第13話 “自”らを“信”じると言う事
[英雄]ベレロフォンが『次元の魔女』と言う者の手によって別の
『魔王ヘルマフロディトス』…その正体は私だけが知っている、不甲斐ない[
そして魔王ヘルマフロディトスとは事実上の3戦目、初戦は[
これまでの戦績は“内容”はともかくとして1勝1敗、まあこれも[
「魔王ヘルマフロディトス、今度こそ私自身の実力で勝たせてもらう。」
{ほおう―――吼えるものだねえ…最初に
「ああ―――だがそれは私自身の
おやおや―――いっぱしの口を利くようになっちゃって、まあ……
それに、この子はまだ気付いちゃいないようだね、エレシュキガル様がその
今度こそ、何の邪魔立ても入らない[魔王]ヘルマフロディトスとの―――ヘレネとの1対1の対決、それに勝敗も1勝1敗の5分、だからこそ
* * * * * * * * * *
「―――で…結果は“辛勝”と、恰好を付けた割にはギリギリだったみたいだな。」
「けど、私も今回は手加減ナシだったからねえ~まあ結果は勝ったんだから良しとしようじゃないか。」
最初に、言っておこう―――結果的には『勝つ』には勝ちました…が、全身ボロボロ…『打ち身』『擦り傷』『骨折』に『捻挫』…とまあ『複雑骨折』していないだけ
それに―――ヴァヌスからの最初の一言目にも現れていたように『恰好をつける』んじゃありませんでした…今現在は『打ち身』や『骨折』の影響もあり自宅にて静養中……そんな処へヴァヌスが押しかけて来て辛辣な嫌味を申し付けられているのです。(あとヘレネは私の看護の為に来てもらっている、それより私の身体が動かせないでいる事をいい事に“ツンツン”突かないでくれるかなあ!?ヴァヌス…)
「それより“シギル”―――あんたここに来てなにもフレニィカちゃんに嫌味を言いに来ただけじゃないんだろ。」
「当然でしょう、早い所そんな
「『
「なあにを勘違いしてくれてるのか判らないけど、この娘には実績が必要なのよ…それも『自分の
相変わらず、この魔族の
しかし、私はよく判っていなかった。 それに『骨折』なんて1日やそこらで完治しないものだと知っていたんですがーーー何故か1日寝ただけですっかり
上腕の、割と太い骨だったんだけど―――1日寝ただけでくっついていました、しかも痛みもすっかりと取れてて…けれど、え?以前は細い骨でもくっつくのに1ヶ月は要したはずだったんですけど?
「おはよう―――おや、もう今日は大丈夫そうだね。」
「な…なあヘレネ、何故私の骨はたった1日でくっついたんだ?それに痛みの方も退いているし…」
「そりゃ、あんた―――その
「(え?)でも―――この
「でもさ、あんたエレシュキガル様から頂いた≪通力≫持ってるだろ?アレのお蔭であんたが保有している魔力の
そう言う事だったのかあーーーいやあ安心した、私も急にこんな事になってるって事で―――あれ?何か重要な事を忘れている様な……
「どうやら完治したようね、これから連れて行くけど異議はない?」
「ないよお~しっかりと使わせて来る事だね。」
まるで、『鬼の教官殿』みたいな魔族の
「相手は神々なのだろう?そんな…神を相手に[
「うるさい、黙れ。 それに私も、なにもお前が『勝てない』と思って連れてきているわけではない、まあ…確かに今回の対処の中に神はいるけどそれも所詮は『低級神』―――眷属達を使役・指揮する立場でしかないんだ。 それにそう言った存在はこの私が相手をする―――だからお前は
「
「ほおう―――あんたがこの
丁度私の目の前には[勇者]か[英雄]だと判る者達が数人いた、その内の1人が私に向かって言っていた事―――『あんた自身がそれを判ってるんじゃないのか』…見透かされてしまったか、私に『自信』がない事を。 だけどそんな事は当に知っている、今更その事を言われたとしてどうだと言うのだ、だからこそ―――だからこそ…ヴァヌスは私に自信を付けさせるために彼女のしている事を手伝わせようとした、身に余る光栄と言った方が良いか…
それに相手は私が今まで相手をしてきた『
「(こいつ…)ちと厄介だな、どうやら≪通力≫が使えるらしい。 だが、その事を知ってさえいれば対抗できる手なんていくらでもある、出番だぜ―――[勇者]マクスウエル。」
「判っている―――すまないな[勇者]フレニィカ殿、私も同じくの[勇者]だが主命には逆らえないのでな。」
「別に、気になどはしていない。 逆に感謝しているくらいだ、こんな
「どうやら勘違いされているみたいだが…私達の
「なるほどな―――そう言う事か…ならば益々手渡す訳にはいかんな。」
私の魔“力”を“通”じさせた事によって顕れた鎧一式、どうやらこの者達の目的は私などではなくこの
そこで戦端は拓かれる―――しかも相手は盗賊共や魔獣などの雑魚ではない、この私よりも歴戦を積み上げてきた
「おいおいどうなってんだ[勇者]マクスウエルさんよ、さっさとあのエルフ娘の≪通力≫を解除しろよ。」
「おかしい…先程から〈
私が
はは…は―――そうか…これが『自信』というものか、長らく私は
「まずいぞ―――やはり彼女の持っているのは通常の≪通力≫ではない、≪“神”通力≫だ!」
「なにい?聞いていた話しと違うじゃないか。」
「『聞いていた話しと違う』と言うのは聞き捨てにならないが、そちらから来ないのならばこちらから行かせてもらうぞ!」
「油断をせずに防御を一点に集中させるんだ―――[英雄]グロム!」
「なっ…こいつ―――
私は…女神エレシュキガル様から授かった≪通力≫を使う事でまず手始めに[英雄]グロムなる者を駆逐した、何故彼の者からかと言うとこの集団の中でも指揮を
