第25話 幼い頃からみず・ひなです!

 万事解決した。


 とっても気分の良い一日だった。あの二人のおかげだね。


 ニコニコで家に戻ったら、そこに「計算違い」がんだ。


 なぜか未玖が不機嫌の塊だ。


 ちょっとでもつつけば爆発寸前って感じなんだよ。未玖も今日の話は聞いたはず。問題は全て解決したのを知っているはずだろ? なんで不機嫌なの?


 アンビリバボー


 お年頃の女の子は、兄には理解しがたいモノなのか。


 玄関に入るなりボディアタックが来た。よろめいた時に、未玖がどこかをぶつけないように抱き留めるのが大変だった。


 ま、ヒジやキックを食らうよりはまだマシか。


 でも、オレよりもむしろアタックしてくる本人の方が痛そうだったから、なるべく手で受け止めるようにした。


 慣れないことをしたので、最初は「ムニュ」しちゃったのはご愛敬。ヤバい、ヤバい。


 妹ちゃんは、しっかりなんだと知ったから、その後は手の位置を慎重にズラすことにした。


 未玖はその後も遠慮なく胸からぶつかってきた。まあ、兄貴相手だから気にしてないみたいだったけど、そう何度もムニュしちゃうわけにはいかないじゃん。いや、は何回か起きたけど、さ。


 妹とは言えしっかりと成長していた。ここのところの、みず・ひなコンビによる「当たってるよ!」攻撃に慣れてなかったらパニクっていたかもしれない。


 ふう~ これも彼女達のおかげだね。


 あ! ひなちゃんは微乳だっていうのがお約束の自虐ネタだけど、ちゃんとからね! 


 ……って、そんなことはどうでもいいか。


 ともかく、二人との仲がグッと縮まった。


 それと、今までは、ひなちゃんとみずほちゃんってことで「ひな・みず」だったけど、二人の呼び方が「みず・ひな」に落ち着いた。本人達が、そうしてくれと言ったからだ。

 

 もちろん、オレにこだわりがあるわけじゃないので「みず・ひな」にすぐ変えた。


「でも、なんで?」

「みずほと私って保育園の頃から仲が良くて」

「子どもの頃は、ひなの方が大きかったんだよ、このくらい」


 親指と人差し指で作る隙間は三センチといったところ。ほとんど差はなかったわけか。


「今じゃ私の方が、このくらい小さいの」


 お碗型にした手を、シュシュッと平たくしてみせるひなちゃん。


 それっての話なのか、突っ込んでほしそうだけど、スルー。ひなちゃんには、そういうところがあるんだよね。自分の微乳をすぐネタにするんだ。


「身長は今も、ひなの方が大きいんだから、いーじゃん」

「2センチだけでしょ。う~ でも体重は、みずの方がっむぐぅううう」


 ひなちゃんの口を必死になって押さえたみずほちゃんは「石田君は聞きたくないよね? 体重なんて」と圧がかかってきた。


「あ、うん。それよりも、今は名前のことだし」

「そう、そう。それに、ひなとは、のサイズが違う分だけ重いのは仕方ないんだもん!」

「みず! そんなにご自慢のモノなら、こうしてやるぅう!」

「あっ、きゃ、やめ、あっ、だめぇえ」


 後ろから羽交い締めをするみたいに、豊かな膨らみを掴んでプルプルプル。


「あん、だめぇ、ひな、だめぇ、そ、そこぉおお、はぁああんん」


【えー 画面が乱れております。しばらくお待ちください】


 3分ほどのバトルで、二人がゼーハー。


「もう、らめぇ」


 とろけた声のみずほちゃんがヒクヒクして、瀕死の状態だ。


 ひなちゃんは、勝ち誇って「ほ、ほ、ほ」と悪役になり切りながら腕を組んでる。


 オレは、それをみてピクンピクン。


 いかん、こ、これは、ヤバい。お子様が見てはいけない図だ。


 今夜は未玖がちゃんと寝てくれることを祈ってるよ。うん。絶対に早く寝てもらわないと。あ、机をまるごと扉にくっつければ、イケるか?


 うーん


【再び、番組をお楽しみください】


 

 幼馴染みだった二人は、保育園の頃からとっても仲が良くて、周囲から「みず・ひな」と呼ばれていたらしい。


 だから、二人の歴史にとっては価値のあるなんだそうだ。まあ、確かに子どもの頃からの呼び方って大切な記憶なのだろうな。二人の歴史がい~っぱい刻まれているんだろうし。


 何気ない呼び方であっても、本人にとってはすっごく大事だったりするのもわかるよ。


「あ、そうだ。石田君の呼び方も下の名前にしていい? 私達も、はいらないし」


 みずほちゃんからの嬉しい提案だ。


「そうね! 私も、ひなって呼ばれたい。ね、ね、ね、壁際に私を押しつけて『ひな、今夜はメチャメチャにしてやるよ』って言ってみて! きゃぁあああ~ あぁあ、すてきぃい。あぁ、動けない私を、みつきが野獣のようになって、そのまま……」

「ひな! ひな! ひなってば!」


 みずほちゃん…… じゃなかった、が肩を揺すって妄想の世界から連れ戻している姿を、オレは目を点にして見守っていた。


『さっきは思いっきり攻めてたけど、実は、けっこう、どM?』


 ぜんぜん知らなかったよ。でも、おかげでひながもっと身近に感じられたし、二人の仲の良さが、とっても微笑ましく思えた。


 というわけで「ミツキ」「みずほ」「ひな」の三人組が誕生したってわけだ。


 子どもの頃の話もしながら、半日、三人で遊んだ。受験が終わったら江ノ島に遊びに行く事も決まって、大満足。


 なんだかすっきりしちゃって、夜の勉強もはかどった。あ、マジで受験勉強をしたんだからね!


 夜中は…… もちろん捗ったけど。


 未玖は、模試があるとかで早く寝てくれたのはラッキー♪


 何もかもがスッキリして寝られたよ!


 平和な日曜日が始まるはずだった。


 ところが、オレの目の前に、目隠れ系の美女(山形・談)の転校生、紺野つばささんが立っているんだ。


 なぜに?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

今回、やっと登場した「紺野つばさ」ちゃんですが

先月転校してきたばかりの、です。

第10話 「ウソ告してないヤツは……」に登場した

ウソ告をしてこなかった数少ない女の子の一人です。

               

ここから、トーンが変わります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る