第23話 仕掛けられていた“罠(スキル)”

この程私は、とある神からの『是非とも(私の事を)てみたい』とする『要望』にこたえるため、その神―――『時空』をつかさどると言う『クロノス』様にお会いをしたところだった、そしてその『要望』はとどこおりなく済ませられたもののその直後にクロノス様から次の『要望』が追加されたのだ。

{実はね、『紅き悪魔カラビネーロ』と言う不逞ふていやからが各次元世界せかいを荒し回って困っているのだよ、く言うこの僕の次元世界せかいでも―――ね。}

紅き悪魔カラビネーロ』、その特徴を聞くと『深紅あかい素地に漆黒くろいろどりほどこした悪魔』なのだそうだ、それに狡猾こうかつ狡知こうちにして実力も高い―――そんな存在が各次元世界せかいを荒らし回っているという、それにクロノス様からの情報を聞く限りでは…

{彼の者と君の実力を比べた際―――同等と見た方がいいかな、つまり下手を打たなければ負ける要素はどこにもない…まあ君の自信を付ける施策しさくだと思ってくれたまえよ。}

彼我ひがの実力差はほぼない―――とするなら、私の自信付けにもいいか…とそう思い、クロノス様からのその『要望』を受けてしまった。


 ―――けれど…この選択がのち程にになってしまうなんて―――


私は愚か者だ…自分の足下を良く視ずに歩みを進めてしまった未熟者だ。

つまりはそう言う事だ、これは単なる『討伐』の依頼ではなかったと言う事だ、―――クロノス様は私に

それにこれは私だけではなく女神ヴァニティアヌスをもあざむいた―――『時空』をつかさどりし高位の神の面目躍如めんもくやくじょと言った処だろうか…


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こうして私はクロノス様からの『要望』に基づき『紅き悪魔カラビネーロ』と対峙たいじする為にの者の次なる出現地点で待ち構える事にした。


「(―――うん?)私に、何か用かな?」


私と『紅き悪魔カラビネーロ』とは初対面同士だ、それに私はの存在の事をクロノス様から聞いていた、聞いてはいたのだがそれは所詮しょせん抽象的ちゅうしょうてきなモノでしかなかった、『深紅あかい素地に漆黒くろいろどりほどこした』…確かにその表現は間違ってはいなかった、と言うよりその表現では一言一句いちごんいっくたりとも間違ってはいなかったのだ、ただ……『悪魔』かどうかと言うと―――「その前に聞いておきたい事がある、お前が…『紅き悪魔カラビネーロ』―――なのか…」

「…フッ、なにやら私の知らぬ処でそう呼ばれてはいるみたいだな、その事については否定はするまい―――そなたも以降その様に呼びたければ、そう呼ぶがいい…」

その者は美しい女性だった―――ただヒューマンの女性かと言うと…身体つきや全体像で見るとヒューマンと同じ特徴をしているのだが、額から伸びる禍々まがまがしい深紅あかいろどられた2本の“角”と、両目を覆う黒革くろかわ眼帯がんたい―――そこにほどこされた深紅あか染料せんりょうえがかれた『単眼たんがん』のしるし、その様相ようそうは『悪魔』と言うよりは…「お前は、鬼人オーガ?!」

「それも、否定はするまい。 確かに私は鬼人オーガ…ただ今が『そうか』と問われると難しい所ではあるがな。」

「(…)何も私は問答もんどうをしようとしているのではない、『違ういいえ』か『違わないはい』かそれだけを答えればいい…」

「それも先程言ったはずだ、『そう呼びたければそう呼ぶがいい』…とな。」

「それでは答えになっていない―――!」

「ではどう答えればいい…?」

それに…次第に『紅き悪魔カラビネーロ』と言葉を交わし合って判ってきた事があった、この者には―――知性がある!?“混血ハーフ”と言えどもエルフであるこの私以上に?! そう思わざるを得なくなったのは、次のこのセリフからだった…


