第2話 ロゼの力
「ドルトディチェ大公一族に
美しい字で巨大な
朝日に照らされ、
千年という永遠の時、ドルトディチェ一族に伝わるジンクスは、いつの間にか人々の記憶から薄れていた。しかしそのジンクスが叶えられし時が、刻一刻と近づいている――。
大陸の東側に位置するのは、広大な土地を有するルティレータ帝国。ルティレータ皇族によって統治されるルティレータ帝国は、世界最古の国として知られており、長い年月をかけて発展と繁栄を繰り返してきた帝国だ。今でもその勢いは
そんなルティレータ帝国の皇都には、巨大な森林と湖が存在している。人の手が加わらないその場所には、多くの野生動物が
巨大な森林の中心、天を
その城は、ルティレータ帝国唯一の大公家であるドルトディチェ大公一族の本城である。純白と深紅というなんとも明るい色合いの城には、どことなく近寄りがたい
ドルトディチェ大公家は、神獣と呼ばれる神の遣いであるアウリウスに愛された、言わば呪われた一族である。ドルトディチェ一族の者は、血に触れさせることで狂ったように自死させるという特殊な力を保有している。その力は、一族の者同士でも同等に発揮されるらしい。つまり、後継者争いが
そんな恐ろしいドルトディチェ大公家には、六男六女、数多くの兄弟が存在する。中には既に、死んでしまっている者もいるが……。
「ロゼお嬢様。本日はよく眠ることができましたか?」
ドルトディチェ大公城のとある宮の一室。
ストロベリーブロンドの長い髪は、後頭部で編み込み団子風にまとめられている。余った髪の毛先はふわりと巻かれ、腰下まで滴り落ちていた。長い睫毛は目下に影を落としながら、上に押し上がる。アジュライト色の双眸が
「夢を見たの」
「夢、ですか?」
「そう。全てが燃える夢よ」
ロゼの言葉に、彼女の髪を
ロゼは昨晩、長いようで短い夢を見ていた。一回目の人生の、夢を――。
実は今この
ロゼは前世を自覚してからの数ヶ月間、一回目の人生の最期、腕に抱いた
「リエッタ。あなた、手が荒れているわ」
「あ……本当ですね。あとで薬を」
「貸して」
ロゼはリエッタの痛々しく荒れた手に触れる。するとたちまちリエッタの手が炎に包まれた。その炎が火の粉を散らし、パッと
「……お嬢様、本当にありがとうございます」
「気にしないで。さぁ、行きましょうか」
そう言ってロゼは、無の感情を顔に貼りつけた。
治癒能力がある
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