友情の数式
月簡
友情の数式
「今日はみんなに友情とは何か、について考えてもらう」
その一言から数学教師の授業が始まった。
「先生、数学の授業はどうしたんですか?」
クラスの優等生がもっともな質問をした。
「言葉通りさ。友情というものを数式化するんだ」
教師は黒板に「友情=」と書いた。
「友情なんて数式化できるわけねーじゃんかよ」
不良生徒が声を上げた。
「だから考えるんだよ」
その言葉を聞き、皆はだまり、考え始めた。その中で、優等生が手を上げた。
「友情と言うのは、自分と相手の共有した時間から喧嘩やすれ違った回数などを引いて、自分が相手の信用出来ないところの個数×2をしたものも引く……なんてどうでしょうか」
「おっいいんじゃないか。じゃあ計算するぞ。それぞれ個数や日数を言ってみろ」
「えぇっと、二年一緒にいるので、(365×2)で、すれ違った回数は……まあ何十回か……信用出来ないところは9くらいあります」
「ほう。じゃあ計算しよう
365×2-10x-9×2、だな
つまり694-10xだ。xが何かはわからないからとりあえず2を代入してみよう。
そうしたら674だな。これは果たして多いのか?」
「俺はその計算だと大体1000は超えてるぜ」
そうお調子者が声を上げ。そして続けた。
「それだと、必然的に数値が多くならないか?だから、もっと要素を変えるべきだと思うぜ、俺は」
それを聞いて、不良生徒が声を上げた。
「こんなのどうだ?共通の趣味等の数-喧嘩の数×過ごした年数」
「よし、計算するぞ」
「共通の趣味等は5つで喧嘩の数は……もう30回くらいはしてるな。過ごした年数は1年だ」
「5-30×1で-25だな」
その時、多くから「マイナスじゃねーか」という声が上がった。
「マイナスでいいんだ。友情ってのはそういうものだ。俺が10年仲良くしてる親友とで計算したら多分-100くらいになる。あと、お前らは『助け合い』という大事なことを忘れている。最後に言いたいのは、お前らはこれから生きていくとき、友情というものを数値化するんじゃないぞ」
そう言って教師は外を見つめた。
その時、かすかに「俺みたいにならないように」と聞こえた気がした。
友情の数式 月簡 @nanasi_1
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