第15話 ピンチ?
ウソ告だらけになった「謎」が、普通にわかった。
そりゃ「ウソ告したいヤツはオレんとこに来い」と本人が言ってて、みんながやっていれば、自分だけやらないってのは、女子としたら怖いよね。
しかも、ニセのオレ君は、ウソ告される度に、さらに煽ってるんだ。この間の宇佐美さんが典型だけど、最近のウソ告がどんどん雑になってきたのも、クラス全体に「まだヤルのかよ」的な雰囲気になっているせいだったわけか。
RINEの画面だけを見たら、完全に、オレ君(ニセ)が悪いよ。
「はぁ~ 知らなかったよ」
画面を見てため息。クラスのグループから抜けてた、ボッチ君の立場を利用された感じだ。
「コードを使ってるみたいだから、誰が招待したのか、わからないけど、たぶんサッカー部の青木君たちじゃないかなぁ」
高木さんが、画面をスクロールさせる。
「斎藤じゃなくて?」
「それなんだけどね」
会長さんが、割り込んできた。
「確かに、斎藤君が一番目立つのは確かよ。でも、実は青木君がボスなの。むしろ、斎藤君が使われてる感じね。ほら、さっきだって、斎藤君たちがあなたたちのことをつけてたけど」
「え?」
「まじ?」
「あ? 気づかなかった? 斎藤君と松下君が、こっそりとつけてたよ? たぶん、青木君の命令で二人をつけてきたのね。斎藤君達の後ろ姿を見てピーンと来ちゃった」
「青木の命令? だって、あいつサッカー部のレギュラーでもないんだろ?」
「サッカー部の中のことはよくわからないけど、ほかの人たちが青木君の顔色を窺っているのはわかるわ。そして、青木君はひなのことが好きなの。石田君が邪魔だと思ってるんでしょうね」
「なんで?」
マジでわからない。
「ほら、合唱祭よ。1組は、ひなが、また責任者をするんでしょ? 石田君もパートリーダーをするだろうし。そうしたら、仲良くなっちゃうって心配なんじゃないかな」
「いや、今年は、さすがにパートリーダーはないんじゃ「ううん。たぶん、石田君よ」え?」
高木さんの顔を見つめた。マジな顔だ。
「パートリーダーをやらせて、男子は石田君が困るようにわざと騒いで、それを青木君がまとめて見せるって形をとるみたい」
「なんで、そんな面倒なことを?」
「あくまでも、噂だけどね。須藤さんがほのめかしてる言葉から想像するとそうなるわ」
メギツネめ!
「でも、それくらいなら、初めから青木がやるっていえばいいんじゃね?」
会長が腕を組んで「それじゃ、ダメなんだと思うわ」といった。
「あーいう子たちは、ライバルをつぶさないと気が済まないのよ。自分に自信がないから」
「え? どういうこと?」
「石田君がうまくいかなくなって『あいつじゃダメだ。デキるオレが仕方なく変わってやったぞ』って言いたいの。でも、途中からだったから、賞を取るまでにはいかなかった。オレが最初から見てやれば賞は取れたのに……的な?」
「なに、それ」
最初から負けるの前提って……
「自信が無いのよね、結局」
「でも、自信の問題じゃないと思うんだけど」
ヤれるだけ頑張るって発想はないのかよ。
「それに、そうやれば、自分はひなに恩を売れるとでも思ってるじゃないかなぁ」
高木さんは「バカにしてるのよ、あの人達」とぷんすか。
「さて、ここまでのところはわかってくれた?」
「なんとなく」
「問題は、この後、なんだけど、その前に」
一瞬間を置いた、会長は、高木さんと一瞬、視線を合わせたんだ。
「私達を信じてくれる?」
なんか、目がキラキラしてるんだけど。
「急な話でしょ? ひなと私のことが信じられなくても当然よ。でも、私達は石田君を助けたいの。といっても、ずっと、ウソ告で傷ついてきたんだもん。言葉で信じろとは言わないわ」
「え?」
「ね? 信じくれるなら、私達の……」
「どっちが先?」
二人が揃って瞳を閉じたんだ。
前略、お母さん。
ボクは、案外と人生最大のピンチなのかも知れません。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
実は、高木さんと会長は、お隣同士です。お気付きの通り、石田君のことを
最初は高木さんが好きになり、会長さん も 好きになってしまいました。
ライバルだけど、仲の良い協力者でもあります。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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