第11話 『次元の魔女』

現在“私達”は、ありとあらゆる次元世界せかい境界線きょうかいせんつどっている、そう…次元世界せかい―――狭間はざま……故にここは『次元の狭間はざま』と、そう呼ばれている。


そして“”―――があと2人もいただなんて…「『初めまして』―――でいいのかしら?私の名は『ベアトリクス』よ、あなた達は?」

「(…)しばらく会わない内に随分と人間社会に馴染んだものね、その証拠があなたの固有名―――このわたし達にそんなものは必要ないわ、けれど互いを認識し合うのに呼んでいたじゃない【崩壊】―――そう言った意味ではわたしは【干渉】と呼ばれていたわ。」

は【怪復】と呼ばれていました。 ではお歴々れきれき、これまで自身が関わって来た次元世界せかいと言うものを話し合おうではありませんか。」


誰も知らない―――世界中の混在こんざい混濁こんだくしたものがざるそんな場所で、次元世界せかい未来ゆくすえを決定する事が、私を含めるたった3人の『次元の魔女』によって話し合われた…

それにしても『次元の魔女』―――以前私のいた世界では、私を揶揄やゆする言葉でしかなかったけれど、まさか私以外にもいたなんてねえーーー意外だったわ。

私が『次元の魔女こう』呼ばれた経緯には、私が持っている固有能力ユニークスキルが凄すぎて、所有者自身である私自身でも手に持て余す事になっていたから、本来いた次元世界せかいから逃げるように使ったのが事の発端ほったんだったんだけど―――だったらこの2人は違っていたと言うの?

「なるほど、おおむねの事は判ったわ。 ではこれからお互いに持てる力を発揮していきましょう。」

「あの……その前に2人に聞いてもいいかな。」

「構いませんが―――どうかしましたか、先程からうかがわせてもらいましたが、まるで『別人』の様ですが。」

「そこはわたしも気にはなっていた部分ね、またこうして久方ひさかたぶりに会うまでは―――はわたし達の誰よりも『魔女』だと言うのに…」

えええええ……ひょっとしてだけど、私って余計な事をしちゃった?と言うか、その辺の記憶とか曖昧あいまいなのよねえ……それに私の固有能力ユニークスキル核融合ニュークリア≫も、私個人の能力モノなのに上手く扱えていなかった…この事にも関与するのかな。「あははは…それよりもあなた達の固有能力ユニークスキル―――その所為せいで他の人達と衝突しなかった?」

「―――何を聞いてくるものかと思えば、そんなの“ある”に決まっているでしょう、わたしのなんて常によ、結果の“善悪よしあし”にかかわらずものだから、有りがたがられる時もあるけど…まあ大抵たいていれ物扱いよね、―――転移うつるしかなかった…別の次元世界せかいに、だけど転移うつった次元世界せかいでも―――まあ、お察しの通りってわけよ。」

「逆には、迷惑がられていた事しかありません、のは万物の総てを癒す……ものではあるのだけれど、『やり過ぎ』は『ない』にも等しい―――それどころか壊れかけた世界をなお一層いっそうそうさせた事で、『魔女』なんて呼ばれもしました。 ふっ―――気の利いた冗談わらってしまうでしょう?『魔女』であるの事を『魔女』だなんて…。」

あーーー皆さんも色々やっちゃってるんだなあ~だったら私の事なんてこれ以上でもないし以下でもないし、いいか―――くらいの事で私の事を話してしまいました、するとこれが大変な事に「私もーーー実はーーー本来いた世界を破壊し過ぎちゃっててね…それでその次元世界せかいからは逃避にげました―――で、次に転移うつった次元世界せかいでは、その次元世界せかいと敵対してた次元世界せかいを、荒廃こうはいとした次元世界せかいに変えてしまいまして~~~」