―――その戦闘で優位に立つにはまず“頭”を…指揮する者を叩け―――そうすればその集団の統率は崩れ、後はこちらの為すがままに出来るだろう。 許す事も…そしてまた捕縛する事も、滅する事も。―――
この事はベレロフォンから教わった、そして今教えの通りに実行したらその通りになってしまった、こんな私でも…『
「どうやら、こちらが低く見積もっていたようですね、あなたの実力と言うものを。 仕方がありませんここは退かせて頂きましょう。」
「それでいいのか[勇者]マクスウエル。 私は一向に構わない、お前が退くと言うなら私はそれを追撃したりはしない…だが今回は
「随分な『自信』を持たせてしまったみたいですね、ええ悔しいですがあなたの言うとおりでしょう。 確かに次も同じ様な編成ならばまたあなたに撃退をされる…ですがこれが私達の全戦力とは思わない事だ、この私ですら『先鋒』に過ぎない…次こそは―――」
「ようやく―――ですか…[英雄]オライオンが
いつの間にか―――この戦場には聖ヴァニティアヌス教会の[司祭]殿が到来していた…それにしてもいつ?私も彼らの迎撃にと、そこばかり気に取られていたからかもだが次の[勇者]マクスウエルの言葉に…
「ま、まさか―――あなた様は?!」
「“あの女”にもようく申し付けておきなさい、今度この子にオライオンを当てると言うのならば『全霊を尽くせよ』と…」
お互いが、よく知っているかのようなやり取りだった。 いや、というより知っていなければ出来ない様な…そんなやり取り。
それに私は未だ以て彼らの事をよく判っていなかった、判っているとすれば現在私が所持している『
そして―――
「あの……先程の者とお知り合いなのですか?」
「どうして、そう―――思うのです。」
「私には、彼らの事など何ひとつ知らない…現に先程の[勇者]マクスウエルは『自分達には隠している切り札がある』かのような口調をしていた、そこへあなたが―――」
「『[英雄]オライオン』…“あの女”の、あの女神の最高の切り札―――ええそうですとも、フレニィカ…あなたが思っている通りわたくしは知っている―――し、それは当然あの
なるほど―――よく、判った。 あまり仲が好ろしくないご関係みたいだな、なのでこの話題は振らない方が―――
「ああ
「そおおおの名前を出すなああ!耳にしただけでも
「と、言う事で判った?今回来訪したのはそう言う事よ。」
うん、なるほど、解説付きでよく判りました、絶望的に関係が好ろしくない―――と言う事がな。
「それより[英雄]オライオンの相手は誰がする事に?私は以前彼と
「は゛あ゛ん゛?そんなの
「(…)まああそれはステキなご提案!さすが『パール…』いえ[司祭]殿、そのご慧眼にこの“シギル”も感服
ええっと…あの、ちょっと待って?「な、なあ…ヴァヌス?何故か私がオライオンなる[
「『流れ』じゃなくてお前が
正直、私は逃げ出したかったが、“鬼”の様な教官殿に回り込まれてしまった…それに―――私も知らない訳ではない、女神アルテミスと英雄オライオンとの話し、ヒューマンでありながらも優れた容姿に優れた手腕の狩人は洩れなくして狩猟の女神の目に留まり一躍の寵愛を受けたのだとか、しかし英雄は女神からの寵愛を受けた事で増長し、ある女神の不興を買って策略の下に殺されてしまった…その時に使用されたのが蠍の毒であったのだとか、しかし非業の死を遂げた英雄の死を哀しんだ女神の嘆願により―――その英雄は死した後に女神に仕える事を許され、神に近しい序列を与えられた…そんな、私でも知っている様な
それにこのままではどうにもならなさそうだったので私の
「えーーー大丈夫なんじゃなあーい。」
機嫌が、悪い…まあ私の本来の
「いや、しかし―――だなあ、その…
「仕方がないねえーーーもぉ!だったら教えちゃおっかな、おねいさんが。」
「なあーにーをーしーてーるーのーかーなあ~?」
「全く、心配していれば案の定だったわ、あのねえ“ハガル”…あんたにはいつか言おうと思ってた事なんだけど、それ今言っていい?」
「いへ―――いくないです…」
「あ、そう。 でも言わせてもらうわ!あんたってフレニィカに対して
「う、う~~~だあってえ、折角フレニィカちゃんが私を頼って来たって言うんだよ?そりゃあ色々教えたくなるだろうさあ。」
「そ・れ・が
『魔王ヘルマフロディトス』であるヘレネが―――叱られている、なんとも
恐らくヴァヌスは、私が自分から調べもせず直接ヘレネに聞きに来たのが気に食わなかったのだろう。 だが、しかし…だ、それのどこが悪いのだろう―――と、その不満の感情が
「なんだ、その顔は―――まだ半人前のクセに私を睨むだなんて、生意気にも程があるじゃないか。」
「だっ!だってなあ…その、[英雄]オライオンの事は伝承でしか聞いた事がないし、ならば相手の事を知るには彼の事をよく知っている者の方が良いと思って……」
「(……)これを読んでおきなさい。」
「あの―――これは?」
「『伝承』じゃない部分の
私が不満を漏らすと『待ってました』とばかりに目の前に積み上げられた分厚い書籍…それは表沙汰にはしてはならない様な醜聞が綴られたものであろうことは説明がなくても理解ができた。(だって…なあ、なんだか得体の知れない―――“怨念”と言っていいのだろうか?そんな雰囲気を醸し出す作品てこれまでお目にかかった事などない、と言うか…)
まあともあれ“準備”だけはしておくべきか。
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