第21話 プランBの悲劇

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

今回も、心愛ココア視点 光樹が出ていった直後の用具倉庫です。


なお、ここは「富士川中」です。

がいます。校長は替わってるんですけどね。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 跳び箱の三段目から上を持ち上げて、竜久が出てきた。


『あ、マズい。これ、キレてる目だ』


 竜久に肩を掴まれた。痛い。


「おい、ちゃんとヤレって言ったよな? なにシクじってるんだよ」

「ち、ちがうの、違うの、あれは、あいつがいけないの、あいつがクズだから」


 顔面蒼白。


 バラバラバラっと、マットの影に隠れていた寛太とパシリ1号せきた2号まつしたが心配そうな顔で竜久の後ろから見守ってる。


 でも、かばってくれるつもりはないらしい。


 薄情だよ! 何とかしなさいよ! 男でしょ!


「あいつがクズなのはわかってんだろ? そのクズをたらし込めって言ったよな? グループRINEじや、せっかく、寛太がニセモノになりすまして上手くやってるのに、てめぇは、ぜんぜん役に立ってねーじゃん」

「でもぉ」

「デモなんてねぇんだよ。あるのは、カモか、敵かだけなの! で、おめぇは、オレの敵になんのか?」


 言ってることの意味が、ぜんぜんわからないよ! なんなの、その二択。でも、なんとかしないと……


「違うよ、ほら、私、竜久の味方だよ? いつだって、仲間じゃん!」


 ヤバいよ。「敵」だって思ったら、何をしてくるか。


「仲間? ざけんな。言ったろ、あるのはカモか、敵かだって。じゃ、敵じゃないってことはカモってことで良いんだな? オレの役に立つんだろ?」


『ここで逆らったら絶対ヤバい。ポッケにナイフが入ってても全然不思議のないやつだもん。怒らせるくらいなら、カモでいくしかないよ』


 コクコクコク


 必死に頷いた。


「ふん、じゃ、オレのために役に立つんだな?」


 唇だけ笑顔のカタチにクニュッと曲がるけど、目が笑ってないってこういうことなんだね。


『とにかく、今はなだめないとヤバい。どうしよ? 逃げる? あー パシリ1号せきた2号まつした、こういう時のためのあんた達でしょ! なんとかしなさいよ!』


 二人ともビクビクしながら見てるだけ。私は必死になだめにかかる。


「もちろんだよ、ココアは、竜久の敵じゃないから」

「よし、じゃ、計画変更な。おい、1号、2号、あとキャプテンよぉ」

「「「はい」」」

「今から、誰かコイツに突っ込めレイプだ

「「「「えええええ」」」」


 なんなの? 突っ込むって。まさか、レイプのこと? まさか、ありえないよね。


「さっさとやれ」

「あの、でも、それはさすがに」

「いくらシクったしっぱいのお仕置きでも」


 男子の子のビビリ方。やっぱり、レイプの意味なんだ…… ウソだよね?


「お前ら、何、勘違いしてるんだ。これは石田をハメるためだ。ハハハ。ヤツの代わりにおまえらがハメて、石田をハメられるんだぞ。オレ、マジ天才な」


「え? あの、何を?」


 竜久の言っている意味が、全くわからないよ! それに、コイツらにされるなんて、ヤだよ。せめて寛太だけなら…… あ、でも、こんなとこじゃヤだけど。


「おまえら日本人はバカだろ」


 一番近くにいた2号まつしたの腕をグッと掴んで私の方に引き寄せた。


「こいつをここでヤっちまえば良いんだよ」

「でも、あの、なんで?」


 松下は、ビクビクしながらも、私の胸を見た。うげぇ、なんて気持ち悪い目。吐きそう。


「股から血を流したコイツを職員室に連れていくんだ。石田にやられたって叫びながらな。オレ達は偶然通りかかった目撃者ってわけだ。あ、ホントっぽくするために、コイツのシャツを破っておけ。ほら、早くしろ、休み時間が終わっちまう。次は国語だ。小仏おさらぎ先生は遅刻に厳しいんだぞ、早くやれ!」


