第21話 紅き悪魔(カラビネーロ)
今オレは2度目になる女神ヴァニティアヌスからの要請―――『要望』によってまた違う
今回の『要望』の内容は『帝国』とやらに刃向う抵抗組織を壊滅させよ―――だ、内容としては
しかし、そう―――今回オレをこの
「
「以前オレをこことは別の
「ふむ、どうやら単純ではないようです、しかし
「【怪復】…“怪”しい回復なんて不吉な
「面白い事を言います、ただ
顔色は青白く目は三白眼、おまけに目の下には
それはそうと今回関与する『帝国』に関してデルフィーネに調べて貰った処、目立った様な圧政や
「“表”立つものは良く視える―――が、“裏”立つものは良く視えはしない、
「つまりここの
「
「なるほどな…だったらその辺の調査を頼む。」
「それは構いませんが―――
……そうだ、そこは忘れてはいけない、例えオレ自身は不本意ではあろうとも女神ヴァニティアヌスが―――母さんがこの
―――それにしても母さんは何故こんな『要望』をオレに?―――
“迷い”が見て取れるようですが―――【
―――そして…ふ、ふ、ふ、この
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
オレには神々の事なんて判りはしない、確かにオレの
それはオレの“育ち”が関係しているのだろう、
しかし“それ”と“これ”とは別、今回のオレの『要望』の対象である帝国に
「そなたと刃を交り合すのは何度目か―――私とて少々飽いで来たと言うものだ。」
紅い鎧に
それにしても…女神
「『発展途上』―――とは、よくぞ言ったものだ…そなたのその構え〈無形の位〉なのだろうが、哀しいかな…そなたはまだ自我を抑えきれておらん様だな。」
「(…)知っていると言うのか―――この『構え』を…」
「武の
「それで両目を塞いだのか。」
「この眼帯の事か?いいやこれは違うよ、この眼帯は視え過ぎる私の為に使用しているだけの話し、とは言えまあ逆に視え過ぎて困っているのだがね。」
「何を難しい事を言っているのか判らんが―――」
「判らんか―――それはそなたがそこまでの
オレがまだ幼い頃、母であり師でもあったヴァニティアヌスから厳しく言われたものだった、
「その意気やよし、では私も全霊を
“雑”な念のない、
* * * * * * * * * *
「(う…)ここは―――そうか、オレは敗けたのか…」
「ええ、大変好い敗けっぷりだった、どこの誰がどう見ても決定的な敗北、
「あんたのその口ぶりからすると、あいつの事を知っていたと言うのか。」
「『知って』―――ええ、いますね、なにしろ
「では…あそこにいたと言うのは―――」
「さあ?
「(…)それよりオレの傷を手当てしたのはあんたの『怪復』か。」
「一応、必要な部位はくっつけておきました、ただ勘違いしない事、本来の『回復』と言うものは本人の『再生力』以上の事は出来ない、
「(うん?)どう言う…事だ。」
「普通に、傷を負っていないと言うのなら、その上から『回復』をかけてもそれ以上の作用は適応しません、ですが
オレが次に目覚めたのは帝国の城の
それにしても、女神ヴァニティアヌスからの―――母さんからの『要望』を達成出来なかった…それがオレの心残りでもあった、けれどそんなオレをデルフィーネは。
「何を、悔いているのかは判りませんが、今回
「母さんは―――もしかするとその事を知ってて…」
「さて、どうでしょう…
「『目的を知りません』って…あんたは先程ヴァニティアヌスがオレに『要望』を出したのは『失敗をする事が達成の条件』だと…それによってオレが挫折を知る事により更なる成長を見込めると―――」
「それは解釈の一部でしかありません、
またしても判った様な判らないような事を言われてしまった、けれどデルフィーネが言うように挫折と言うものを知らなかったオレが今回知ってしまった―――それに以前からオレを悩ませていたのは成長の『頭打ち』だ、ある一定の強さに達すると様々な能力値がこれ以上あがらない…そうした悩みを打ち明けたかのようにヴァニティアヌスはオレを別の
これがオレの推測だが、真相は―――ヴァニティアヌスの考えが合っているかまではオレには判らない。
* * * * * * * * * *
それはそれとして、オレは残念な報告を胸に元の
「ベレロフォン良く戻って来たな!」
「お帰りなさいませベレロフォン様。」
オレが戻って来るのを待ち
「そうか―――お前が…だが内心“ホッ”としている私がいる、私より腕が
「そうですよ、一度や二度の失敗なんて何も恥ずる事など有りません、現にフレニィカさんなぞは今回もまた―――…」
「カ、カラタチそれは言わない約束だったろう~!」
「あら、そうでしたか?ですが一言言わせてもらえればフレニィカさんはもっと[勇者]としての責を感ずるべきです。」
「な、なんだか次第に言っている事がヴァヌスじみてきているぞ…」
