第7話 入学試験は楽勝だった。
――リオンの村を救ってから一年がたった。
「アルダから定期的に報告は受けていたが、まさか、これほどとはな」
俺のステータスを伝えると、父が嘆息を漏らす。
ちなみに、今の俺のステータスは――。
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名前:オルソン・ディジョルジオ
性別:男
年齢:15
LV:28
物理:B
魔力:B
メインスキル:闇魔法
サブスキル:短剣術
装備:ダークダガー。ダークローブ
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レベル、物理、魔法値、どれもゲーム内だと3年生半ば程度。
二年間、常に死と隣り合わせで頑張った。
そのせいで、成長率が最低なオルソンでもここまで上げられた。
予定していたのはレベル25だったので、十分すぎる成果だ。
「いかがですか、父上」
「私の期待を遙かに上回る成果。認めよう。テスタメンティア学園での三年間、好きに過ごせ」
「ありがとうございます」
俺は父上に頭を下げる。
「今後もアルダには定期報告をさせる。学園を、この国を支配して見せよ」
「必ずや」
父からの許可を得て、俺は領地から王都へと向かった――。
◇◆◇◆◇◆◇
いよいよ、テスタメンティア学園の入学試験の日となった。
入学試験は貴族と平民は別の会場だ。
主人公のリオンとも、メインヒロインとも出会うことがない。
この半年でリオンがどれだけ成長したのか楽しみであるが、それはしばらくオアズケだ。
「健闘を祈ります。オルソン様には不要かと思いますが」
「期待に応えてみせるよ」
アルダに見送られ、俺は貴族用の試験会場に向かう。
試験科目はみっつ。
筆記試験。
物理戦闘。
魔法測定。
ゲーム内では、入学試験が最初のチュートリアルになる。
オープニングストーリーが語られた後、試験が始まるのだ。
筆記試験はゲームのシステムや操作方法を学ぶため。
問題を解くという形式になっているが、与えられた問いに対して主人公が「この場合は、こうするんだよな」と脳内で説明してくれる。
なので、絶対にクリアするし、二回目以降はスキップ可能だ。
物理戦闘は上級生との実戦形式だ。
ここは物理戦闘のチュートリアルだ。
戦闘時にどのように行動したらいいかを学べる。
上級生は手加減してくれるし、クリアするまで何度もトライできる。
魔法測定はおなじみの、的に魔法を当てるテスト。
これも成功するまでトライ可能だ。
――というように、ゲーム内では試験は絶対に合格できる。さすがのテスレガでもチュートリアルでゲームオーバーにはならない。
実際に俺が受けてどうなったかといえば――。
筆記試験は、設定資料集をすみずみまで読み込んでる俺にとっては楽勝だ。
物理戦闘は、一瞬で終わらせた。
魔法測定は、的を粉々にし、後ろの魔法障壁に穴を空けた。
予定通り、満点で首席合格だ。
ちなみに、ゲーム内では能力を引き継ぐ二周目以降で満点合格可能で、あるヒロインを攻略するには、欠かせない条件になっている。
「修行の成果が出ましたね」
「アルダが手伝ってくれたおかげだ」
「いえ、私はなにも。オルソン様が頑張ったからです」
アルダが俺だけにしか見せない笑みを浮かべる。
この二年間でアルダは、完全にデレた。
最初はオルソンの身体を乗っ取った俺に不信感を抱いていたが、俺の修行に打ち込む姿を見て認めてくれたのだ。
それは態度からも分かるし、それに――。
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名前:アルダ
性別:女
年齢:22
LV:33
物理:B
魔法:D
好感度;100
メインスキル:双剣
サブスキル:忍術
装備:ミスリル双剣。バトルメイドドレス
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ご覧の通り、好感度はカンスト値の100だ。
俺は他人のステータスが見える。
これはオルソンの固有スキル――【人物鑑定】のおかげだ。
ステータスだけでなく、ヒロインの好感度や趣味・好みまで分かる。
この能力と実家の情報網で、オルソン君は主人公をサポートしてくれる――という設定だ。
この世界でも、俺は【人物鑑定】を駆使して、リオンのヒロイン攻略をサポートする。。
願わくば、ハーレムルート。
一人でも多くのヒロインを救ってくれ。
俺にはアルダさえいれば、それでいい。
ただ、問題なのは、原作ではヒロインを全員助けるのは不可能なこと。
正確に言えば、そのルートがあるのかもしれない。
しかし、猛者プレイヤーたちの鬼のやり込みをもってしても、発見できなかったし、制作会社も口を閉ざしていた。
それでも――俺はやり遂げてみせる。
リオンが助けられないヒロインは俺が助ける。
絶対に、全員助けてみせる。
そして、ヒロインだけじゃない。
ゲームではモブキャラだった者も、この世界では実際に生きる血の通った人間だ。
モブだからといって割り切ることはできない。
できる限り、彼らの命も救いたい。
◇◆◇◆◇◆◇
――入学前日。
入学を明日に控え、俺は学生寮に引っ越した。
なんで、男女一緒?
貴族が寮?
そう思うかもしれないが、ゲームだからしかたない。
そうしないと、ヒロインとの接点を作れない。
ゲームでは、寮に入るとき最初のイベントが起こる。
といっても、ヒロイン相手ではない。
そのイベントは――。
実家の部屋とは比べものにならない、質素で狭い部屋だが、もともと一般的な日本人である俺にとってはなんの問題もない。
「貴族向けの部屋とは到底言えませんが、オルソン様は気にならないようですね」
「リゾートに来たわけじゃないよ。豪華な家具で強くなれるのなら、金に糸目をつけないけどね」
「オルソン様らしいです」
荷ほどきを済ませ、ひと段落したところで、隣室のドアがカチャリと音を立てた。
俺に遅れて隣人がやってきたのだ。
予定通り、イベントが始まるはず。
俺は胸を弾ませながら部屋を出る。
――さて、一年でどれくらい成長したのだろう、
隣室のドアをノックすると、中から生徒が出て来た。
……………………えっ!?
「あっ、あの……」
ドアが開いて、固まる俺に隣人は戸惑っている。
いや、俺はその何倍も困惑していた。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『リオンと再会する。』
楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m
本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m
◇◆◇◆◇◆◇
完結しました!
『前世は冷酷皇帝、今世は貴族令嬢』
TS、幼女、無双!
https://kakuyomu.jp/works/16817330650996703755
◇◆◇◆◇◆◇
【新連載】
『変身ダンジョンヒーロー!』
ダンジョン×配信×変身ヒーロー
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