「私は―――前世では盟友めいゆうの為になればと、盟友めいゆうに成り代わり敵と成れる者達の排除を肩代わりしてきた、前世での私は確かに鬼人オーガだった…だがその特徴たる角はなく、“角ナシホーンレス”とさげすまれる事が多々あった、しかし盟友めいゆう鬼人オーガらしからぬにない手になると…この手を取って下さったのだ、その恩にむくいいる為―――私は盟友めいゆうの『剣』となった、やがて盟友めいゆうは世界を平定しその王位に就いた…盟友めいゆうには私の他にも仲間がいた、そして盟友めいゆうが世界の王にくと同時に私達は『英雄』とたたえられた…そしてその先―――私は盟友めいゆうを支えていく、しかし運命とやらは残酷なモノでな私は不本意な死をげざるを得なかった。 そしてしばらくしたのち、魂だった私に話しかける者がいたのだ、その存在こそ“神”―――この私の“個”としての意見など関係なく、私は再度ふたたびの生をあたえられた…そしたらどうだ?私の額には前世になかった2本もの“角”があるではないか!ならばやはり私はそなたの言うように『鬼人オーガ』なのか…いいや、…何故なら鬼人オーガには!」


その時私は言葉を失ってしまった、『クロノス』という神にかつがれた事もそうなのではあるが、それ以上になめらかに説明をされたその者の過去に、確かに私はこの者の額にあるモノを見てカラタチと同じ鬼人オーガと判別した―――ものの、鬼人オーガの背にはない“翼膜”…つまり『悪魔』や『魔族』特有の蝙蝠コウモリの様な翼がある事も確認した、そう…『紅き悪魔カラビネーロ』は鬼人オーガではない、紛れもなくの『悪魔』なのだ!

「さて、いかがするね?フロイラインお嬢様―――」

「わ、私の事をフロイラインお嬢様などと!」

「違ったのかな?声の“抑揚イントネーション”―――心拍しんぱくの“動悸どうき”―――女性特有の“甘い芳香かおり”…例え両目をこの黒革くくろかわで覆われていようとも視え過ぎる私の感覚に捕えられない事はない。」

かなわない』…即座にそう思ってしまった、今の私では強がることが精一杯―――そう、思ってしまった…それに、私は自分に自信がない、その自信を付ける為にと安易あんいに請け負ってしまった事を後悔しつつも、私は……

「(……反応がない――)もしかすると戦意喪失でもしてしまったかな?また或いは尻尾を巻いて―――ああいや言葉には気を付けよう、現状を照らし合わせた上で己の実力不足を読み取り、退したと言うのであれば、それはそしりの対象にはならんよむしろ良く判断したと賞賛してしかるべきだ、故に私はそなたの事は責めはすまいよ…。」

悔しい―――無念だ、歯痒はがゆい…いきどおろしい、私は『紅き悪魔カラビネーロ』と一戦を交える前に戦意を喪失させ、その場にへこたれるしかなかった、その事を『紅き悪魔カラビネーロ』は良い様に取ってくれたものの、既に戦意のくじかれた私などに興味はないと言ったように自分に課せられた使命を果たしたのだ。


         * * * * * * * * * *


ただ私としては、本来の『要望』ではなかったものの、付属おまけとしてついて来たモノに飛びつき―――挙句は“失敗”…そうした苦い経験でも依頼主である『時空』をつかさどる神に…

{ふうん―――失敗をしてしまった、と…それは残念。 僕も期待をしていたのだけれどね。}

「あの―――クロノス様、ひとつお伺いをしても?」

{なんだろう?}

の存在…『紅き悪魔カラビネーロ』の事はどこまで知っておいでだったのですか。」

{どこまで―――と言われても、君に説明をしてあげた事以上のモノは僕は知らないよ。}

「そうでしたか…でしたら私の落ち度である事の他ならない、あなた様から頂いた情報を基に請け負った私が至らなかったのだ。」

{『紅き悪魔カラビネーロ』と何かあったのかい?}

「私は今回、の者と対峙した折にの者の凄絶せいぜつな前世を知りました、エルフと言えども“混血ハーフ”…所詮しょせん18年しか生きていない私のせいではとてもではないが許容きょようできなかった…」

は事実だ―――紛れもないだ…あの独白どくはくにより私の戦意は半分以上がくじかれ、の者の目的も阻止できなかった。

それはそれで受け入れられた事だったのだが、がこの時起きたのだ…

{ふうん―――つまり“”は自分の前世を話したと??}

「(…は?)なんの―――事を?」

{いやあ珍しい事もあったものだとね、関心をしているのだよ。 吐露とろ?}

「何を……言って―――?」

{“”はね、これまで色々な神からの『要望』にこたえてこなして来たのだよ、その最中さなかには遭遇エンカウントままにしてあった―――しかしね、“”はこれまで話した事などなかったのだよ、“”自身の前世過去を…。}

