第14話 逆しまの転機
「この度は我等が
一見すると“
―――それはそれとして―――
「オレがこの世界に呼ばれた事情、話して貰わなくても判っている、丁度そう言った場面に出くわしてしまったからな。」
「その通りにございますクシナダ様、
「それは本当に―――どうお礼を申し述べてよろしいやら…本来であれば私共の願いを聞き届けて下されただけでも
「それがオレのやるべき事だからな、お礼を言われるまででもないさ。 それよりこれからここにご厄介にならさせて頂く、よろしくお願いする。」
「(……)私も、よろしくお願いするわね。」
決して―――
この国、
―――それに…この方ならば―――
* * * * * * * * * *
一方その頃のオレ達はこの世界で寝泊まりする場所に案内をされていた、その場所とはこの『五稜』と呼ばれる『汎人類同盟ヱミシ』の本拠の中にある『
とまあ前置きはこれまでにしておこう、それというのも『次元の魔女』ベアトリクスの機嫌がすこぶる悪い、それもあの『クシナダ』と名乗った[神主]と出会った辺りで…それにオレもあの[神主]にはどうにも既視感が否めない、初対面・初見であるはずなのにどうしてもそう思えない―――それは恐らくこの魔女もそう感じているから……「少しいいか、『次元の魔女』。」
「なあに、ちょっと今頭の整理してた処だったんだけど。」
「なあお前、まさかとは思うが―――あの[神主]の事を知っているんじゃないのか。」
「ああ…まあ……けれど、とは言ってもその事を口には出し
「そうか―――じゃオレと同じだな…」
「あんたも?」
「ああ、オレの場合はお前と会う以前―――オレの
「なるほどね、私の場合は―――そうね、私と運命の出会いを果たした友人の世界で、その世界も別の世界の“神”とやらから狙われててね…その世界を護る為にと協力を迫って来たヤツ等の中に似た者が…ね。」
「その言い様穏やかじゃないな、ひょっとすると脅されたのか。」
「『脅し』―――ねえ…何だかその言い方でも生温い気がするわ。」
そう、私はそれでもやらざるを得なかった…そのヤツ等は私を捕まえようと躍起になってる連中からの依頼によって私を捕まえに来たヤツ等でもあった、けれどヤツ等自身の調査によりその世界が置かれている立場を知り、ヤツ等の請け負った依頼を
それに私も追われる立場に疲れていた事もあり、また友人の世界の心温まる心地の良さもあり―――私の“以前”を
そんなヤツ等の中にいた“一人”―――これは後から知った事なのだが、どうやら例の話しを捻り出したのが……「ねえ『静御前』、少しお話しをいいかしら。」
「(……)ああ、私の事ですか。 ですが私は『クシナダ』と申し上げます、決して『静御前』なる方などでは…」
「ええ、そうね―――間違えてしまったわごめんなさい。」
フフ…フフフフ――――この私に鎌をかけるとは…さすがは魔女と言った処のようね、『virtor』。 だけど私の方から『はい、そうです。』と言わない限りはあなたのそれは所詮
* * * * * * * * * *
そんな日の夜、動きがあった。 しかしその動きは“敵”側ではなく“こちら”……
「あの、
肌の透けて見える様な
「あ、あの―――この国の古きからの習わしで、[
まあ、そんな処だろう―――よくありがちではあると思うが、残念ながらオレにはそんな気はさらさらない。 彼女が貞操を選ぶ自由は理解し納得もしよう、例えそれがあの[神主]に
だが、オレには彼女の貞操を散らす気などは毛頭も持たない、その理由とは我が育ての母にして人生の師でもある女神ヴァニティアヌスから
「あの…
「申し訳ないがオレにはその気はない―――『据え膳食わぬは男の恥』とは言われるだろうが、オレには既に心に決めている“
―――この方は…―――
「それにオレは、オレの
「『
「それでオレの部屋を訪問したと、確かにあんたの決意のほどは受け止めさせてもらったが、それでも―――」と、飽くまでオレは突っ張ねるつもりでいたが、彼女の方も必死だったのだろう、やおら羽織っていた
「観て―――下さい…これまで誰にも触れられた事のない、また視せた事などない清らかな“
普通なら、恥ずかしい部分は手で覆い隠したりするものだ、だがこの[
それに普通ならばここまでされて放っておくのはない―――それこそ『据え膳~』でもあるからだ、ただそれでも彼女を抱く事はなかった…なぜなら―――
「敵襲よ!ベレロフォ……あんた達何をしてんの。」
「こんな状況でなんだが弁解する機会をくれ、決して
「ま、言いたい事は色々とあるけれどさ…それよりも、そうなのよ―――この市街近郊に未明の集団が近付いててね。」
「判りました、ならば早急に対応策を練りましょう。」
腰を据えているオレの前に、
だが風雲急を告ぐ―――なんとこの五稜の近郊に
だが[
この五稜は星形の形状を為しており、一つの
「一の
「なあ、ひとつ聞いていいか。」
「―――なんでしょう。」
「あまり思いたくはないんだが、こちらに内通者がいたって事はないんだよな?」
そのベレロフォンからの意見を聞いた時、
「すまなかった―――今のは忘れてくれ、そう言えば
「いえ、ここは正直に申すべきでしょう、その通―――」
「だから『すまなかった』と謝っている、少しばかりオレの方も先走りし過ぎた。 それにオレ達はここの
「いえ―――ですから…!」
「あんたも自分の立場を
「そうね、そこを考えるとあんたの意見て酷いと言ったものじゃないわ。」
「だから謝っているだろう―――今回の事は不要な事を言ってしまった。 ついては、ここはオレに任させてもらおう。」
この方は、そうする為に敢えての失言を?その意図も見抜けず
確かに
* * * * * * * * * *
その一方オレは五稜の
これは至って“
ただ―――そう…ただオレが知っている
「フン、安い挑発だな。 こんな一本道で我等を迎え撃とうなどと…その心意気は買ってやろう。」
「フッ、お心遣い感謝する―――てな事を言うオレは頭がおかしいか?」
「いいや?