「へえーーー中々やるじゃない【崩壊】。」 

「そうですね、まさに【崩壊】に恥じない活躍ぶりと言えます。」

「いやあーーーまあーーーそこまで褒められる事じゃないんだけどね。 けど≪核融合ニュークリア≫を自分のモノにするのに…」


    ―――この、余計なひと言の所為せいで、私は私の立場と言うものを危うくしてしまったのです、なぜならば―――


「今…なんて言ったの―――」 

「えっ、何が?」

「『今何て言ったの』って聞いているのよ…なに、あなた正気―――?正気でそんな事を言ったの!?」 

「ええっ…『正気』―――って、私はいつも…」 

は【干渉】の問いの答えにはなっていない、それに『正気』ならば疑いが濃さを増しました。」 

「な…何を言っているのか~~~」

「今、あなたが言ってた≪核融合ニュークリア≫なんて、あなた本来の固有能力ユニークスキル―――そのほんの一部…それも最低限のでしかないからよ!本来ならあなたの【崩壊】が破壊し、【怪複】が修復…そしてわたしの【干渉】がこれから生きていく上での試練を与える、それを…」

「最初からおかしいとは思っていました、自身の事を『ベアトリクス』だのと言っていたり―――、本当に【崩壊】なのですか?」

自分の事を自分が一番判っていない―――正直今の私がそれです…て言うか、私が長年苦労してたのってあれは一体何だったの?それを『本当?』と言われても私は私でしかないわけだし…けれどこんな窮地きゅうちおちいってた私にも救いの手が?

「ウ…ウソ―――」 

「どうしたのですか【干渉】。」

「こ…こいつ―――わたしの知ってる【崩壊】と…」 

「なにを―――おかしな事を…」

「いや、だってわたし、今こいつの魔力を≪鑑定≫で調べていたのよ、そしたら『保有量』『波長』『性質』等がわたしの知ってる【崩壊】のデータと合致するのよ!」

「バカな―――そんな事、有り得ない…と言う事ははまさしく……」 

「ええ―――正真正銘の【崩壊】と言える…けれどこれまでの言動げんどうからして人格ひとが変わったと言うしか…」

と、取り敢えず『助かったあ~』と言うべきかしら?ちょっと今まで―――って、直接居合いあわせていないと判らないとは思うんですけど、殺気で充満してましたからねえ…まあその場でされなかっただけ良しとしなければ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


今回の事で判った事だけを述べるとすれば、私は本来の“私”と言うものが曖昧あいまいになっているみたいだ、その事は私と同じく『次元の魔女』を僭称せんしょうしているこの2人―――【干渉】と【怪複】の証言によって明らかになった事だった。 この2人の証言によると、どうやら本来の“私”と言うのは激しく破綻はたんしていたらしい、無闇むやみ矢鱈やたらと破壊し尽くす事だけに邁進まいしんをし、その為の術式の研究もしていた―――けれどそんな記憶モノが無くなってしまった私は、初歩中の初歩である≪核融合ニュークリア≫ですらあつかうのに難儀なんぎしている始末…だから私は、私と同じ様な『次元の魔女』であるこの2人も、さぞや苦労をしてきたんだろうなあーーーとそう思い、私の事情と言うものを話してしまったわけだったのです。 そしたら途端とたんに怪しまれちゃって…(まあ自業自得なんでしょうけどね)


 * * * * * * * * * * * * * * * * * *


それから私は、“私”と言うものを振り返ってみる事にした。 とある次元世界せかいで私の固有能力ユニークスキルである≪核融合ニュークリア≫を馴染なじませる為に乱発らんぱつしてしまった挙句、上の存在から目を付けられるまでになってしまった…そこで私は『捕まってはお仕舞いた』と思うようになり、そこで使用したのが〈次元転移〉の術式だったのだ。


   ―――それより、あれ?どうして私、そんな術式使えたの?―――


まあ確かに、あの時は切羽せっぱまってて、捕まりたくなかったものだから無意識の内に使っちゃって……いやでも待ってよ?そもそもが『使った事があった』り、『知って』いなければ使いたくとも使えない…なのに、使って事は―――私はこの術式を使ったことが『ある』?!