「ふ…っ、ふざっけるな!ではあなたは知っていたというのですか!の者の全容ぜんようを、その前世過去を!それをなぜ私には話してはくれなかったのですか…話してくれていればこの様な惨めな思いなど……!!」

{悪かったね、君の反応をたくて、ね―――まあ今回頼んだのは失敗をしてしまったけれども、それが君への評価を下げた事にはならないから、安心をしなよ。}


         * * * * * * * * * *


今回私はまたも醜態しゅうたいさらしてしまった、それも私達の創世神ヴァニティアヌスの前ではなく他の神の前で、その事を私は恥じ入りヴァニティアヌスにもその事の報告をおこたってしまった、それは…当然カラタチにも―――

あとにしてみればこれが最も“してはならなかった事”だと気付くのには遅すぎたと言っても良かっただろう。


  ―――そして序章はじまり』、私の“絶望”への秒読みカウントダウン―――


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして私の“絶望”は早晩そうばん襲い来る……そう、恐れていた事態が起きてしまったのだ、私の“絶望”が―――『紅き悪魔カラビネーロ』が、ヴァニティアヌスの次元世界私達のせかいへとまかり越したのだ。


       ―――それにしても一体何の目的の為に?―――


「こちらに鬼人オーガ姫巫女ひみこであるカラタチと言う者はいるか。」


      ―――カラタチを?一体また…何の理由で……―――


わたくしがそうですが、あなた様は一体?」

「そなたがそうか、ふうむ…申し分ない―――その胆力たんりょくと言い、気力と言い…私は『紅き悪魔カラビネーロ』と言う、そなたにしてみれば『初めまして』だが、こちらの[英雄][勇者]共々面識はある…」

「そう言う事でしたか―――では、あなたがだと言うのですね。」

「私の事を、知っていたと?」

「この次元世界せかいでもれきとした[英雄]であるベレロフォン様が辛酸しんそんめさせられた…確かその時の名が『紅き悪魔カラビネーロ』だったかと…」

「フ・フ―――そうか、あの者は『ベレロフォン』と言っていたか、確かに私と渡り合えるまでの実力は有していたがの実力はにいたものでね…どうやら記憶には残らなかったようだ。」

「そうですか…それよりも、もう一つうかがっても?」

「何かな―――」

「確か先程あなた様は[勇者]だと…?フレニィカさんと何があったのですか。」


          * * * * * * * * * *


確かに数日前、あの人はヴァニティアヌス様の『要望』に応じ、他の神様の『要請』にこたえるためにその神様のもとへと参りました。

けれどその神様からの『要請』にはこたえたはずなのに、何故かあの人の表情はえなかった…その後ヴァニティアヌス様にフレニィカさんがおもむいた神様の『要請』の内容を聞くと―――「あの人を『る』だけ?」

「ああ、そのはずだったんだが…ありゃ何かあったに違いはない、だけどあいつからじかに話してくれないとなあ、私にだって判るはずもない。」

「何かまた、良からぬ事でも……」

「その可能性の方が高いと言った処か、まあ何か事態が起こってもいいよう態勢たいせいだけは整えておくとするか。」

何でもその神―――『時空』をつかさどると言う『クロノス』と言うかたがフレニィカさんに興味を抱き、あの人を『る』だからと貸し出して欲しいとの事でした。

その内容を聞いた時、わたくしは『る』と言う言葉のあやからめとられ、その言葉の奥底に潜むものを軽視してしまっていた―――

そう…『る』って一体?あの人の持つ能力値パラメーター技能スキルだと言う事は判りはするのですが、まさか『』までも?


