第17話 三つ巴(ヴァニティアヌスxアルテミスxパールヴァティ)
私達の世界をお
しかし―――以前“
いや……本当に『
* * * * * * * * * *
そんな事よりも戦端は既に拓かれている、この世界の『
私も
最初に[魔王]ヘルマフロディトスと対峙した時、その正体がいつも[魔王]の情報を提供してくれていた『酒場ヘレネス』の
だが相手も
「[魔王]ヘルマフロディトスが―――ヘレネが押されている?それに……何なんだあの腕は!」
「まーーー言ってみればあれがあいつの闘い方だからな、聞いた事があるだろう~?[英雄]オライオンの得物―――そう『棍棒』だ、一部じゃ間違った
「た、確かに―――それにしてもなぜヘレネはオライオンと距離を保って…」
「さっきも言っただろう?ヤツが得意としているのは『体術』だよ、『体術』って言うのは広く捉えられる―――“殴る”“蹴る”“突く”そして…“組み合う”、ヤツは最至近距離で相手と“組み合う”事を最も得意としているのさ。」
「最至近距離…それでヘレネは近づかせまいと―――だがそれでは勝敗は決しないのでは。」
「そう言う事になるよな、だが―――ヤツと“組み合う”のは禁忌とされている…それも特に“女性”は、な。 何故かってえ?お前も見ただろう、ヤツのキモさ加減てやつを…それで
お、思わずも知ってしまった[英雄]オライオンの変態性…うーーーん私はなるべくお相手したくないなあ―――
なあーんてな事、思ったりするもんじゃありませんでした…
それというのもこちらは『
「やあーっぱお前達が現れたか…おいヘルマフロディトス、フレニィカと交代だ。」
「えっ?あの…ちょっとお待ちになって?わ、私がオライオンの相手!?」
「なんだ不満か?けれど仕方がないだろう、この
「そちらの
「へっ?このお二方…神様―――なの?」
「とは、ちょっと違うけれどな、かと言ってヒューマンでもない…まあ言ったらヒューマンよりは上位種―――と言った方が判り易いか。」
「しょげてる暇なんてないぞ、こいつらの本来の目的が何なのか忘れたのか。」
「“私”の
「だあーいぶ判る様になってきてるじゃないフレニィカちゃん、さあーてそれじゃこちらも気合い入れないとね。」
* * * * * * * * * *
「―――と、言う事だ…お前の相手は私がしてやるよ『カリストー』」
{私も随分と舐められたものだ、且つてはアルテミス様に一番近しかったこの私が…}
「その筋の話しは私も聞いてるし同情はしているよ、まあ
{お前如きに私の何が判る!私は騙されたのだ…相手があのお方と知っていれば―――私は、っっ!}
私が相手するのは『カリストー』、彼女の言うように且つては女神アルテミスの信任篤く従順な使徒として
「そして私の相手は……『シューリンクス』―――あんたみたいだね。」
{あなたもかつてはこの
「ざあーんねんだけど…その侵略で下手こいちゃってねえ、今じゃ従順な
{魔王が…卑屈になったものだな、それより気になっていた事があるのだが―――なぜあなたの主神は幼生化の呪いをかけられたのだ?折角主神であるエレシュキガルの領土である『冥界』を守り切ったと言うのに…全く不思議な事だよ。}
「一体その事をどこから嗅ぎ付けて来たんだか…言ってもまあ、神々の間では持ち切りなんだろうけれどね。」
私と対峙しているのは[英雄]オライオン―――だが、2人の会話は自然と耳に入って来た、それによるとどうやら神々の間には私達眷属などには到底思いもよらない事ばかりがあるのだと知った、まずはヴァニティアヌスが相手をしているカリストー、彼女は元々女神アルテミス様の信任篤く重く用いられていた事が判ったが、それが一度の不祥事で地位を失い悔しさを滲ませながら私達と対峙していると言うのがどことなく判って来た、それより気になったのがヘレナが相手しているシューリンクスなる者の
今のヴァニティアヌスの容姿については相手の目を晦ませるため…だと私はそう結論付けていたのだが、そうではない―――?それに今ひとつシューリンクスの
「おおんやあ~?ミーとのホットなファイトの最中に考え事とはいただけないわねえ~?」
おおっ―――と…今は余計な雑念は払わなくては。
「それより見せて頂戴な、ユーが持ってるんでしょおーう?」
「本当は、手の内を見せたくないのだがお前には一度不覚を取っている、そうも言っていられないと言ったところだな…ああ、見せてやるよ―――」
私の体内に保有する魔力を通す―――それにより物理的なモノではなく魔力で出来た鎧が顕現をする…しかも金属片や皮革を用いていないので重さと言うのは全く感じない、それが私が女神エレシュキガル様から与えられた≪魔鎧≫の全容である。
「なあーるほど…それがモノホンのブツってヤーツなぁーのねえー?以前によく見ておけばよかったわあ。」
「こうなったからには以前の様な不覚は取らない…オライオン覚悟!」
「どおーやら、舐めてたのはユーの方みたいね…フレニィカちゃん確保ぉぉーーー!」
「バカッ!なにやってるさっさと距離を取れ!」
舐めていたのは意外にも私だった―――?そんな事はない…私は以前オライオンからの不意打ちを食らい、無様にも
―――あれ?