でも、それはそれで不思議な事でもあった。 大体、〈次元転移〉なんて、“超”のつく高等魔術で、使うのもひと苦労したはず…なのに私は使えていた―――私が最初に使った経緯けいいは先程話した通りだったけれど、二度目に使った時は最初に転移してきた次元世界せかいを救う為、別の次元世界せかいから攻め込んで来る連中をらしめる為にと、また別の次元世界せかいへと転移したものだった。

それよりなぜ二度目が“出来た”のか―――それはなぜか“出来る”と思ったからだ…それに、私の“運命の友人”の為にも、との思いが強かった…そう―――思うしかほかはなかった。


だけどそれよりも以前まえ―――私が最初にいた“あの場所”…って?

そこは疑問すら浮かばなかった、疑問とする余地すらなかった、私は“あの場所”の出身で、そこで私の固有能力ユニークスキルを……


あ、れ―――?そう言えば私を産んでくれたひとは?私を育んでくれたひとは??

バカな…思い出せない?顔すら―――判らない??


「なるほど、そう言う事でしたか。」

「(!)あなた、は―――【怪複】!」

「あの時の姑息的その場限りに視えましたものでね、不躾ぶしつけですが見張らせてもらいました。」

「私を―――、どうする気…?」

「別に、どうも―――それに“”は【崩壊あなた】でしかない、以前きおくを失っていようが、【干渉】がたように“”は達の知る【崩壊】でしかない事は判った…だけどあの時には受け答えが余りにも不自然に感じたため、が事の成り行きを見張っていたのです。」

「あ、の…私の失った記憶モノって、取り戻せるの?」

「それはでは判らない、それに記憶そう言ったモノは実に繊細なのですから、下手にいじっておかしな事にならないとも限りません。」

「そ…そうよねえ~それに私が失った以前の“私”って、あなた達を見ている限りロクなヤツじゃなさそうな事が判って来たし…」

「は?は、以前のの事は好きでしたよ。 自分に与えられた役割に忠実で、その為にならと悪逆非道あくぎゃくひどうに平気で手に染められるの事が。」

それ、褒められてない~~~て言うか、以前の“私”ってクズじゃん!血も涙も枯れて果てたカスじゃん!世界の“敵”じゃんん~~!


うん、よし、判った―――忘れよう…私は以前の“私”だったことを忘れよう!そうした方がいいのよ、世界の為にも―――この天宙うちゅうの為にも!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


けれど、例え私がそうした処で【崩壊わたし】の“代替かえ”がいるはずもなく―――…


「思って、いた通りでした…以前の“”をくしてしまったは、元に戻らない事を願っているみたいです。」

「ご苦労様―――それより、やっぱりだったみたいね。」

「それより、どうするのです。 【崩壊あの人】の“代替かえ”なんていませんよ。」

「あら、ガラにもなく心配をしてあげているの?【怪複】…。 けれど心配をするだけ無駄と言うものよ、あなたも感じたでしょう?あの人は以前の“あの人”を失っているとしても、無意識の内に役割を果たしている。」

「ええ―――本当に…が今の時代でやってきた事を話してくれた時、例え“自分”と言うものを失ったとしても果たしている事に安心をしたものです。」


「なのに―――あなたはなぜ、【崩壊】を見張っていたと?」

「【干渉】―――は、のしている事にをすべきではないと思うのだわ。」

「あら、ごめんなさい―――、ね。」


崩壊】がいない―――【崩壊がいないその場所で、【崩壊】の事を語る【怪複】と【干渉】。

そう言えばあの2人には、私の様な固有名はついていなかった―――なのに私には付いていた…『virtorウィアートル』今ではそれが転じて『ベアトリクス』と名乗っているけど……誰が付けたんだろう、私の『virtorウィアートル』―――今まではさして気にしてきた事ではなかったけれど、ふとした事で疑問が湧いてきてしまった。 こうなっては放ってはおかれないのが魔術師としてのさがなのだろうか…気になってしまった以上その事以外に考えられない、ひとつ手がかりがあるとするなら私が以前までいた“あの場所”だ、そこでなら私の知らない“私”の事を知っている存在もいるかも知れない……と、言いたいんだけど~~~私、“あの場所”で現在『指名手配中』なのよねえ、そんな指名手配犯が堂々と姿を現わせるだなんてバカのする事か、しくは盛大な『挑発』と取られかねない…けど手がかりとしてはそこしか思いつかないのよねえ~~~ここはひとつ、話しの通じそうな人に掛け合って聞くしか―――「(てな事で…)お邪魔しまあ~~」

