第14話 ウソ告するならオレんとこに来い!


 深々と頭を下げる会長さん。


「最初に、ここまで見過ごしてしまったことをお詫びします」

「ごめんなさい」


 高木さんも頭を下げてる。


「いや。頭を上げてよ。二人とも悪くなんてないじゃん」

「イジメを見逃していたのは、イジメをしたのと同じなので」

「私達は、見過ごしてました。ごめんなさい」


 前略、お母さん。僕は今ピンチです。美少女二人に膝が付く距離で頭を下げられてます。深々と頭を下げているせいで、首筋の白さに目が奪われそうです。いえ、そこにつながる背中が見えて、とってもドキドキしちゃってます。僕の理性、飛んじゃっても良いでしょうか?


 手を伸ばせば、触れちゃえそうな距離にある白い首筋。


「石田くん?」


 上目遣いで見上げてきたよ。とっさに見下ろしたら、ボタンを一つ外した胸元が覗けちゃいそうだ。


 慌てて目を逸らした。


 ヤバッ


「と、とにかく、もしも、お詫びしてくれる気持ちがあるんなら、話を先に進めてよ」


 二人の良い匂いが、すぐそばなんだ。どうにかなっちゃいそうだよ。


「そ、そうですね。確かに。反省を示すなら、まず、私達の考えたことをわかっていただけるように、全部話すのがスジですよね」


 会長さんは、さっきの、激オコのカケラも見せなくなった高木さんに「見せてあげて」と促した。


「石田君って、これ、退会しちゃってますよね?」


 見たくない。クラスのグループのやつだ。オレのウソ告あほ面がいっぱい載ってるって話だ。山形から聞いてる。ヒールとベビーの一件で、やめちゃったらしいけど、あいつはバスケ部だから、いろいろと聞いてるらしい。けど、オレはなるべく聞かないようにしてきた。


「あ、うん。だって……」

「あ、ごめんなさい。責めるつもりなんて無いんです。違うんです。このクラスのグループには石田くんがいないはずなのに、なぜかいるんです」

「え? ごめん、意味がわかんないんだけど」

「ほら、これ、見て下さい。移動教室の直後に、退会しましたって出てきますよね? その一週間後です」

「え? 何これ?」


《ごめん。やっぱ男らしくなかったわ。謝る。ちゃんとみんなと話をするから仲間に入れて!》


 アニメキャラから取ったアイコンも同じだ。


 高木さんが細い指先で画面を示している。


「ここで再入会してるの」

「ちょっと、待って。オレ、そんなの知らないよ!」

「そうですよね。私達も、ずっと騙されてたので」


 会長が気の毒そうに「もっと早く気付くべきでした」とペコン。


 いや、会長のせいじゃないと思うんだけど。


「ずっと、RINEの発言が、石田君っぽくないなとは思ってたんですけど、私達もなるべく見ないようにしてたんで、深くは考えなかったんです」

「再入会したときの口調も石田君らしくなかったし。それに、ほら、これって移動教室の2週間後のやつよ、ごめんなさい。見たくないとは思うんだけど、一緒に見て」

「あ、これって、鈴木さんの時か」


 鈴木陽菜はるなさんは、どっちかというとイジメられ体質の子だ。トップカースト達に逆らえなかったんだろう。ウソ告4号なんだよね。


 大人しくて、オドオドしているから、どうせヤツらの差し金だろうと思ったけど、とにかく受け入れたんだ。


「これの後に、いろいろと写真が載ってるでしょ?」


 さささっと、ウソ告を受けたときの間抜け顔の数々や、冷やかしの山をスクロールしてくれたのは、オレへの優しさだろう。 


「ほら、これよ。見て?」

「ええええ! なんだよ、これ!」


 そこにはオレのアイコンでが堂々と宣言してたんだ。


《ウソ告するならオレんとこに来い! 全部OKだぜ! 大歓迎だ!》


 え~ そんなの聞いてないよ!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

 鈴木陽菜はるなさんは、中1の時にイジメを受けて

 不登校気味の帰宅部です。もちろん、斎藤達に脅されてのウソ告でした。

 

 

 タイトルを回収しました!


 まさかの「ニセモノ」の発言が広まっていたわけです。

 当然、乃々佳も、杉山さんもこれを見ていて

 本人に確認しようとしたのですが、

 接触を拒否られているため、一切話すことができない状況でした。

 ちなみに、未玖ちゃんは下級生なので

 これをウワサのカタチでしか知りません。 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 




 

 

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