第19話 用具倉庫の不穏
昼休み。
給食を食べた後、掃除当番以外は、サッサと教室を出る。
いつもなら図書室へとカバンを持って移動するところだが、出口のところで掴まった。
「石田君。ちょっとお話ししたいんだけど良い?」
メギツネがやってきた。仲間に入りたそうな目で、こっちを見て……
ないよな。どうみても、敵意というか、
オレは笑顔で「おっけ~」とのんびり答えた。
「ここで話す? それとも、どっか、場所を変える?」
ここじゃ無理だよね。
「そうね…… そうだ、体育の用具倉庫でいい? あそこなら人も来ないし」
いや、今思いついたようなふりしたけど、明らかに決めてたよね?
「あぁ、体育館の裏の外倉庫ね。わかった。先に行ってて。すぐ行くから」
「ありがと。じゃ、待ってるね」
用具倉庫か~
すごいな。みずほちゃんの予想通りじゃん。
言われていたとおり、伸びをするみたいにして両手をふわ~っとあげて見せた。廊下の向こうで頷いて見せた影が消える。
よし。場所が予想外だったら、メモを落とさなきゃだったし、準備も難しくなったかも。あいつらが単細胞で助かったよ。
みずほちゃんの予想はこうだった。
「決定的な何かを撮ろうと思ったら、めったに人が来ないところにするはずよ。それこそ、ひなが引くくらいの決定的な何かを撮りたいと思ってるでしょうから」
それなら体育倉庫になるはずだというもの。
「確かに、あそこなら隠れる場所はたくさんあるもんね。それに、あまりにも
さすが生徒会長をしただけあるよ。ちゃんと学校のことを知り尽くしてる。
思わずニタニタしてしまう顔を押さえつつ、体育館の裏側に回った。いつも通り、人はいない。体育の時か、放課後の部活の時以外、来るヤツなんていないよね。
普段はカギがかかっているけど、部活の道具も入ってる分、サッカー部の連中はカギを持ってるのもヤツらにとっては好都合だったはず。
きぃ~
「来てくれたんだ」
「やあ、須藤さん。君が呼び出してくれるなんて。いったい何の用かな?」
高木さんの予想の中には「最初から服を破いて待ってる」というシナリオもあったから入り口で確認するのは練習済みだ。良かった。服は破けてない。
最悪の、そして、オレにとっては一番やりやすい「石田君にレイプされそうになった」っていう狂言は、今のところは無いらしい。
さすがに、そこまでわかりやすいやり方はしないんだな。
「あの、こっちに来てくれる?」
ふふふ。一生懸命にワナに誘い込もうとしてる。必死だなw
「えっと、奥に入れってこと? じゃ、扉は開けておくね」
「え?」
ふふ。やっぱ戸惑ってる。扉さえ閉めてしまえば、中で何が起きてもオレの責任にしやすいもんね。
困惑した須藤さんは「ね、恥ずかしいから扉は閉めてくれる?」と言ってきた。いや、そこまで露骨にすると、普通は気付くぞ?
「う~ん。ここって人があんまり来ないから、扉は開けておいても大丈夫だと思うよ。それに、扉を閉めて二人っきりになっちゃうと、いろいろ不味いかもしれないし」
サラッと警戒心を見せておいた方が、かえって、須藤さんは安心するはずだ。
みずほちゃんは「人を陥れようとしている人ほど警戒しているし、自分が警戒している分だけ相手も警戒していると安心するモノなの」と言ってたけど、その通りだね。
う~ん。みずほちゃんに言われなかったら、絶対に、そんなこと考えなかったよ。
「あ、警戒してるよね? ごめん。でも、あのね、信じて欲しいの」
殊勝な顔を見せるけど、メギツネを信じるはずないじゃん笑笑
「わかった。信じるよ。でも、いったい何の用なの?」
「あのね、えっと、あ、もうちょっと近くに来てくれる?」
どうやら扉を閉めさせるのは諦めたらしい。
今までの経験から、連中は、跳び箱の中と、マットの影辺りに隠れているはずだ。後から回り込もうとすると、オレに見つかる可能性があるからね。あらかじめ隠れているしかないんだ。
「あのね、信じてもらえないかもしれないけど。私、石田君が好きだったの」
「え~っと、それってウソ告でしょ?」
「そ、そんなっ」
笑顔で突っ込んだら、須藤さんは明らかに慌てたんだ。今まで。そんなツッコミを入れたこと無いもんね。
でも、たぶん、斎藤…… いや、ボスは青木だっけ。あいつらに言われているから君は引くに引けないんだろ。
さて、ここから、どう出るかな?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
変なところで引っ張っちゃってすみません
ここはていねいに書かないと、いろいろと突っ込みたくなると思いますので。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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