「何者だ―――なんだお前サンか…」

「(あはは…)どうもそのせつは~ご迷惑をおかけしまして~~。」

「良い度胸をしておるな、いまだお前サンへの警戒が解かれぬというのに。 だが、どうやら退きならぬ事情など出来たのであろう。」

「そこまでお察しなら、“私”の事を教えてください。」

「“お前サン”の事じゃと?さんざんぱら迷惑かけてきた―――」

「あ、あああ~~~そ、そう言うのじゃなくて…なんて言いますか、この次元世界せかいで“私”を認知した時のことです。」

「ほう、だとするとお前サンは“自分”と言うものを取り戻した―――いや…今の状況をかんがみるに取り戻そうとしておるのか?」

とはちょっと違います…けど、私と似たような存在と知り合って、以前の“私”と言うものが知れました…ですから私が“自分”を取り戻したら取り返しのつかない事になるだろうと…だから以前の“私”がを知りたいだけなんです。」

「その言葉―――お前サンを信用してよいのか?」

「信用…ですか、難しいとは思いますが取り敢えずの処は『して頂ければ』幸いかな、と。」

「(…)まあよかろう―――」

そこで私が話しを持ち掛けたのは“その場所”での『混沌』の勢力を代表する人物だった、ところで『何故』―――私が話しを持ち掛けたのが『混沌』の勢力か…と言うと、『秩序』の勢力が圧倒的に融通ゆうづうかないからです、なので『話しが判る(判ってくれる)』と言う意味で二者択一にしゃたくいつするしかなかったのです。


すると―――この代表の口からは…


 * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


あれは―――“今”と同じく穏やかで平穏な日じゃった…しかしある時、その平穏を破る者がこの世に現出げんしゅつしたのじゃ。 “我々”の誰よりも強大で、多量の魔力を保有せし者―――どうやらその者は、こことは違う別の次元世界せかいから転移してきた者らしかった、そこで“我々”も何某なにがしが来訪したものと思い、事象じしょうを感じた地点に駆け付けてみれば―――「そこには自らの事を【崩壊】と僭称せんしょうする『魔女』がいたのだ。」

「それってえ~~~“私”のぉぉ……」

「明らかにその者は“我々”に対し敵意てきいき出しにしておったが、別の次元世界せかいより転移すると言うのは魔力を膨大に消費するものとみえ、“我々”と争い合っていた最中に魔力切れを起こし…」

「気を失って捕まっちゃった―――と…でもどうして今まで生き残っていたの。」

「勿論、その事に関しては“我々”の中で紛糾ふんきゅうしたものだ、『世間を騒がせたことで即刻処断せよ』『いやいやここはまずこの者の言い分を聞いてからでも遅くはない』と、な。 そんな最中さなか、気を失った者は再び意識を戻したのだが…」

「(…)それから―――?」

「結論のみを述べてやると“自我”を失っていた―――それが“今”のお前サンだよ。 それからと言うものは以前までの邪性は無くなり、行く末を見守る形で経過観察けいかかんさつをしていたモノだが―――」

