第16話 [神主]―――その正体
オレの“一”か“
「信じ難い事だが―――満更創り話しもバカには出来ないものだな。」
「それほどシノギの武はヱミシ《私達》にとっては脅威だったのです、加えてヱミシ《こちら》は人員も足らない…邪神の野望を挫くためと称しながらも善後策に甘んじていた事も否めません、そこを―――」
「その一方我等も頭ごなしに命令して来る
まあよくある典型的な『暴君』てやつか…そいつは報われないな、だがカラタチはそんな
「それで―――いかがいたしましょう…」
「あんたはどうしたいと思っている。」
「今現在は邪神によって分かたれてはいますが、元はと言えば
「ならば、ひとつの“
「全く―――気の毒としか言いようがないな、武が
「カッカッカ!軍略も
本当に―――ベレロフォン様の
* * * * * * * * * *
ある日の未明、シノギによって
「『アマミ』に『イナリ』―――『アザミ』に『トラゲ』も!皆戻ってきてくれたのですね。」
カラタチやシノギを始めとした『
「そう言えば家老達の姿は見えんが…」
「重臣の方々もお前の“
「どうにか…出来ないものなんですか―――」
「―――出来ないだろうな。」
「ベレロフォン様…どうしてそのように思われますか。」
「これまでの流れと言うものを聞かせてもらって判った事なのだが、どうやら討つべきはただ一人―――領主である事を認識した、それに側近は分別のある者との判断にも至った、あんた達を脱出させたのも最小限の犠牲で済ませようと言う魂胆だろうな、
「
「言っていたじゃないか、『出来れば無用な争いは避けたい』と―――そしてオレは離反した者達からの意見よりこう推察した…腐っているのは領主のみ、重臣達側近まで討つ事こそ『無用』な事と判じたまで…」
―――この……方は―――
「どうやらオレがここで為すべき事が見えて来た、討つべきは領主ただ一人―――そしてその先には邪神がいる、そうと決まれば話は早いオレは
「良いのか、後を追って行かんで―――」
「行って―――どうしろと?今こうして
「まだるっこしい事を言うもんだねえ、どうして自分に素直になれないものか―――あたしだったらあんな好い男、ほっときゃしないのにさあ。」
「はっははーーー言ってやるなアマミ、この
「えっ―――そ、そん…な……そんな事、ありません…」
「おやおや、思いの外図星を衝かれて言葉尻が消えちまいそうになってるよ、それになんだい?そんなに顔を赤く染めちゃ否定してるのも疑わしくなってくるじゃないか。」
「行くがよい、決して止めはせぬ―――それにぬしは『誰がまとめなければ』と言ってはいたが、どうしてそれがぬしでなければいかんのだ。」
「(…)良い―――のでしょうか?追って、行っても…」
「
やっと、報われた―――報われた気がしました…暗愚の領主が邪神の言い成りになった時はどうしようかと気を揉むばかりでしたが、乾坤一擲として
その時、思ってしまったのです―――
今までにも
だからこそ、普段はしないような事をしました…己の肌を恥ずかしげもなく晒し、剰え
「どうして、着いてきた…」
「あなた様お一人に任せるのは
「(フゥ…)それは、オレは信用されていないのか―――領主やその先の邪神に敵わないものだと思われているのか…」
「決してそう言う訳ではありません、ただこれは―――」
「そう言う事にしておいてやるよ、但しここからは退く事の出来ない戦場だと知っておけ、その覚悟は出来ているな―――カラタチ…」
―――今…
「どうした、なにを呆けている、オレ一人に任せるのはあんた達の沽券にも係る事なのだろう?だから譲ってやる…領主の方をな。」
「…はい―――」
オレは、ヒドイ奴だと自分ながらにそう思う時がある、オレに寄せる気に気付かないはずがない…それは元の
ヴァニティアヌス―――母さん…オレは一つだけあんたに文句を付けたい事がある、オレは紛れもなくの[英雄]だ…[英雄]となったからにはある難事が付き纏ってくる、それが『女難』だ―――元いた
* * * * * * * * * *
初めて、名前で呼ばれてしまいました―――
「何故あんたがここにいる―――大将格は後方に収まっているものだろうが…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事態がこうなる僅か数分前―――
{(…)どうしたのです―――}
{
{どうやら―――そちらで事態に動きがあったみたいね。}
{ウ・フフフ―――ええ~そうよ、こちらで仕掛けておいた“
女神アルテミスと
それ以来アルテミスは
そして
そして今―――彼女が私の目の前に現れていると言う事は…
{ならばこの
* * * * * * * * * *
そして現在―――
{う―――ななな、お、おまっ…お前は?!}
「中々―――気の利いた事をしてくれた…と、敢えて言いましょう、けれどしかしこの私を満足させるには一ひねり足らなかった―――とだけは言っておきましょう。」