「なあ、少し雑談をいいか…何故あんたの様な
「判るまいよ…異世界からのお客人よ、この
「お互い辛いもんだな、オレ達は自由に選べているようでそうではない…オレも上の者からの命令によって動いているに過ぎない。」
「だが、感謝をしよう―――我が前にこれ程の強敵を用意してくれた事を…」
オレの目の前に現れた黒き
それに先程も言ったようにこれは“賭け”だ、敵が余程賢くない限りはこの手の挑発に易々と乗ってくれた事だろう、だが哀しいかな―――乗ってくれたのは賢い奴だったのだ。
そう、こいつならわざわざオレの挑発などに乗らずにさっさと
「ヌハハハハ!あの
「あんたには、それに足らないと?」
「ん?フフン…我も持っておるぞ?≪
「そうか、ならばこうしよう。 オレと『決闘』をしないか、あんたが勝てばオレはこの戦から手を引こう―――だが…」
「我が敗けたらそちらへ着けか…構わんぞ?あたら勝ちの見え
「言っておくが、オレは何もあんたの
「判っておるわ、そんな事…それより四の五の言わずさっさと始めるとしようぜ。」
オレからの『決闘』を受けただけあって、そいつ―――『シノギ』は強かった、このオレもオレの
オレの
だとてオレも『決闘』を言い出してしまった
* * * * * * * * * *
―――その私がもう一つの可能性としていた事、それは…―――
「あら偶然ね、【崩壊】…」
「やはり…あなただったのね―――【干渉】。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
{
{いいのよ、
{それにしても迂闊でした、よもやあのような邪神が我が領域を侵そう等とは…}
{それは違うわよ?
{
随分と、気の
けれど―――
何故そのような情報を知っているのか、それは
[英雄]オライオン―――女神アルテミスを語る上でなくてはならない
だとて―――それは彼女も同じ事…女神ヴァニティアヌスの主神格である女神エレシュキガル、彼女の統治する『冥界』と私の支配する『
フフフフ―――いいでしょう、その貴女の
その為の―――くふふふふ…あの
{
{万が一の時は
* * * * * * * * * *
戦局は―――変わる…たった一人の武勇が、劣勢を覆せるなんてお伽話そのものだ。 オレも永らくの間[英雄]をやり続けてきたものだがそうした場面には出くわした事はない、それは当然だ―――たった一人の武勇が劣勢を覆せるなど
だがそれは起こった―――オレにしてみれば1年でも、1
オレも自分の
前置きが長くなってしまったが結論を述べるとしよう―――勝ったのだ、オレが…この
「フフフ…敗けちまったわ、強いのうぬしは。」
「あんた、途中から手心を加えたんじゃ―――」
「そう思いたいならそう思っていろ、だが我は真剣に事に臨んだ。 その結果だ―――敗けはしても、まあ満足はしている…それに、なあ……この
「邪神か…一体どう言った神なんだ。」
「我等の領主は好い様にしか言わなかったが…我からしたら
たった“一人”―――たった一人と言えどこの作用は大きい。 たった一人で
「シノギ―――!敵方の総大将であるあなたが何故こんな処に…まさか
「それはちと解釈は違うのう
いくら感謝を尽くせばよいのでしょう…それほどまでにシノギがこちら側に来た事の意味は大きい―――それに、この転機により勝ちの目が見えて参りました。
あとは…あとはそう―――この好機を活かすだけ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます