第18話 ダンジョンに誰を連れて行く?
「分かったわ。私も連れて行きなさいよ」
「俺が連れて行くのはリオンだけだ」
この世界では、ゲームと違いダンジョンに人数制限はない。
だが、それでも俺はリオンと二人っきりで潜る。
それが最適な方法だから。
「はあっ!? なんでよ」
「オルソン、ダメかな?」
「ああ、ダメだよ。意地悪で言ってるんじゃない。ナタリアーナには別の育成方法がある」
「どういうことよ?」
俺の言葉に突っかかってくるナタリアーナ。
俺は厳しい目で彼女を見る。
気圧された彼女は、一歩後ずさった。
「どうした? 俺に睨まれただけで怯むようなら、ダンジョンは百年早いな」
彼女の覚悟を試すようにあえて挑発する。
だがそれは、彼女を信頼しているからだ。
ここで引き下がるような彼女ではないと。
「バカにしないでよっ! アンタなんかに負けないわよ」
ツンデレで負けず嫌い。
俺の知っているナタリアーナだ。
嬉しくて笑みがこぼれる。
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ナタリアーナ
好感度:36→37
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好感度も上がっているし――。
「ああ、ナタリアーナの気持ちは分かったよ。ついてきて」
ダンジョンに向かうために、俺たちは演習場を出る。
そこで待っていたのは――。
「オルソン様、お疲れ様でした」
メイド服姿のアルダ。
二人きりの時とは違い、アルダは従者として振る舞う。
「ああ、紹介しよう。彼女は俺の従者のアルダ」
「アルダと申します。以後、お見知りおきを」
「あっ、あの……」
アルダを見て、二人はたじろぐ。
平民の彼らには、貴族の従者を見るのは初めて。
しかも、従者として完璧なアルダだ。
動揺を隠しきれてない。
こればかりは慣れてもらうしかない。
「ナタリアーナには、彼女と一緒にダンジョンに潜ってもらう」
「メイドさんと?」
まあ、その疑問は分かる。
メイド服とダンジョン――とても結びつかない組み合わせだ。
だが、アルダのメイド服は立派な防具だ。
初期装備である学園の制服も防具としての機能を果たすが、アルダのメイド服はゲーム中盤で手に入る高性能装備。
「アルダはここの卒業生でレベル33だ。彼女と一緒なら、ナタリアーナでも問題ない」
「ナタリアーナさん、よろしくお願いします」
その言葉に、アルダはスッと殺気を乗せる。
「あっ、あっ……」
効果は十分。
ナタリアーナも肌でアルダの強さを感じ取ったようだ。
その一方――。
「うわあ、レベル33かあ。凄いなあ。さすがはオルソンの従者だね。アルダさん、ボクはリオン。仲良くしてください」
「こちらこそお願いします。リオンさん」
アルダの振る舞いは原作で初めてリオンと会ったときと同じ。
凜々しい姿でプレイヤーのハートを撃ち抜いたパーフェクトメイドだ。
そして、リオンの振る舞いも原作と一緒だ。
キラキラした目でアルダを見ている。
でも、ダメだぞ。アルダ・ルートには行かせないからな。
まあ、リオンは女の子になったし、アルダも俺にベタ惚れだから、まったく心配してないけど。
「アルダ、ナタリアーナは任せた」
アルダには最初から話を通してある。
育成効率を考えた結果、これが最適だと判断したのだ。
「アルダの指示に従えば強くなれる。その代わり、彼女の指導は厳しいよ」
ダンジョン攻略には生徒以外も参加できる。
冒険者を雇ったり、自前の騎士を連れたり。
教師なんかも連れて行ける。
原作ではモブだったけど、ビリー先生も誘えばついてきてくれそうだ。
外部キャラは使いどころが難しいのだが、上手く使いこなせば、攻略を優位に進められる。
序盤ではお金がなくて無理だが、二年生くらいから冒険者を雇えるようになる。
その場合には、主人公キャラの強さに応じてモブ冒険者がランダムで選ばれる。
ステータス値やスキルに違いはあるのだが、それも常識の範囲内。
多少の当たり外れはあるが、バランスブレーカーな冒険者を引くことはない。
テスレガにしては、驚くほどの常識設定。
ここまでは、とくに文句もないよくあるシステムだ。
だが、テスレガはテスレガだ。
ランダム冒険者の中に一人だけ、隠しヒロインがいるのだ。
彼女が選ばれる確率は0.01パーセント。
バカじゃないの?
彼女を攻略するには、他のヒロインそっちのけで、毎日毎日冒険者ガチャを引き続けるしかないのだ。
もう一度言う。バカじゃないの?
テスレガに命をかけた俺ですら、何度も心が折れそうになった。
「うは! 一発目で当たり出た」という呟きをSNSで聞いて、発狂しそうになった。
…………………………。
ナタリアーナをアルダに任せ、俺とリオンは二人でダンジョンに潜る。
ダンジョンは世界各地に散らばっているのだが、学園の設備である転移ゲートを利用して、一瞬でダンジョン前まで移動できる。
こういうところはゲームと一緒だ。
「どのダンジョンにするの?」
「スゼモリホ・ダンジョンだ」
ダンジョンは難易度で5段階に分けられている。
スゼモリホは4個ある難易度1ダンジョンのひとつ。
推奨レベルは1~8。
ほとんどのプレイヤーが最初に選ぶダンジョンだ。
他のダンジョンも選べるが、周回プレイじゃないと死ぬ。
間違いなく死ぬ。
いきなり難易度2のスンレオイヴァ・ダンジョンに飛び込んだ俺が言うのもなんだが、あれはアルダのサポートがあったからだ。
学内には転移部屋と呼ばれる施設がある。
そこで各ダンジョンに転移できるのだ。
部屋では生徒の列ができており、教員が順番にさばいている。
ここにいるのはもちろん二、三年生ばかり。
一年生は俺たちだけだ。
怪訝な目で見られ、「おい、あれ、首席の――」「マジかよ」と小声で囁かれる。
やはり、注目されるな。
やがて、俺たちの番がやって来る。
教員にちょっと注意されたが、問題なくダンジョン入りが認められた。
スゼモリホはインスタンスダンジョン。
パーティーごとに生成されるダンジョンだ。
同じ構造なのだが、それぞれ別のダンジョン。
中で他のパーティーと出会うことがない。
なので、なんの気兼ねもなく育成に集中できる。
「ここでお別れだ。アルダ、任せたよ」
「はい、お任せください」
「リオン、行こう」
「はいっ!」
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『これがテスレガのダンジョン攻略だ。』
◇◆◇◆◇◆◇
完結しました!
『前世は冷酷皇帝、今世は貴族令嬢』
TS、幼女、無双!
https://kakuyomu.jp/works/16817330650996703755
◇◆◇◆◇◆◇
【新連載】
『変身ダンジョンヒーロー!』
ダンジョン×配信×変身ヒーロー
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