思った。

 それに対する制作の返答がこれだ。


 ――ゴブリンが弱いって、誰が決めた(笑)?


 スゼモリホの推奨レベルはフロア数×2だ。

 最初に潜るダンジョンの第1階層が推奨レベルが2という意味不明な仕様だ。

 そして、ここもそれは同じ。レベル4以上でないと厳しい。

 レベル3クリア動画が上げられたときは、大騒ぎになったほど。

 他の誰もそれを真似できなかったほどの凄腕プレイだった。


 だが――レベル28の俺には関係ない話だ。

 ゴブリンを一刀両断に、全力ダッシュ。

 クリアしたのは午後4時。

 残り2時間――。


 第3階層をひと言で説明すると――罠、罠、罠。

 モンスター自体はそれほど脅威ではないのだが、フロア全体に悪意に満ちた罠が仕込まれている。


 ――プレイヤーが嫌がることを全部詰め込んでみました(笑)。


 本当にクリアさせる気あるの?


 この攻略法というか、定石は――後回しだ。

 他のダンジョンでレベル上げて、お金を稼いでから挑むしかない。


 具体的な攻略法は三通り。


 (1)斥候職の冒険者を雇う。


 この世界で、主要キャラは物理職か魔法職。斥候職は存在しないので、冒険者頼みにするしかない。


(2)レベル5で覚える罠対策魔法を使う。


 魔力回復ポーションの消費が多いが、この方法なら冒険者に頼らなくても、安定して攻略できる。

 これがスタンダードな攻略法。


 そして、最後が――。


(3)罠踏み特攻。


 罠を全部踏む気持ちで突っ込む。

 罠によるダメージやデバフはアイテムで治せば良い。

 脳筋な攻略法だが、お金にゆとりがある二周目以降はこれが一番効率的だ。


 俺が選ぶのもちろん(3)。

 俺とディジョルジオ家の財力ナメんな!


 そういうわけで、罠は気にせずガンガン進む。

 というか、そうは言っても、しょせんは初級ダンジョン。

 俺のレベルだと、罠を喰らってもたいしたダメージではない。


 そんな感じで、第三階層も楽々突破。

 午後四時半だ。


 第四階層。

 ここは特徴のないフロア。

 純粋に敵のステータスが高いだけだ。

 なので、ここもサクッと終わり。

 この階層の終点にあるのは、ボス部屋。

 コイツを倒せば、ここスゼモリホダンジョンをクリアしたことになる。


 さて、この世界で初めてのボス戦だ。

 楽しませてもらうぞ!


 ――――。


 うん。ワンパンだった。


 自分の腕を斬り落としたり、目潰ししたりする必要なかった。

 【生きるとはトゥ・リブ・イズ死ぬこと成り・トゥ・ダイ】すら使っていない。


 まあ、そうなるよな。

 レベル差こそ正義!


 これで俺はこのダンジョンをクリアしたことになる。

 だが、ここまでは前座。

 この先が本命だ。


 ダンジョンに潜る楽しみ。

 戦闘。レベル上げ。ドロップアイテム。フロアクリア。

 いろいろあるが、テスレガにおける一番のご褒美、それはもちろん。


 ――テスタメンティア・レガシー。


 伝説の大賢者テスタメンティアが遺したと言われる超強力な武器防具。

 俺も初めて手に入れた日は興奮しすぎて眠れなかった。

 SNSにスクショをアップ。

 凄い勢いでふえていく「いいね!」。

 耐えて、耐えて、ようやく報われた達成感。

 ああ、これが人を虜にするテスレガの魅力なのか、とようやく理解できた。

 そして、次の日、レガシーの能力を過信しすぎて、格上モンスターに瞬殺されたところまでがテンプレだ。


 ともあれ、これからレガシーを取りに行く。

 倒すとダンジョンクリアになるボス――通称、ダンジョンボス。

 倒すとレガシーをドロップするボス――通称、レガシーボス。


 ダンジョンボスを倒したから、第五階層まで降りる階段が現れる。

 第五階層はひと部屋のみ。

 階段を降りれば、即、バトル開始だ。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『レガシーボスと戦う。』



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   ◇◆◇◆◇◆◇


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