『そんな! やだよ。ヤだけど……』


 竜久の目が完全に座ってる。これ、ヤバい時の目だ。油をかけたとか、机でぶん殴ったとか、4階から人を突き落とそうとしたときの、あのキレた目だ。


 チラッと見ると寛太も顔色を無くしてる。


「おい。早くしろって! おら、お前はこっちだ」

「キャッ!」


 厚みのあるマットに突き倒された。そのまま、両手を頭の上にひっぱられて、グッと腕ごと踏まれた。動けない。


「痛い、ね、やめて、ねぇ、竜久」

「お前がしくじったからだ。ちゃんと言うことを聞いて、石田をたらし込めば、ここまでしなくてすんだのによ。お前はカモになるって言ったんだ。せいぜい、大人しくしろ」

「ヤダって、ヤダ! ね、お願い、もう一回チャンスをちょうだい、ね? 裸でもなんでもなるから、なんとかして石田クズを騙すから。お願い、やめて」

「なら、最初からヤッておくんだったな。オラ、早くしろ、誰だ? あぁあ、もういい。2号まつした、お前だ、お前がやれ」

「え? オレっすか」

「二度も言わせるなよ。時間がねぇんだぞ、とにかくぶっ込んで出せ。あとは、オレ達が口を合わせて、石田にやられてるところを助けたってな。お前ココアは、『石田を呼び出したら、突然襲いかかられた』って言うんだ。あ? それとも、この目をえぐり出してやろうか?」


 ヤバい。マジだ。この人マジでやりかねない、っていうか、もう指が目にくっついてるんですけど。


 むりぃ。


 コク コク コク


「わかった。でも、ね? 大人しくするから…… でも、ホントにやんなくてもいいでしょ? 私、石田に犯されたって言うから! 泣き真似もうまいし。ね? ほら、シャツを破ってくれても良いから!」

「うるせぇな。警察で血が出てるかどうか見る決まってるだろ。なんもなきゃ、証拠にもなんねぇ」

「でも「ウルサい! 早くヤレ!」」


「ご、ごめん、ココアちゃん。これ、仕方ないヤツだから」

「やめろ! パシリのくせに! さわんな! クズ」

「おい、キャプテンと1号せきた、足を広げて押さえろ。2号、時間がねぇ、ツバ付けて突っ込め」

 

 渋々という顔だけど、三人の顔には嫌らしい笑みが浮かんでるのがハッキリと分かった。


 こんなヤツらに、こんなところで!


「いやあああああ!」


 バシッ


「いたっ!」


 頬を叩かれた。


 パシッ、パシッ、パシッ


「オイ、てめぇ、おとなしくしろって。次、声を出したら目ん玉えぐりの刑執行決定な」


 ひぃいいい。


「ごめん。ココアちゃん」


 全然「ごめん」じゃない顔でパシリ2号がズボンを下ろしてる。


「な? オレも次、いいかな?」


 バカ1号が、調子に乗りやがって!


「今はダメだ。後で、石田をハメたら、今度やらせてやる」

「ヤッた!」


 何を勝手に決めてるのよ!


 二人かがりで脚を押さえられて身動きできない。


『怖い。で、でも、ダメ、声を出したら、マジで、この人、ヤル。目がえぐられちゃう。心愛、我慢だよ、声を出したらダメ』


 わぁああ、なんなの、これぇ! ヘンなカタチだよ! 


 んん~ ん、んん~


 怖い、怖いよぉ


 目も怖いけど、がゆっくりと被さってくるのがもっと怖い。でも、動けない。


 誰か、助けて。こ、声が出ないよぉ。


 足に、身体が触れた。


 あぁああ、もう……


 その時だった。


 「「「「「「「やめろぉおおお!」」」」」」」


 大勢の先生達がなだれ込んで来たのを見た瞬間に思ったのは「助かった」ということだけだった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ちなみに、先頭で飛び込んできたのは大島先生でした。

校内でのレイプ未遂事件(カタチの上では未遂)となります。

強制性交等罪は非親告罪です。普通なら、先生が「校内の問題」としてかばうこともあるのですが……

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 



 

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