     ―――そしては、悪魔から告げられる―――


「どうやらその様子では、あのフロイラインお嬢様とこの私とが対峙し向き合った事までは知らなかったようだな。 ああ―――そう言う事だ…あのフロイラインお嬢様は『時空』をもてあそぶ神に、言葉通りもてあそばれたのだよ…そしてだまされた挙句に私の前世過去を知った、まあ私の前世過去を話したのは私の意思ではあるのだがね、…私がの―――『時空』をもてあそべる神から請け負った『要望』でもあるのだがね…」

「なんっ―――だ、と…?ではあのかたは…私をそそのかしたのだと?!」

「フッ、いかが…かね?フロイラインお嬢様―――ようやくそなたの抱いていた違和、晴れたかな。 そう言う事だ…つてこの次元世界せかいの[英雄]にすら語らなった私の前世過去を…話したのだ、とは言え『話す』か『話さない』か…だ―――これが何を意味するか、分かるかね?」

「それは―――別に『話さなくても良かった』、けれどあなた様は『話した』…何故ですか。」

「この事は―――まさしくの噴飯ふんぱんものだ…前世過去の“私”では考えられなかった事だ、だが望まぬ再度ふたたびせいを請けたまわったのち、私は様々な神からの『要望』に応えて来た…そして次第に慾に取りかれたのだ、『未知なるを知りたい』と…私の盟友めいゆうはその事に関しては貪欲どんよくだったよ、前世あの日あの時の“私”には到底判らなかった事だが、次第に思ったものだ…―――『未知なるを知ればこの後どうなるのか』を…な。」

「『悪魔』―――」

「どうとでも言うがいい……それより私の依頼を果たさせてもらうぞ。」


「やっ―――やめろ!『紅き悪魔カラビネーロ』!彼女だけは…カラタチだけは―――」


「ならば、救済すくってみせろ―――この“絶望”から…」


圧倒的な実力の差により地に伏せた私を嘲笑あざわらうかのように、『紅き悪魔カラビネーロ』はカラタチのくびねた―――



そう…私の“絶望”―――失ってはならない私の大切な者を、護り通せなかった私の悔恨かいこん……


そんな不様な私に一瞥いちべつをくれる事もなく『紅き悪魔カラビネーロ』は去って行った、その場に残っているのは護るべきものを護れなかった不甲斐のない[勇者]と、くびのない私の大切な友人の死体だけ……


これが―――これが“現実”なのか?これ“現実”なのか―――…余りに受けれられない状況に、私はしばらく茫然自失ぼうぜんじしつするしかなかった


だが、カラタチが私の所為せいで無惨な姿に成り果ててしまったのはまぎれもなくの事実、そんな忘我ぼうが境地きょうちと成っている私に、『時空』を―――『運命』をもてあそぶ神から与えられたものが作動うごき出す


         * * * * * * * * * *

『う…ここ―――は?』

{やあ、ようやくお目覚めの様だね。}

『な…っ!お前―――はっ!クロノス…これは一体どう言う事なのだ!』

{『どう言う事』―――と、は?}

『知れたことを…今回の事は総てお前が仕組んだ事なのだろう!お前が余計な事さえしなければ、カラタチは死なずに済んだと言うのに…』

{だが―――彼女は君にとって邪魔な存在でしかなかったのだろう?逆にお礼を言ってもらいたいものだね、のお蔭で“彼”を独り占めに出来ると。}

『そんな事を―――私は望んでなど…』

{『いない』―――と、そう言い切れるのかい。}

私が忘我ぼうが境地きょうちへといたった時、私の目の前にはみじめになった私を嘲笑あざわらうかのごとくに待ち構えていたクロノスがいた―――その神こそは今回いたってしまった事象じしょうの元凶…私は、許せるはずもなかった。

けれどその神はまたしても私にささやきかける―――私が憧憬こがれていた“彼”との関係を唯一邪魔立てする存在、その恋敵ライバルがいなくなった事に感謝をしろ、と…

確かに―――確かにそうだった、初めて“彼女カラタチ”を見た時、私はかなわないと思った…鬼人オーガなのにあんなにも可憐で可愛い存在に、そして同時に『いなくなれ』と言う負の感情を逆巻せさせたのも間違いのない事だった。

しかし“彼女カラタチ”と関係をむつまじ合わせていくたびに、同性である私でも可愛いと思うようになってしまった―――出来る事なら…失いたくないと、思ってしまった……


    ―――その“彼女カラタチ”が……死んだ、他ならぬ私の所為で―――


私が恥も外聞がいぶんも投げ打って“彼女”打ち明けておくべきだった……けれど、私には出来なかった―――[勇者]だから…[勇者]、余計な心配を掛けたくなくて、つい言いそびれてしまった、けれど言うべきだった―――打ち明けるべきだった…



   ―――は私の悔恨かいこん、悔やんでも悔やみきれない、私の固執こしつ―――



すると、『時空』を―――『運命』をもてあそべるものは、ささやきかける……


{ならば、は、だからこそささやきかけよう…『このままでいいのか』―――と}

『何…を―――?』

{言葉通りだよ、本当に『このままでいいのか』―――君の大切に想っている者をで、と問うている。}

『『死なせたままで』―――『いいのか』?そんなはずはない!出来る事ならこんな結末は回避したい!』

{ならば、するといい―――なにしろ君には、それだけの恩恵ファルナムを授けたのだからね。}

一体、何の事を言っているのか判らなかった―――けれど次第には判って来た…そう、そう言う事だ、この神は私に嘘をいた…


今回の事の始まりは、この神クロノス私達の神ヴァニティアヌスに[勇者]の貸し出しの『要請』を出し、その『要望』に[勇者]が応じたからだった。

そもそもこの神クロノスは私を『たい』との事だったが、『時空』を―――『運命』をもてあそべるものが、だけにとどまろうはずもなかった、それに私は念を押す感じで本来の『要望』にこたえた後『何もしていないか』と尋ねたものだったが、この神クロノスは『何もしていない』―――と、答えたのみだった…


           ―――が“嘘”だった―――


『時空』をも、『運命』をももてあそべるのだ、ただ『る』だけで収まるはずもなく、その神クロノスは私や―――してや私の神ヴァニティアヌスにも内緒で私に仕掛けていたのだ。


         ―――総ての事象がそうなるように…と―――


{では、解放を許可してあげよう、が授けた恩恵ファルナム…その解放の鍵こそ『大切な者を喪失うしなった時』―――今回は失敗に終わった事だが、まあそれも言ってみれば強制的にそうなる様に仕向しむけさせたようなものだからね、だから…}


   ―――やり直すがいい…思う存分、君自身が納得できるまで―――


『時空』をつかさどる神が、[勇者]に仕込ませたモノ―――恩恵ファルナム…そのを≪回帰リープ≫と、そう呼ぶ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

{どうか―――したのかい、【緋鮮】。}

「(フ・ン―――)まあ判っていた事だったが、悪趣味の極致きょくちだな。」

{それは褒め言葉と取っておこう、それで?いかがだったかな『悪役』となった気分は。}

「私の盟友めいゆうが聞いたらさぞや腰を抜かすだろうな、だが『悪くはなかった』―――それに、私のせいが続いたとしたならこうした光景も見る事もあったものなのかな。」

{さあて、ね―――いくら『時空』をつかさどる私でも、『未来』はれるがその選択肢は限り無くある、この私ですらえる『未来』でもえているのはでしかないものだよ。}

「それで…?私はこの先どの様にすればよい―――」

{作る必要などない、おのまま振舞ふるまうといい、そしてえて言おう―――[勇者]がこの試練すら突破できなければ、この次元うちゅうはやがて“彼の者”によって蹂躙じゅうりんされ尽くす…}



『時空』をつかさどる神が[勇者]に示唆しさした同じ場所に、実は別の存在がいました。 その者こそ『紅き悪魔カラビネーロ』、その前世を【緋鮮】と乗っていた者…

そんな経歴の持ち主が『時空』をつかさどる神としばらく話し込みました、そう―――このたび起こった事象じしょうの数々は、『時空』をつかさどる神が描いた台本シナリオ通り、だとしても判らない事がある…なぜ『時空』をつかさどる神が自ら筆をって台本シナリオを描かなければならなかったのか。

『時空』をつかさどる神は言う―――所詮彼でも視れる『未来』には限りが有るのだと、しかしそれ以外の『未来』には限りが無い…ならば出来る事は『最悪』にならない様にするだけ、『最悪』にならないようにする為には“総てなにもかも”を打つ必要がある―――そして『時空』をつかさどる神が選択えらんだのは、とある[勇者]に望みをかけてみたまで、そう…“神”のみが使う事があたう≪“神”通力≫を持ちし[勇者もの]に―――


『時空』をつかさどる神がえていた『未来』―――その結末、それは太古の昔他の神々によって追放された神が、復讐ふくしゅうの下に復活を果たし―――この次元うちゅうを【崩壊】へと導くであろう…と言う、一種の『予言』





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