第11話 【次元の魔女】
現在“私達”は、ありとあらゆる
そして“私達”―――この私と同じ様な存在があと2人もいただなんて…「『初めまして』―――でいいのかしら…?私の名は『ベアトリクス』よ、あなた達は?」
「(…)しばらく会わない内に随分と人間社会に馴染んだものね、その証拠があなたの固有名―――このわたし達にそんなものは必要ないわ、けれど互いを認識し合うのにこう呼んでいたじゃない【崩壊】―――そう言った意味ではわたしは【干渉】と呼ばれていたわ。」
「
誰も知らない―――世界中の混在・混濁したものが織り交ざるそんな場所で、この
それにしても『次元の魔女』―――以前私のいた世界では私を揶揄する言葉でしかなかったけれど、まさか私以外にもいたなんてねえーーー意外だったわ。
私が『
「なるほど、概ねの事は判ったわ。 ではこれからお互いに持てる力を発揮していきましょう。」
「あの……その前に2人に聞いてもいいかな。」
「構いませんが―――どうかしましたか
「そこはわたしも気にはなっていた部分ね、またこうして久方ぶりに会うまでは―――あなたはわたし達の誰よりも『魔女』だと言うのに…」
えええええ……ひょっとしてだけど私って余計な事をしちゃった?と言うかその辺の記憶とか曖昧なのよねえ……それに私の
「―――何を聞いてくるものかと思えば、そんなの“ある”に決まっているでしょう、わたしのなんて常にそれよ、結果の“
「逆に
あーーー……皆さんも色々やっちゃってるんだなあ~だったら私の事なんてこれ以上でもないし以下でもないし、いいか―――くらいの事で私の事を話してしまいました…するとこれが大変な事に―――「私もーーー実はーーー本来いた世界を破壊し過ぎちゃっててね…それでその
「へえーーー中々やるじゃない【崩壊】。」
「そうね、まさに【崩壊】に恥じない活躍ぶりだわ。」
「いやあーーーまあーーーそこまで褒められる事じゃないんだけどね…けど≪
―――この、余計なひと言の所為で、私は私の立場と言うものを危うくしてしまったのです、なぜならば―――
「今…なんて言ったの―――」
「えっ、何が?」
「『今何て言ったの』って聞いているのよ…なに、あなた正気―――?正気でそんな事を言ったの!?」
「ええっ…『正気』―――って、私はいつも…」
「それは【干渉】の問いの答えにはなっていない、それに『正気』ならば疑いが濃さを増しました。」
「な…何を言っているのか~~~」
「今あなたが言ってた≪
「最初からおかしいとは思っていました、
自分の事を自分が一番判っていない―――正直今の私がそれです…て言うか私が長年苦労してたのってあれは一体何だったの?それを『本当?』と言われても私は私でしかないわけだし…けれどこんな窮地に陥ってた私にも救いの手が?
「ウ…ウソ―――」
「どうしたのですか【干渉】。」
「こ…こいつ―――わたしの知ってる【崩壊】と同じ…」
「なにを―――おかしな事を…」
「いや、だってわたし、今こいつの魔力を≪鑑定≫で調べていたのよ、そしたら『保有量』『波長』『性質』等がわたしの知ってる【崩壊】のデータと合致するのよ!」
「バカな―――そんな事、有り得ない…と言う事は
「ええ―――正真正銘の【崩壊】と言える…けれどこれまでの言動からして
と、取り敢えず『助かったあ~』と言うべきかしら?ちょっと今まで―――って、直接居合わせていないと判らないとは思うんですけど殺気で充満してましたからねえ…まあその場で
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回の事で判った事だけを述べるとすれば、私は本来の“私”と言うものが曖昧になっているみたいだ、その事は私と同じく『次元の魔女』を僭称しているこの2人―――【干渉】と【怪複】の証言によって明らかになった事だった。 この2人の証言によるとどうやら本来の“私”と言うのは激しく破綻していたらしい、無闇矢鱈と破壊し尽くす事だけに邁進をし、その為の術式の研究もしていた―――けれどそんな
* * * * * * * * * *
それから私は、“私”と言うものを振り返ってみる事にした。 とある
―――それより、あれ?どうして私、そんな術式使えたの?―――
まあ確かにあの時は切羽詰まってて捕まりたくなかったものだから無意識の内に使っちゃって……いやでも待ってよ?そもそもが『使った事があった』り、『知って』いなければ使いたくとも使えない…なのに使えたって事は―――私はこの術式を使ったことが『ある』?!