オレが戻ってくるまでの間、彼女達の間で何があったのかどうやら聞くまでもないようだ、オレが今回の目的の
それからオレは自宅へと戻り、もう一人オレの帰りを待ちわびている者の処へ行った。「ただいま―――」
「お帰り、ベレロフォン。 どうした冴えない顔をして。」
「―――母さんから言いつけられた事、達成できなかった…それがなんとも、悔しくてな。」
「そうか―――ようやくお前も挫折を味わったわけだ、だがいい、そのお蔭で男前が一段と上がったじゃないか。」
「なあ…ヴァヌス、オレは―――オレは……」
悔しさ、自分の未熟さ
オレは
それに……不思議な感覚だった、オレが抱き付いているのは間違いなく魔族の
けれど今はそんな事はどうでもいい、今はただ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「何か、御用か。」
「久方ぶり―――ですね。」
「以前にそなたに会った記憶などないが。」
「それはそうでしょう、以前の記憶を遺しておけば、ふとしたはずみで不都合が生じないとも限らない。」
「以前そなたの主の『要望』でこの
「
今回私が請け負ったのは『エスプーマ』なる神が
「フ、フ、フ―――それで
「私は過去を棄てた、ゆえにそなたの事も知り得ない…そして今度の
「歩めばよい、
私の生は一度
そうした私の不平や不満を“上”から
フフ―――思いを
それにしても良い
―――なあ?そう、思うだろう?【緋鮮】―――
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「どうやら―――本格的に動き始めたみたいね、『次元の魔女』が。」
「それにしてもさあ、なにも私の領域で事を起こさなくてもよくなくない?」
「今回はあなたの従属神の
「けどさあーあの子…なんて言っていいのか、私が言うのも何だけど
「あら、あなたにもそんな一面があっただなんて、お蔭で面白いものが見れたわね。」
「ちょっと
「でもエレシュキガル、あなたはいつも自分のしたいようにしかしてこなかったじゃないの、そんなあなたの
「そ―――それは~ごめんなさい…だけど、あなた達も愉しんでたじゃないのよ。」
「ええ、だから手を貸したまで―――私や彼女の興が乗らないままでは、いくら愉しめと言われた処で愉しめないと言った処…」
「(む~)それでえ?私はこれから何をすればいいのよ。」
【不和と争いの女神】エリス―――その
彼の
私達『混沌』の勢力は、『秩序』の勢力である『エホバ』の
ふ、ふ、ふ―――ふふふふ…どうやら退屈せずに済みそうだわ、それにお
―――ねえ?【緋鮮】―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回私は、私の息子―――ベレロフォンに『失敗を前提』とする『要望』を言い付けた、全く…ひどい親もいたものだ、失敗する事がその『要望』を達成させる前提条件なんてな、けれども思う処もあった、ベレロフォンは本当に優秀で私が少し
「―――どうしたんだ。」
「いや…その……ベ、ベレロフォンは大丈夫だろうか。」
「
「やれやれ、あの子は
「ヴァニティアヌス…なあ、今回の事は必要だったのか。」
「『必要』―――だったのさ、あの子は私が
「それで、結果はあなた様の思い通りになりましたか。」
「結論だけを言うと、『なった』―――だけど同時に思い知らされた…私はなんてひどい母親なんだろうとな。 もう少しやり方があったんじゃないか…と、今ではそう思う、もう40にもなろうかという大の男が声を上げて泣いたんだよ、それで
「その心情…判らないとまでは言わないが、バレてしまったんじゃないのか?」
「その時のベレロフォン様の心情などが判りませんから何とも言えないのですが…バレてしまったと思います。」
「う゛…うう~~~今ではちょっと後悔をしている―――少し軽率ではなかったかと、な。 しかし、いやあー変わってなかったなあー幾つになっても子供は子供―――とはよく言ったものだ、この私の胸に顔を
「ヴァニティアヌス、それは私達に対する宣戦布告のつもりか?」
「しかしとは言え油断ならぬのもまた道理、
「な、にィ?ちょっと待て―――それじゃナニかあ?将来的にベレロフォンとヴァニティアヌスが…」
「ええ、親子の
「ダぁメだダぁメだそんな事!
「やかましい!静かにしろ!あの子が目を醒ましたら
「(イタイ…)そうかと言って何も殴る事はないだろうが―――ああけどしかし、カラタチの余計なひと言がああ~~」
「
「(…)ヴァニティアヌスぅ?」
「さあーてどうすっかなあーカラタチ殿のお蔭でイイコト聞いちゃったしなあー。」
「(
「おめーからキモチワリー事を聞かされるのは大却下だからナシだ。」
またまたフレニィカさんの自爆行為ですか、もう少し考えて行動すれば良いものなのに―――それにやはり
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