第2話 告白はオールOK!


 


 ウソ告ってヒドいよなぁ。


 オレはF市立富士川中の3年1組、出席番号2番。帰宅部部長の石田光樹みつきだ。


 趣味は読書。


 マジだからね? 「趣味は読書にしとこ」っていうのじゃなくて、マジモンで本が好き。しかもラノベだと物足りない派。漱石も読むし、春樹も読むよ。ただし、川端康成と山田詠美は嫌い。


 ってことで、主な出没区域は図書館だ。


 ついさっき、35回目のウソ告をされたところ。もちろんOKしたよ。


 相手は、2組の保健委員をやってる富田さんだ。眼鏡っ娘で優しい子。胸部装甲が皆無に等しいのは玉に瑕だけど、オレはもともとオッパイ星人じゃないしね。


 宮田さんは、どうみてもイヤイヤやらされてる感じだった。そうだよね、オレみたいなのには、ウソでもコクるなんて嫌だよね。


 オレが「OK」をした瞬間に撮影班とウェーイ軍団が飛び出してきた。今日は、保健室の前の衝立に隠れていたらしい。


「ごめんなさい」


 富田さんは謝ってくれた分だけ優しいよ。じゃ、最初からヤルなよって話だけど、「みんながやってる」から、やらないとイジメの対象になるからね、しょうがないさ。


 クラスラインにオレの顔が飛び交うんだろうなぁ。最近はAI生成でオレがひっぱたかれるシーンとか、下級生にウソ告されてる「写真」まで出回り始めた。


 ムダに技術力があるよ。


 何人にウソ告されたか、本当の数を知っているのってオレだけなんじゃないかな?


 これも、身から出たサビといえば仕方ない。高校に入るまでは我慢しよう。どうせインキャだし。給食を食べたら図書室に引きこもってれば良いもんね。


 もちろん、教科書セットは持ち歩くよ。さもないと「正義の鉄槌」とか言って、落書きされたり隠されたりするからね。


 それとカバンの中には落書き消しを常備してる。机の落書きを毎日消さないとだから。


 あ~あ、何でオレ、あんなこと言っちゃったかなぁ。


 のキッカケは、移動教室の時だった。


 夜に、変なテンションになることってあるじゃん? しかも、直前の「大失敗」のせいで、オカシクなってたんだと思う。


 大失敗が何かって?


 それはだね……


 告白だ。


 告白したんだよ。


 子どもの頃から好きだった木山乃々佳ののかに告白した。そして「心折れる体験」をしたんだよ。


 心の傷になった。


 辛かったなぁ。だって、断られるだけならまだしも、告白した途端に「ぷっ」と噴き出されて笑い転げられちゃったんだもん。


 身分違いだろってことだったんだろう。確かに、乃々佳はオレが「幼馴染み」なんて言うのをためらうくらい綺麗だ。軟式テニス部の女子キャプテン。人望もある、明るい子だ。


 声も澄んでいて、富士川中・四大美女の一角だと言われてる。


 オレみたいなインキャが告白なんて、いくら幼馴染みと言っても、身分違いだったよね。


 ケラケラと爆笑し続けるだけの乃々佳を見ていられなくて、もうね、ダッシュで家に帰って毛布を被ったもん。


 乃々佳のアドも消して、全部ブロックして。電話も拒否にした。


 ひたすら部屋に閉じこもった。


「乃々佳ぁあああ! ひどいよ、ひどいよ! いくらなんでも笑うなんてないじゃん!」


 部屋に籠もって泣きわめいたよ。我慢できなかったんだ。


 一週間誰とも会わずに引きこもってたね。


 家族に会わないようにしてたけど、妹にはどうしても顔を合わせる時があって、気まずかった。


 妹は「キモ」とか言いながらも、いつものように蹴ってきたりはしなかった。廊下で体当たりしながら「ちょっと、いつまで泣いてるつもりなの? バーカ」とくれた。


 案外と優しい妹だった。でも、あんな風に正面から体当たりしてきたら、本人も痛かったんじゃないかな?


 夜中にそっと水を飲みに降りていっても必ず見つかって、体当たりされると、微妙に膨らみがぶつかるから、地味にメンタルがキツかった。エロゲとか、薄い本の中ならともかく、妹のオッパイで興奮しちゃったら、さすがに変態だもんね。


 うん。だから、毎回、死ぬほど腕立て伏せと腹筋をやった。死ぬほどやった。

 

 というわけで……


 移動教室の直前まで学校を休んでたんだよ。


 ただ、引きこもっている間に考えたんだ。「もしも、いつかオレに告白してくれる人が現れたら、その時は、相手が誰であってもOKしよう」って。


 だから、オレはインキャ仲間達に言ったんだ。


「大事なのは気持ちだよ。相手が裏切らない限り、オレを好きになってくれた人と付き合う。それがオレのモットーだ」


 部屋の片隅で「インキャ仲間」とこっそり喋っていたはずが、サッカー部の陽キャ達に聞かれてるなんて思ってもみなかったんだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

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