でも、それはそれで不思議な事でもあった。 大体〖次元転移〗なんて“超”のつく高等魔術で使うのもひと苦労したはず…なのに私は使えていた―――私が最初に使った経緯は先程話した通りだったけれど、二度目に使った時は最初に転移してきた
それよりなぜ二度目が“出来た”のか―――それはなぜか“出来る”と思ったからだ…それに、私の“運命の友人”の為にもとの思いが強かった…そう、思うしか外はなかった。
だけどそれよりも
そこは疑問すら浮かばなかった―――疑問とする余地すらなかった、私は“あの場所”の出身で、そこで私の
あ、れ―――?そう言えば私を産んでくれた
バカな…思い出せない?顔すら―――判らない??
「なるほど、そう言う事でしたか。」
「(!)あなた、は―――【怪複】!」
「あの時の
「(…)私―――を、どうする気…?」
「別に、どうも―――それに“
「あ、の…私の失った
「それは
「そ…そうよねえ~それに私が失った以前の“私”って、あなた達を見ている限りロクなヤツじゃなさそうな事が判って来たし…」
「は?
それ、褒められてない~~~て言うか以前の“私”ってクズじゃん!血も涙も枯れて果てたカスじゃん!世界の“敵”じゃんん~~!
うん、よし、判った―――忘れよう…私は以前の“私”だったことを忘れよう!そうした方がいいのよ、世界の為にも―――この
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
けれど、例え私がそうした処で【
「思って、いた通りでした…以前の“
「ご苦労様―――それより、やっぱりそう言う事だったみたいね。」
「それより、どうするのです。 【
「あら、柄にもなく心配をしてあげているの?【怪複】…けれど心配をするだけ無駄と言うものよ、あなたも感じたでしょう?あの人は以前の“あの人”を失っているとしても無意識の内に役割を果たしている。」
「ええ―――本当に…
「なのに―――あなたはなぜ、【崩壊】を見張っていたと?」
「【干渉】―――
「あら、ごめんなさい―――つい、ね。」
【
そう言えばあの2人には私の様な固有名はついていなかった―――なのに私には付いていた…『
「何者だ―――なんだお前サンか…」
「(あはは…)どうもその節は~ご迷惑をおかけしまして~~。」
「良い度胸をしておるな、未だお前サンへの警戒が解かれぬというのに。 だが、どうやら
「そこまでお察しなら、“私”の事を教えてください。」
「“お前サン”の事じゃと?さんざんぱら迷惑かけてきた―――」
「あ、あああ~~~そ、そう言うのじゃなくて…なんて言いますか、この
「ほう、だとするとお前サンは“自分”と言うものを取り戻した―――いや…今の状況を
「それとはちょっと違います…けど、私と似たような存在と知り合って以前の“私”と言うものが知れました…ですから私がもし“自分”を取り戻したら取り返しのつかない事になるだろうと…だから以前の“私”がどうだったのかを知りたいだけなんです。」
「その言葉―――お前サンを信用してよいのか?」
「信用…ですか、難しいとは思いますが取り敢えずの処は『して頂ければ』幸いかな、と。」
「(…)まあよかろう―――」
そこで私が話しを持ち掛けたのは“その場所”での『混沌』の勢力を代表する人物だった、ところで『何故』―――私が話しを持ち掛けたのが『混沌』の勢力か…と言うと、『秩序』の勢力が圧倒的に融通が利かないからです、なので『話しが判る(判ってくれる)』と言う意味で二者択一するしかなかったのです。
すると―――この代表の口からは…
* * * * * * * * * *
あれは―――“今”と同じく穏やかで平穏な日じゃった…しかしある時、その平穏を破る者がこの世に現出したのじゃ。 “我々”の誰よりも強大で多量の魔力を保有せし者―――どうやらその者はこことは違う別の
「それってえ~~~“私”のぉぉ……」
「明らかにその者は“我々”に対し敵意を剥き出しにしておったが、別の
「気を失って捕まっちゃった―――と…でもどうして今まで生き残っていたの。」
「勿論、その事に関しては“我々”の中で紛糾したものだ、『世間を騒がせたことで即刻処断せよ』『いやいやここはまずこの者の言い分を聞いてからでも遅くはない』と、な。 そんな
「(…)それから―――?」
「結論のみを述べてやると“自我”を失っていた―――それが“今”のお前サンだよ。 それからと言うものは以前までの邪性は無くなり行く末を見守る形で経過観察をしていたモノだが―――」
「私が試し撃ちをしてた結果―――」