それは……
「そんな薄汚い手でフレニィカちゃんを“にぎにぎ”しようとするんじゃありませんわあ?」
聖ヴァニティアヌス教会[司祭]殿?なぜ…またこの人物がこんな処に?いやっ―――その前に…私に襲い掛かって来たオライオンの巨体を指一本で制している?!
「今更何しに来たって言うんですか?もうあなた様のする事なんて残ってやしないですよ。」
「あらあら、ご挨拶ねヴァヌス―――いえここは敢えてヴァニティアヌスと言うべきでしょうか、そ・れ・に…クス、クス、クス―――状況は温まり過ぎる程に温められている、ええそれはもう鍛冶場の
私達とアルテミス様側が争い合っている時に突如介入してきたのが、この
{…っく!まさかこうなるのを待っていたとは!} {中々動かれなかったのでその機会に―――と思っていましたが…} 「う…ぬうう~~~!そんな事よりもジェェントルミェェンなミー達を『まるっとひと呑み』とは、シャウトが過ぎませんかなあ?女神パールヴァティ様…」
{お前共三者が同時に動くなぞ滅多とない話し…と言う事はあの
「ガーッデェェィエム!ジエェェントルミェエエンなミー達をここまで
私達一人一人では敵わないかも知れない彼の女神様の配下を、パールヴァティ様は
「いや、ここはあの方に任せよう。」
「ヴァニティアヌス?だが……」
「まあ…好い闘争を“観る”て事も大切な事だ、だからようく観ときな―――あの方の動きの逐一を…」
「とは言うけれど、目で追えるものならば―――だけどねえ~?」
「ヘレネ?それはまた、どう言う……」
「今は観えなくてもいい―――だけどその網膜に焼き付けとくだけでも違うものさね。」
最初、私はこの2人の言っている事の意味が全くと言っていいほど判らなかった…しかし、私には圧倒的に経験と言うものが足らない―――だからその
{実に、好い
そう、女神パールヴァティ様が仰ると、反射的にオライオンは防御態勢を取っていた…しかし次の瞬間、防御をしていたはずの
{〈首を狩る死神の鎌〉―――これでまずひとつ…}
{そ―――そんなっ、アルテミス様の眷属の中でも最強を誇るオライオン殿が…} {たったの、一撃?}
{おやおや、
{シューリンクス、ここは一度退いてアルテミス様と合流いたしましょう!} {それが賢明…しかし易々と抜けられるものなの?}
{
んっ?!何だか今聞き捨てにならない様な事が聞こえた気が?
「あーあ、本心駄々洩れちゃってんな。」
「まあそれだけフレニィカちゃんにちょっかいかけてるのが面白くなかったんだろうさ、とは言えご本人様のいる前で言うべき事じゃないんだけどねえ。」
女神アルテミス様の眷属の中では最強を誇る[英雄]オライオンを『たったの一撃』―――しかも彼の英雄を
* * * * * * * * * *
そしてしばらくして状況は
{お…のれええ~よくも私の可愛い眷属達を!}
{言いたい事はそれだけえ~?それにお前、ひとつ間違ってやしませんか、お前が可愛いとする眷属共を傷付けられて怒るのは判ります…で、あるならばヴァニティアヌスちゃんの可愛い眷属であるフレニィカちゃんを『奪って自分のものとする』と言うのはいいというの?それこそヴァニティアヌスちゃんが哀しむとは思わないのお?だあーかあーらあー
大切にしている眷属を傷付けられて大いに
「(あのーーーこれって私達、完全な『とばっちり』では?)」
「(そうとも言うな、けれどそう言う事は絶対に口に出しちゃダメだぞ、出したら…判ってんな。)」
「(う゛う゛…あまり想像は得意な方ではないんだが、そんな私でも想像出来てしまった。)」
「(まあこの先長生きしたければ~って事だよねえ。)」
なるほど…なぜこの2人が大人しいか、これで判った―――ならば私も(なるべく)大人しくしていよう。
それはそれで良いのだが、彼の
上空に一条の矢を放ち、その矢に付与していたご自分の<
一つの矢に“想い”を乗せ様々な効果を無効化させながら敵を粉砕させる〈アナイアレイト〉
“本来の矢”は囮に放った矢の“影”に隠れ、的を射貫く〈シャドウ・シューター〉
―――と、弓矢での射撃を得意とするアルテミス様に対し、パールヴァティ様は…
腕を回転しそこに気流を生じさせそのまま“突き”を放つ〈捩じ切る螺旋の
ご自分の<
“肘”“膝”“脚”“拳”を絶え間なく繰り出す事で相手の攻撃を封じながら、止めとして強力な一撃を見舞う〈
遠隔戦闘が得意なアルテミス様と近接戦闘が得意なパールヴァティ様、比較してみると対照的な
* * * * * * * * * *
それは―――それとして。
「へっへーんザマぁみさらせ!ですわあ。 それよりフレニィカちゃんは大丈夫ぅ~?…て、あれ―――なぜにどうしてわたくしの事を警戒を?」
「そりゃあーまあーーパールヴァティ様本心“ペロッ”と言っちゃったもんだから…」
「いくらフレニィカちゃんとしても警戒しないわけにはいかないよねえ?」
「(んっ?)わたくし…そんな事言っちゃってました?」
「ええーーーまあ割とはっきりと。」
「『この娘は
「の゛お゛お゛お゛お゛ーーーっ゛!ついあの
ハッキリ言って、目がコワイ…ある意味先程までのギラギラとした闘争の最中での女神様達とのそれとは違い…何だか、こうーーー何て言っていいんだろうか、私の貞操の危機?いやけど…パールヴァティ様は曲がりなりにも『女神様』なワケだしぃ……
「あ゛ーーーそう言えば大切な事を言い忘れていたわ、女神様の中にはな、『
な…何故に今になってそんな事を?「あ、あのっ……ヴァヌス?」
「まあ多くを言わないが、『そう言う事』だ、健闘を祈る―――あとそれとパールヴァティ様、今回の報酬はそう言う事でえ~ごゆっくりと堪能してくださいませぇ。」
う…売らりぇ―――た?ひ…
しかし―――まあ…大方の予測通り、私の怨み辛みなんぞは女神アルテミス様を撃退した女神様に届くわけでもなく…私はパールヴァティ様によっていい
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから数日の後―――使命を果たして来た私の想い人が戻って来た、いやはやさすが…と言うべきか、違う環境だとしてもそれをものともせず使命を果たして戻って来る―――私も彼の事を…ベレロフォンの事を見習わないとな。
「おお、ベレロフォン!ようやく戻って来たか。」
「出迎えご苦労さん―――とは言え何も出迎えてくれなくてもなあ。」
「何を言っている、お前がいない間こちらは大変だったのだぞ、それを[勇者]たる私が何も問題なく解決したのだ、もっと褒めてくれてもいいのだぞ。」
「何を
ううう~~~聞いたか?今の言葉!ベレロフォンがこの私の事をそこまで見込んでくれていたとは…んん~フレニィカ感激!
―――なんて、はしゃいでいた時期が、私にもありました(極僅かな短い期間ではありましたが)―――
そう…私は気付いてしまったのです、ベレロフォンがこの
この時私は紛れもなくこの
ああああ~~~ベレロフォンのいない間に活躍したと言うのにぃ~それでベレロフォンから褒められたというのにぃぃ~~ちっとも嬉しくない―――と言うより寧ろ『乙女な鬼ッ娘』に(寝)取られるのではないかと言う危機感増し増しなのだがあ?
「初めまして―――
完敗だ!認め…られないが完全敗北を認めざるを得ない!悔しいぃ~
いや―――だが、まだだ…まだだフレニィカ!お前はやればできる子なんだ!その事は今回で証明できたじゃないか、だから―――だからこの
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