第9話 ダブル告白の行方
え? これって、ダブル告白ってヤツ?
って言うか、そんなのマジであるんだ?
どっちかの手を取ると、片方を捨てたことになるんだよね?
いや、その前に、何で俺に告白してんの? 山形じゃないわけ? 以前、乃々佳から聞いた時は「女バレの子達は山形君推し」って言ってた気がするんだけど。
もう、疑問符だらけでパニックになりそうだった。
でも、と、とにかく、目の前には手を差し出している女の子がいるワケで。
『オレは決めたんだよな。告白してくれた子は、どうしても嫌じゃない限り受け入れるって』
杉山さんの時の悪夢を打ち消すためにも、ここは受け入れてしまおう。
どっちを選ぶ?
そりゃ、とうぜん、悪巧みしてそうな松井さん《べびー》は、ちょっとない。
『野中さん一択だよね』
野中さんの手を取ろうと手を伸ばした瞬間「お願い、両方でも良いんだよ。ね? 二人同時でもいいんだから!」と声を出したのは松井さん。
え? 二人同時? それは人としてダメでしょ。
その時、松井さんが小さな声で「お願い、妃衣瑠の前で恥をかかせないで」とチラッと見上げてきた。
で、でも、さ、二人と付き合うなんて、そんなクズのようなマネは、ちょっと、できないよ。
「お願いします。二人とも、それで納得してるから」
え~ ホントに?
こっちは「告白されたら断らない」って決めたのは確かだけど。二人と付き合うのを納得してるって言ってもなぁ。
「お願いします」
「お願い!」
結局、両方の手を伸ばしてしまった。後で考えれば良いよね。二人が納得してるって言ってるし。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二人の手を取った瞬間だった。
「はい。クズ君、けって~い」
「両方とかw」
「何、色男? マジ、ダブルだと思った?」
「モテるつもりかよ、インキャの分際で」
「ないからっ、いっしょう、そんなのないから」
体育館のドアに隠れていたトップカースト連中がダッと出てきたんだ。
おまえら、土足で体育館に入ってたのか? ……じゃなくて。
「お前がクズだって言う証拠は、ちゃんと撮ったからな」
斎藤が指さしたのは体育館の下窓だ。
お前ら、学校にスマホ持ち込みは禁止じゃん?
「いやあ、見事なクズ君ですね。付き合うときから、二股ってw」
斎藤寛太が、後ろから蹴ってきた。
「どうするよ? 先生に言う? ボク、二人の告白を両方受けましたぁ~って?」
どうやら、先生にチクらせないようにというつもりだったらしい。
それにしても、この二人も手先だったとは知らなかった。
「ちょっと、ベイビ、そんなの聞いてなかったよ。なに、これ、ちょっと」
「いいの、いいの。ほら、行くよ。私達の出番はここまでだから。大丈夫、私達の顔は映ってないからね」
「ね、これ、おかしいって、ね、ベイビってば、ちょ、ちょー」
無理やり、松井さんと須藤さんに連れて行かれた野中さん。
う~ん、あれが演技じゃないとしたら、野中さんは知らなかったのかも知れないけど、ウソ告はウソ告だよね?
その日のウチに、クラスLINEで、オレが二人の手を取る「クズ君決定!」の写真が出回ったんだ。
騙した二人が悪いのか。
オレが悪いのか?
ボクハワルクナイヨー (棒読み)
反省はしない。反論は許す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者よりお知らせ
第8話でも申し上げましたとおり
このまま、ウソ告とイジメシーンを時間順に書いていくと読者様にストレスがたまるばかりになりそうです。
せっかくの夏休みくらいはストレスを発散していただきたいので、次の話は、第1話のウソ告をされた後の話を書いていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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