ウソ告したいヤツはオレんとこに来い! え? 実はホントだった? だが遅い。

新川 さとし

第1話 体育館裏の告白

 オレの名前は石田光樹みつき。でも、「こーき」って、みんな呼んでる。先生もオレの名前を「こうき」で認識しているらしい。


 つまりは帰宅部の、すごーく目立たない生徒だ。インキャって言われたら、反論はできないかなぁ。


 今、オレは放課後の体育館裏に来ている。


 体育館では女バスと男バレが練習中だった。


 吹き抜ける風がちょっと冷たい。ま、10月だとそんなもんか。


 目の前には、練習を抜けてきた女バスのセンターでスタメンの宇佐美ゆりさんがいた。オレよりも5センチほど背が高い。


 練習用Tシャツ姿の宇佐美さんは、ちょっと高い目線から見下ろしている。ニヤニヤして見える笑みを浮かべていた。


 うん、気のせいだよね。人間って恥ずかしいと、笑っちゃったりするもんね。大丈夫。オレは誤解して、それを


『それにしても練習の合間の休憩中に、練習Tシャツ姿で告白ってのは、さすがに手を抜きすぎじゃね?』


 そんなことを思いつつも、しっかりと告白を受けるのは、オレの義務のようなものだ。


 へい、へい。バッチこーいww


「石田君。みんなにヒドい目に遭わされて可哀想。私だけは味方なの。信じて」

「ありがとう」

「大好きです。私と付き合ってください」

「もちろんOKだよ!」

「やったぁあ!」


 後ろを向いて、ピョンピョン跳びはねている。Vサインだ。

 

「おぉ! ゆーりん、大成功じゃん!」

「やった! ゆーりん」

「すごぉい」


 撮影班は、しっかりとスマホを構えてた。おいおい。いつものことだけど、持ち込み禁止のスマホ。女バスの顧問に見つかったらヤバいんじゃね?


 余計な心配をしているオレを気にすることなく、宇佐美さんはサッサと体育館に戻ろうとした。


「じゃ、そういうことで」

「あ、えっと、宇佐美さん」

「何?」

「あのさ、これって、あの……」

「休憩、もう終わりなんだ。じゃあね」

「帰りを待った方が良い?」


 付き合う以上、一緒に帰るくらいはするよね?


「え? あー ウソウソ。ウソ告だから。もう~ 本気にしないでよ。慣れてるんだろ? じゃ、また明日」


 パッと「サンダル」を脱ぐと体育館の中に入って、バッシュを手にしている。


「やだぁ、本気にしてたんだぁ」

「馬鹿じゃん? こんなに雑な告白なんてあるわけないのにね」

「休憩タイムの、いい、気分転換になったね」


 女バスの三人が、キャッキャと騒いで「ばーか」とダメを押して体育館のドアをガン!と閉めてしまった。


 ふう~


 また、ウソ告か。


 これで何人目だっけ? うちに帰って数えてみるか。っていうか、これでもう、学年でウソ告してきてないヤツ、残り6人じゃん。ウチの学年の女子って、確か40人だったっけ? うわぁあ……


 世界一ウソ告された男って、ギネスに申請した方がよくね?


 今日の夜も、オレの「ウソ告に喜んでる顔」が出回るのかなぁと思いながら、もはや、どーでも良くなった学校を後にしたんだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

いろんな意味で肩の力を抜いて、できるときに更新していきます。

1話は短いですが、続きを読んでみたいと思った方は

ぜひとも★評価にご協力ください。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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