「うむ、やはり拘束し裁きを受けさせる―――だがその裁きも…」
「既に“有罪”は確定―――と…で、またも私は〖次元転移〗を使って逃れたと。」
「ま、要約するとそう言う事だな。」
ん~~~ある程度予測してたけど、なにしてたんだ“私”……とは言え私も調子に乗って試し撃ちし過ぎてこの場所を穴ぼこだらけにしたしねえ~けれど『逃げ』の選択は間違っていなかった―――あの時逃げずにみすみす捕まってたら私はここまで生きていないって事だし、私の事を理解してくれた“運命の友人”とも出会わなかった…だから逃げるって事は何も恥じゃないのよね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こうして私は、私の事が徐々に判りかけてきたのだったが―――まだ予断は許さなかったみたいで…
「どうやらヴァニティアヌスの処の[英雄]の『出荷先』が決まったらしいわ。」
「へえ…あの有望株―――」
「(ん?)何の…話しを?それに『出荷先』って―――」
「まあ“今”のあなたには“自我”と言うものがないからね、説明してあげてもいいけれど無駄になりそうだから止めておくわ。」
「(…)
「本来ならそう言った
「
「な…なんか大変なんですねえ、私達も……」
「何を言ってんだか、まず初めにわたし達でもそうした対抗手段を持つべきだと言ったのはあなたでしょうに。」
「(え゛っ?)そう…なん、です?」
「そうですよ、その事を言っていくれた時の
「そうそう、そのお蔭もあってわたしは【干渉】となり、この人は【怪複】となれた…けれど今と成ったらあなたが腑抜けてしまうなんてね、世の中何があるか判ったもんじゃないわ。」
そーーーだったんだあーーー“私”……て言うか何やっちゃってくれてるんだか、それに何か伝え聞くところによるとなんか“私”って武闘派すぎやしない?いや、けど、心当たりならあるか―――言う事聞かない“やんちゃくれ”共を手懐ける為に“こんがり”焼いたりしてるし、たまあーーーに
「それ、で?[英雄]の
「戦乱の世も終盤になり―――敵対勢力の猛攻によって今にも滅びようとしている国…その国は様々な種属が汎人類同盟を築き、“神”の意向を受けた同族達と殺し合わなければならない。 そして滅びようとしている国が起死回生の策として〖勇者/英雄召喚〗を実行しようとしているの、そこで
「[英雄]ベレロフォンと言う訳ですか…了解しました、それでは
どうやら―――中々の厳しい状況にある世界のようだった、“神”の事を信仰し思し召すがままに行動をする…そんな勢力が“神”の事を信仰しない勢力を滅ぼそうとしている。
これって…何なのだろうか、単純な解釈だとすると『神』と『魔』の戦争? “神”の事を信仰する勢力が『正義』だとするなら、“神”の事を信仰しない勢力は『悪徳』…ただ私は簡易的な説明を聞いただけでしかないけれど、何故か『間違っている』と思った。
それはただ単純にそうではないと思ってしまったからだ。
『何故』―――? そう聞かれても今はまだ答えは出ない、だけど今にも滅びそうな国が悪い存在ではない、とそう思ってしまった、だから……私は―――
「そこへは私が行くわ…」
「はあ?正気なの?それ本気で言ってる?大体“自我”を失ってるあなたに―――」
「それより、どうしてそうしようと思ったのです、【崩壊】。」
「う、うん―――なんかその国の置かれている状況を聞く内に『間違ってる』なあ…そう思って。」
「なあに?まさかあなた情に
「その前に、何が『間違ってる』、と。」
「“神”が『善』で“魔”が『悪』…と言う部分かな。」
「はああ~あのねえ―――」
「了解しました、ではこの件は
「ちょ、ちょっと【怪復】?どういうつもり…」
「いいではありませんか、【干渉】。
私は、私が感じたままに発言をし、その次元世界へと行くことにした。 すると【干渉】からは洩れなく反発され…は、したものの【怪復】からは同意は得られたものと―――そう感じた。
けれど【怪復】が同意したのはそれなりの腹案があったものとみえ―――
「ねえ、本当にどう言うつもりなの?あんな“自我”を失ってる人を…」
「このままでは
「実戦に投入し、実際にいくら努力した処で―――窮地を
「『夢見がち』ですか?ですが、何もしないで指を
「まあ『結果待ち』みたいにはなる様だけど、結果―――オーライになるならそれはそれで良しとしましょうか。」
「『結果』ではなく、『過程』を重視する
“自我”を失っている【
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