第15話 額冠を失っても
[英雄]グロムと[勇者]マクスウエルの撃退に成功をしてから日を置かずに訪れてきた[英雄]オライオン―――私達の様な“ぽっ”と出ではなく由緒正しい系譜…女神アルテミスからの寵愛を一身に受けているからこその優秀さもそこにはあるのだろう。 それに私は知っている―――とは言え彼の英雄の事は所詮は『英雄譚』等の書籍や伝承の中でしかないのだが…そうしたものの影響を受けた私の中での
「フフフフフン―――ユーの様なプリチーなガールがミーの相手なのかあ~い?」
「あの、ヴァヌス…私が相手をしなければならないのって―――」
「言いたい事は、凄くよく判る……けれど否定をしたくともあれが現実、あんなのが女神アルテミスの寵愛を一身に受けている
私に辛辣な事を言ってくるヴァヌスがなぜ[英雄]オライオンの事をそう評していたのか判った気がした、確かに外見上は伝承の通り―――と、まあ取り敢えずは言っておこう…が、中身が?『変態』とはよくも言い
「チッ、舐められてんなあ―――それに嘘なんかじゃないぞ、現にああ見えてもヤツは強い、ああしたふざけた
「あぁ~んらあ~ヴァヌスちゃんたらイケナイ子♡ これから一戦を―――って時にミーの情報をリークするだなぁんて…」
「てめーから『ちゃん』づけされるほど親しくしてねえつうの!てかいい加減そのキモ発言やめろや。」
私との一戦を交える前に場の
「をい、そこの半端者の小娘、今下らん事を考えただろう…『このまま戦闘に入ってもらっても』―――とかなあ。」
「あ、あの…ヴァヌス?ひょっとして私が思考している事とか―――例えば…先程の『嘘じゃない』と言うのも。」
「
な、るほどなああーーー筒抜けだった訳だ…それでは私に対して辛辣―――風当たりが強いのも納得が行くなあ…
だが、こんな莫迦なやり取りはしていても状況は全く変わっていない、[英雄]オライオンは私が所持している『
それに先程からヴァヌスは警戒を解いていない、私とオライオンとヴァヌスとの
―――眼が、笑っていない?―――
「何をやっているバカ!さっさと気を通――――」
私が“
「イっケないなあ~?ヴァヌスちゃあ~ん?このミーを前に
[英雄]オライオンは、女神アルテミスの寵愛を受ける以前は優れた猟師・狩人でもあったと言われている、では彼は何によって獣を―――獲物を狩っていたのか、やはり寵愛を受けている【銀嶺の神弓を
そんな
「ほうら言わんこっちゃない、ユーも[勇者]だったら判るだろう?一瞬の気の迷いが生死を分かつ―――って…」
[
しかし―――そんな相手に敵は容赦はしない…する道理もない、それに目の前の事に気を捉われ過ぎて我が身の事も儘ならなかった、まだ『
そんな状態で―――≪
* * * * * * * * * *
次に私が目を醒ましたのは『酒場ヘレネス』のヘレネの部屋だった、隣りを見るとヴァヌスもいた、それに額に手を当てるとあるべきはずの物が無くなっていた…そう、この時に彼の
悔しい―――情けない……あれ程事前に言われていたにも拘らず私はむざむざと女神様から頂いた物を奪われてしまった、しかも相手とする人物の奇を
「おや、無事なようだね。 悔しさ余って涙を流せるくらいには…ね。」
「ヘレネ―――私は…私……はっ!至らない[勇者]で申し訳ない…もう二度と敗北をしないと誓ったのに…それにヴァヌスに対してもっっ―――!」
「何を感傷的になってんだバぁ~カ。」
「(
「ったくあのバカ―――手加減しねえな。 まあ、状況がこうなるように仕向けてたのは否めないにしても、だ…ただこの“借り”はすぐにでも返してやる。」
「(へっ?)あ、あのお~ヴァヌスさん?今あなた…『状況がこうなるように仕向けてた』って仰いませんでした?」
「あ?ああ言ったけど―――何だお前、気持ちの悪い喋り方をするんだな。 少々“こんらん”してるにしても何なんだその『お嬢』言葉は、
「へ―――ヘレ…ネ?」
「ま、言っちゃうとさ、ここまでは
「ナニ?その…『ここまでは』って、もしかして
「ほおおそこまで判ったのなら話しは早い、私もあのバカに殴られるのに色々加減をしなきゃならなかったからな。」
悔しい―――情けない!(※先程とはまた違った
「(…)ふううう~ん―――なあんだか可愛い事を言っておくれのようだねえ~?」
「なんだ“ハガル”その眼は―――曰くありげな視線を私に向けるんじゃない!それより“状態”はどうなっているんだ、重要なのは寧ろそこでしょうが、その為に私はあの
本来なら、[勇者]である私の為に色々な
「『ありがた迷惑』なんて思った時点でブッとばしてやるぞぅ…」
そう言えば―――私(達)の思考を読めるんでした…
「あ~…それより先程の台詞なんだが、私に与えられた『
「いい加減に(私達に)気を使っているような発言は止めろ、気持ち悪くて敵わない…まあそれについては―――“ハガル”。」
「まあ―――『計画』って言うよりは、寧ろ『予定調和』と言った方が良いかねえ?」
「(な!?)私の身の回りで起こっている
「(…)それは―――違うよ。」
「(え?)だが…この世界を創世し私達をお
そこで私は至ることが出来た―――至って、しまった…そうだ今回の一連の
「まあそう言う事だ、我等が主神ヴァニティアヌスも言ってみればエレシュキガル様の従属神の
「そんなお方の目に留まって―――
「一つ―――勘違いをしている様だから今の内に払拭させてもらうぞ…フレニィカまさかお前は折角エレシュキガル様から頂いた
「そ…それは当然だろう、あんなにも美しく装飾された―――」
「ほぉーらやっぱりだ、勘違いしてやがったみたいだ。」
「(へ?へ??)あの…それはどう言う?」
「『
なんとも不思議な事を言うものだ―――と、その時は思っていた、現にエレシュキガル様から頂いた
「はあ~どうやら“間一髪”―――て処のようだねえ~?」
「そう言う事だ、フレニィカ… そいつこそがエレシュキガル様から賜った“褒美”の全容 ―――『
「これが本当のエレシュキガル様からの“ご褒美”だったと?だったらあの
「まあ、“
「あ…あの~お?二・三質問……よろしいでしょうか。」
「だからヤメロやそのキモ発言―――で、一体何が聞きたいんだ。」
「ひょっとして~アルテミス様とエレシュキガル様って―――仲が悪い?とか…」
「あーーーそう言うのはだねえ…どちらかと言うと無関係?」
「て、言うよりだな、アルテミスと仲悪いのはどっちかと言えば―――」
そこで、私は今回の事の真相に
「『とばっちり』―――とまあ悪く言えばそうなんだけれどな、とは言えエレシュキガル様もあの方々とは協力関係結んでいるから断り切れなかった―――」
「おんやあ~?私から見たら
「その辺を私に聞かれてもなあ…まああの方々との関係は
そう、女神アルテミス様と絶望的に仲が悪いのは、女神伊弉冉様と女神パールヴァティ様…このお
しかし―――何と言っていいのだろうか…ヴァニティアヌスの使徒である“
「それより―――
「はあ~案外あんたも底意地の悪い所があるよねえ?」
私がそうした疑問に駆られていた時、またヴァヌスが妙な言い方をしたのだ―――そう『あいつ』と…それをなぜ私が妙に感じたのかと言うと、これまでの話しの流れで女神アルテミス様、女神エレシュキガル様、女神ヴァニティアヌス、女神伊弉冉様、女神パールヴァティ様
「それより、これからは一層気を引き締めてかかれよ…今回掴まされたのが“
「(な!)なぜそうなる!私は
「そうさ―――『
「そ―――ん、な……」
「それに、ここは、さ―――主神エレシュキガル様の治める『冥界』の、それも割と
「言ったらここは『一丁目の一番地』て処だな、つまり『冥界』への出入り口に相当する…て事は、だ。」
「『入る』にしても『出る』にしても厳しく目を光らせないといけない…まあ“シギル”は『
「まあ運良く私を抜けたとしても『[魔王]ヘルマフロディトス』が背後に控えているからな、言ったら『お気の毒様』ってヤツだ。」
「本来ならベレさんもいてくれりゃあ楽できるってもんだけどねえ。」
「今いないヤツの事を嘆いても始まらんだろ、それにあいつは―――」
その時―――私は見逃さなかった…ヴァヌスの瞳に映った寂しさと言うものを、それはどこか今まで手塩にかけた子供が独り立ちをする為に親に背を向けて巣立っていくその
な ぜ ……
私はそこでその様に感じたのだろう、ヴァヌスはその身の
いや、待て?なぜ私はそう思っていたのだ?『周りの皆がそう思っていた』から?『ベレロフォンがそう言っていた』から?『ヴァヌスが魔族の
浮び上れば浮び上るほど様々な疑問が湧き立って来る、そもそもヴァヌスは『魔族の
するとこの私が何を考えているかまるて判ったかの如くに、ちいさな
「なにを下らない事を妄想してるんだか…今はそんなことに気を回すよりもこれから来るって言う
少し『ムッ』としたような感情が見て取れるような表情―――の割りにはそんなには怒っていなかった…それよりも私の思っていた事を『下らない事』と切り捨てた―――
まさか――― ま さ か ……
「なあにを呆気ているんだよ、“シギル”はあんたに―――これからあんたの前に現れてくる連中は一筋縄では行かない―――と、こう
「なあ…ヘレネ―――ひとつ、聞いていいか。」
「答えられる事なら、ね。」
「私達の創世神ヴァニティアヌスは―――」
「そいつは、今ここで語っていい事じゃない…何より、今はそう言う時機じゃない。」
「『そう言う時機じゃない』?それじゃ
「『今は』さ、フレニィカちゃんを狙って
―――あの方ご自身から話しがある…かもしれないだろうさ―――
結論だけを言うと『答えられない事』―――だからヘレネは言葉を濁した、『時機じゃない』からと、『
だからそこで私はヘレネに問い
* * * * * * * * * *
私達が知っている女神ヴァニティアヌスの姿とは、美麗にして
これでは何の確約も取れていない、ヴァニティアヌス本人が(私に対して)
は、は―――いつの話しになるのやら…まあここ近日中でないことは確かだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そう、思っていたのだが―――以外にも事の真相は早くも知れてしまうのだ、それもヴァニティアヌス本人ではなく……
「ず~いぶんとやってくれちゃったわねえ~~~ヴァヌスちゃあ~ん…いや―――女神ヴァニティアヌス、このミーに“
お前が言うのか!
「このヤロウ…あっさり私の
こっちはこっちで『イキナリ“身バレ”』された事でオカンムリ…しかしーーー
「フフン…けえ~ど、ベレさんいなくて実は『ホッ』としてるんじゃなあ~い?」
「戯れ言はそれまでにしとけよ…ヘルマフロディトス、
「随分とまた、舐められたもんだねえ…ねえ?解放しちゃっていいかい、我等が
「ああ―――とことん暴れな、その承認をこの私がしてやる!〖眼前の敵を駆逐せよ、我が使徒“ハガル”〗―――」
今回また敵として現れた[英雄]オライオンによってその正体を
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