一見すると普通のヒューマン…
{なぜ……ここへの結界が?あの無能が―――あの方から授けられた能力がありながら足止めも儘ならんとは、いよいよ以ての役立たずめ!}
「『役立たず』―――『無能』…それはあなたの事じゃなくて、邪神…いえ、『アクタイオーン』。 あなたもあの
{我が
{ご名答よ、あの
{お―――お前、は…}
{
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
“彼”と“彼女”がこの場所に来たのは、問題なく領主を誅略し終えたからだろう―――そして“その先”にある邪神に会う為にと。
しかし既にそこには邪神の姿はなく、
「遅かったようですね、邪神ならば逃げ
「『逃げ
「私も、
紡げる言葉を聞き、
「その言葉、信用するには足らないな。」
「何故でございましょう?」
「先程あんたは…誰もいないこの場所にオレ達よりも
「あら、あなたの上に立つ私の
「それともう一つ―――あんたの事を信用していないのはここに誰もいないという理由だ…邪神が―――“
―――えっ―――
「ベレロフォン…様?」
「少し気になったものでな―――誰もいない…何もないこの空間だが、やけに“気”が充満している、闘“気”や殺“気”…それにもう一度言う―――オレは神の死んでいる処を…死体を見た事がない、それに何もない空間には有り得ない程の殺気が充満をしている…あんたが殺したんだな、邪神を。」
―――“
出来るはずがない―――そう思ったからこそ
「くっ―――ふふふ…あっはははーーー!」
「ク――――クシナダ様?!」
{好い勘をしているものね、なぜ“彼女”が―――この
奇異な笑いと共に
「なるほどな―――つまりこう言う事だ、今回の騒動はあんたにも関わりがあると。」
{それは違うわね。}
「なに―――?」
{
「ああ…やっぱり神は碌でもないってことがようく判ったよ、彼女が―――カラタチがどんな思いだったか、あんたには知るはずもないだろうな!」
{それは当たり前でしょう?何故に
「あんたなあ―――!」
{ひとつ、よい事を教えて差し上げましょう…それを
「何もかもを持っている
{あるわよ―――それが『
初めて、聞いた…神々の考えておられる事を―――では、今までの
「あの…
{ああ、あの子?あの子は古来から真面目よ、根が真面目だから苦労する事も多くてね、
「それを聞いて安心しました…あなた様の様な不謹慎ではないと―――」
{面白い事を言うのね。}
けれど結果から言わせてもらえば
{何のつもりかしら?[英雄]ベレロフォン…}
「まずは、柄にかかっているその手を
{この
「全く―――母さんの言ってた通りだよ…『真実の総てを知る必要はない』、どうやら出過ぎた真似だったようだ…あの領主を討った時点で引き返しておけばよかった、そうすればこう言った余計な不都合な真実を知る必要もなかったものなのになあ!」
{くふふふ…判っているようで判っていないのね、
今、判った―――判って、しまった…そう言う事だ、
「『押し売り』は基本断っているんだかなあ―――だが『神からの』とくれば断ったとしても断り切れなさそうだ…」
始まってしまった―――望まない状況が…自分の退屈しのぎの為にと敢えて[英雄]を挑発する神に、そんな神からの『押し売り』にも似た押し付けを、断りたくとも断り切れないヒューマンの[英雄]…
それに先程ベレロフォン様は『出過ぎた真似』と後悔の意思を表明した…
それになんて凄まじい…ベレロフォン様の事は
{この
この―――オレの本気を持ってしても敵わぬ者がいる…それを今痛感していた、
先程まではこれから一閃交えようとしているオレですらも
そう、オレは無様にも斬られていた―――斬られた事すら感覚のない状態で…だが今オレは「(活きている?何故ッ―――)」
{あまり動いちゃダメよ?もうしばらくはそうしてなさいな…}
「あ―――あのっ…
{
一応、『一命は取り留めた』と言っていいのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回オレの受けた依頼はこうして完遂することが出来た、内容としては、まあ…神々の退屈しのぎに付き合わされた結果となってしまったが、『この
「やはり……帰られてしまうと言うのですね。」
「まあな、ここはオレの故郷ではないしオレにはオレの帰るべき場所がある、それに過程がどうであれ結果があんた達が望んでいたようになったんだ、これから先は巧くやって行くんだぞ。」
やはりこうなってしまった……判っていたこととは言えベレロフォン様は困窮している
「[英雄]様―――帰られるんだってねえ…」
「そうですね―――」
「ついて、行かないのかい―――」
「何故ですか、
『
「おおこんな処にいたのか、探したぞ。」
「これはシノギ“様”―――
『
「
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