きつね

狐の神がいる神社。

なんか奇跡的に神様が見えて話ができる体質の私は、狐の神と話をした。


『妾は狐神。"油揚げ"を持ってきてくれたならば、お主の願いを叶えてやるぞ?』


随分話が早い神だ。せっかちなのか、それとも話しかけてくる人間なんて願い目的しかいないだろうというスーパー卑屈狐なのか。

とにもかくにも、願いを叶えてくれるのならと、私は"油揚げ"を買いに行った。


刻み揚げしか売ってなかった。でも"油揚げ"の条件は一応満たしているはず。文句言うなら食べちゃうぞぐらいの勢いで神社へ向かった。




『な~~んか違うのう…。』


ダメだった。さすがに。



『確かに妾は"油揚げ"と言ったし、これもまぁそれに準ずるものと言えるのじゃが…、100%喜びがあるかと聞かれたら…のう?』


遠回しに嬉しくねぇぞコラって言われてる感じがする。神のくせに回りくどい。



『お主も買っている時、店を出た時、ここまで来る道中…。色々なところで「違うかもしれない」と思ったじゃろ??

相場はな、四角くて大きな1枚なんじゃよ。これも全部広げたら1枚になるのかもしれんが、ちょっと違うのは分かるじゃろ…? なんか少ない感じがするじゃろ…??』


図々しいなこの神。焼いて食ってやろうかと言わんばかりの感情が出てきているぞ全く。




『とにかく、ちゃんと持ってきてくれたならば、願いを叶えてやるのは間違いないから、もっとこう…な? 違うのを持ってきてほしいのじゃ』


日本には八百万の神がいるというけど、コイツは図々しさの神だ。間違いない。

仕方ない。次はちゃんと持っていってやろう。願いを叶えてくれるのは本当っぽいし。


というわけで、とりあえず私は軽くお参りをして神社を去ることにした。

次会う時は、もう少し謙虚になってますように。

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