第5話 修行はムチャクチャ痛い。
「ああ、【
レベル15になり覚えたスキルについて、アルダに説明する――。
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このスキルはオルソンが死に近づけば近づくほどバフの効果が高まる。
なので、ゲーム内でオルソンを使う場合には、どこまでHPを減らした状態を維持できるか――というチキンゲームになる。
ゲームでは、HPという数値を下げるだけで済むが、この世界では実際に身体を傷つける必要がある。
いくら【
「早かったな」
「イヤな予感がして、急いで戻って戻りました。いくらなんでも、やり過ぎです」
アルダの瞳から止めどなく雫がしたたり落ちる。
彼女をなだめるように俺は伝える。
「なあ、アルダ。最強ってのは、そんな簡単に手に入るのか?」
「それは……ですが」
「オルソンは強い男だった」
オルソンはゲーム内の架空の存在だ。
それでも、俺は知っている、彼を。彼の生き様を。
「俺は彼に託されたんだ。俺は彼のすべてを奪ってしまった」
「…………」
「話は終わりにしよう。時間がもったいない」
「……分かりました」
俺の固い決意を理解したのか、アルダは身体を離す。
だが、彼女の顔は悲しみに満ちていた。
俺が弱いから、彼女を悲しませるんだ。
「頼む。いざというときは助けてくれ。というか、これから何度も死にかけるつもりだ」
「もちろんですっ!」
「助かるよ。さすがにこのスキルは一人だと怖すぎてね」
アルダは頷く。
良心が痛む。
なぜなら、これからもっと彼女を悲しませることになるから――。
「信じている。アルダを信じているからこそ、この修行ができるんだ」
ハッキリ言って、これから俺がやろうとしているのは、ムチャクチャだ。
片腕を切り落としたり、膝を砕いたり、切腹したり――それだけでも十分ムチャクチャなのだ。
だが、この先は無謀以外での何物でもない。
アルダがいるから死ぬ恐れはない。
痛みには――気合いで耐えれば良い。
俺はダガーを掴むと、大きく息を吐き――。
勢いよく両眼を斬り裂く。
「オルソン様ッ!!」
アルダの悲痛な叫びが聞こえる。
両眼が焼けるように痛い。
グチャグチャになった眼球が血やらなにやらで侵され――視界が閉ざされる。
これでスキル発動準備が整った――。
『――【
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――目をつぶれば大丈夫ではないか?
――視力を奪うアイテムを使えば良いじゃないか?
先ほど試してみたが、テスレガはそんな甘さは許してくれない。
どちらも期待していたほどの効果がなかった。
ゲームでも視力を奪われることがある。
そのような能力を使う敵も、アイテムも存在する。
ゲーム内では【状態異常:暗闇】と表示され、攻撃命中率が下がるだけだ。
石化とか、麻痺とかに比べれば、どうということはない。
たいしたデバフじゃないし、放っておいてもいいよね――その程度の扱いだ。
アトランティックのスタッフは一度、自分の眼を斬り裂いてみるといい。
そうすれば、俺の気持ちが分かるだろう。
だが、痛みと視力を代償に、俺は力を得た。
【
【
【
この3つの重ねがけは、体感だが、レベルが3つか4つ上昇したくらいの効果だ。
目が見えず、満身創痍な状態――戦闘に慣れるのは大変だろうが、慣れてしまえば成長速度は急増だ。
成長の遅いオルソンでは、これくらい無謀でないと最強には至れない。
死ぬほど痛いがな。
「オルソン様」
「ああ」
先ほどとは違う声色。
見えないけど顔はさっきよりもグチャグチャだろう。
半年間。ほぼ全ての時間を一緒に過ごした俺には、彼女の気持ちが分かる。
それでも、彼女は俺を止めない。
済まないけど、慣れてくれ。
俺もこの痛みに慣れるから。
「さあ、始めるぞ」
耳と鼻を頼りに、俺は周囲を探る。
モンスターが接近する気配を感じ――。
ダンッ――。
なにが起こったか分からないまま、俺の身体は吹き飛ばされた。
「オルソン様ッ」
切迫した声。
「大丈夫。これくらい、どうってことはない」
痛みはない。
いや、あるのだろうが、元から全身くまなく痛むので、どこが痛いか分からない。
そのうえ、視覚を失ったせいで、神経が敏感になっている。
一番敏感なのは、痛覚だ。
だが、痛みはそのうちに慣れる。
痛みを克服し――俺は強くなる。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『オープニング前にシナリオを改編する。』
楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m
本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m
◇◆◇◆◇◆◇
完結しました!
『前世は冷酷皇帝、今世は貴族令嬢』
TS、幼女、無双!
https://kakuyomu.jp/works/16817330650996703755
◇◆◇◆◇◆◇
【新連載】
『変身ダンジョンヒーロー!』
ダンジョン×配信×変身ヒーロー
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