第16話 選択

 人生最大の選択の場面は、案外と簡単に決着が付いた。


『え? 会長さん!』


 こっそりと開けた目が合って、その目は『ひなちゃんが先よ』と確かに言ったんだ。


 そっと、目を閉じた。


 う~ ホントに良いのか?


 でも、自分の心に聞けば、どっちとキスするのも全然嫌じゃない…… どころか、自分の中のパッションが「今すぐ吸い付け!」って叫んでるんだよ。


 でも、このまま「や~めた」的な反応が、一番良くないってことくらいはオレにでも分かる。


 どうしたら……


 オレは心のままに動くことにした。


 チュッ 


 チュッ


「「あっ」」


 二人が、頬を押さえて真っ赤だ。


「も~ 石田君ってば!」

「さすが、石田君よね。そういうところがステキ」


 高木さんが、右の頬に手を当てたまま、唇を尖らせて潤んだ瞳で見上げてきた。会長さんは、左の頬に手を当てて、うっとりしてる。


 どうやら正解だったらしい。


 二人とも、オレの唇が触れた方の頬を押さえて嬉しそうにしてくれる。よかった。ゴシゴシ拭かれなくってw


「ありがとう。気持ちはもらったから」


 やっぱり、こんな風にファーストキスをもらうのは、なんか違うよね。ホッペのキスなら、ギリ許容されるかなって。


 ちょっと惜しいことをしたって思ったけど、頬の感触が最高だった。それに顔をくっつけたときの二人の良い匂い。高木さんはラベンダーっぽい。会長さんはスズランだよね。


 あ~ ヤバい。今夜は寝られないかも。え? そりゃ、だって、だもん。


『未玖が起きちゃっても入ってこられないように、どうやってドアを塞ぐか考えなくっちゃ。あいつ異様にカンが良いっていうか、たまに起きてくるんだよなぁ。気を付けないと』


「続きって言うか、ホントのは、今度ね。負けないから」

「ひな、私だって負けませんよ。でも、まずは石田君の復讐の話からね」


 さすが会長。まだ、ホンワリと目元が赤いのに、話を戻してきたよ。


「復讐……」


 会長さんは、真面目に頷いた。


「はい。石田君は『そんなのどうでも良い』っていうかもしれませんけど、ちゃんと復讐を成功させないと、ウソ告大好きのイメージを取り消せないと思うので」


 高木さんは「私達も協力したいの。お詫びの気持ちもあるけど、それだけじゃないからね」とグッと身を乗り出した。


「ひなと一緒に協力するわ。作戦があるんだけど、聞いてくれる?」


 正直「復讐」ってことよりも、高木さんと会長という超美少女二人と、顔を突き合わせて話ができることだけでも、オレは幸せだったんだ。


 そして、高木さん、会長さんの呼び方が「ひな、みずほ」に変わったのは、オレの人生が変わった大きな第一歩だった。


 あれ? よく考えたら、今日って二人から告白されてね? 返事はキスしちゃった後でと言われて、二人にキスしちゃったわけだ。ってことは、オレ、二股しちゃってる? でも、でも、でも、二人がそれを期待していたわけで…… 


 あぁ、悩みは尽きないよなぁ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

今回は、短くてすみません。


いつも未玖ちゃんが寝たのを確認してからいそしむ光樹君ですが

夜中、お部屋をノックされて慌ててしまうことがあります。

急に入ってこないのだけが救いですが、やっぱり邪魔ですよね。

ただ、引き出しの下に隠した「妹もの」がオカズの時だけは邪魔されないことに

まだ気付いていないようです。徐々に調教されていくのか光樹!


一生気付かないかも……

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 




 






 



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