「私が試し撃ちをしてた結果―――」

「うむ、やはり拘束し、裁きを受けさせる―――だがその裁きも…」

「既に“有罪”は確定―――と…で、またも私は〈次元転移〉を使って逃れたと。」

「ま、要約ようやくするとそう言う事だな。」

ん~~~ある程度予測してたけど、なにしてたんだ“私”……とは言え、私も調子に乗って試し撃ちし過ぎてこの場所を穴ぼこだらけにしたしねえ~けれど、『逃げ』の選択は間違っていなかった―――あの時逃げずにみすみす捕まってたら私はここまで生きていないって事だし、私の事を理解してくれた“運命の友人”とも出会わなかった…だから逃げるって事は何も恥じゃないのよね。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こうして私は、私の事が徐々に判りかけてきたのだったが―――まだ予断よだんは許さなかったみたいで…


「どうやらヴァニティアヌスの処の[英雄]の『出荷先』が決まったらしいわ。」 

「へえ…あの有望株ゆうぼうかぶ―――」 

「(ん?)何の…話しを?それに『出荷先』って―――」

「まあ“今”のあなたには“自我”と言うものがないからね、説明してあげてもいいけれど、無駄になりそうだから止めておくわ。」 

「(…)達の役割とは、それぞれの次元世界せかいが有している[勇者]や[英雄]と言った様な優秀なユニットを交換トレードして回るのです、交渉事こうしょうごとは各次元世界せかいの神達がう事になりますが、これがなんの問題トラブルもなければいいのですが…」

「本来ならそう言った問題トラブルの解決は本人同士でしなければならない…だけど毎回漏れなくわたし達も巻き込まれるから、だからそう言った勘違い野郎どもに対処する為―――」 

達もの対抗手段をもちいるようになった…と言うより、もちいらざるを得なくなってしまったのです。」 

「な…なんか大変なんですねえ、私達も……」

「何を言ってんだか、まず初めにわたし達でもそうした対抗手段を持つべきだと言ったのはあなたでしょうに。」 

「(え゛っ?)そう…なん、です?」 

「そうですよ、その事を言っていくれた時のはとても素晴らしかった、それまでは巻き込まれるだけでしかなく、べそばかりをいていた達に対し、目を血走らせながら鼻息も荒くこう言ったものです『やられたらやりかえせ』と。」

「そうそう、そのお蔭もあってわたしは【干渉】となり、この人は【怪複】となれた…けれど今と成ったらあなたが腑抜ふぬけてしまうなんてね、世の中何があるか判ったもんじゃないわ。」

そーーーだったんだあーーー“私”……て言うか何やっちゃってくれてるんだか、それに伝え聞くところによると、なんか“私”って武闘派すぎやしない?いや、けど、心当たりならあるか―――言う事聞かない“やんちゃくれ”共を手懐てなずける為に“こんがり”焼いたりしてるし、たまあーーーに鬱憤うっぷん晴す為に一発撃って穴開けちゃったりしてるし…これってひょっとすると、元の“私”の作用の所為せいでもあるのかなあ?

「それ、で?[英雄]の交換トレード先はどう言った処?」

「戦乱の世も終盤になり―――敵対勢力の猛攻によって今にも滅びようとしている次元世界せかい…その次元世界せかいは様々な種属が汎種族同盟はんしゅぞくどうめいを築き、“神”の意向を受けた同族達と殺し合わなければならない、そうして滅びようとしている次元世界せかいが、起死回生きしかいせいの策として〖勇者/英雄召喚〗を実行しようとしているの、そこで召喚よびよせられるのが…」

「[英雄]ベレロフォンと言う訳ですか…了解しました、それではが行きますか。」

どうやら―――中々の厳しい状況にある世界のようだった、“神”の事を信仰し、おぼし召すがままに行動をする…そんな勢力が“神”の事を信仰しない勢力を滅ぼそうとしている。

これって…何なのだろうか、単純な解釈だとすると『神』と『魔』の戦争? “神”の事を信仰する勢力が『正義』だとするなら、“神”の事を信仰しない勢力は『悪徳』…ただ私は簡易的かんいてきな説明を聞いただけでしかないけれど、何故か『間違っている』と思った。

はただ単純にではないと思ってしまったからだ。

『何故』―――? そう聞かれても今はまだ答えは出ない、だけど今にも滅びそうな次元世界せかいが悪い存在ではない、と、そう思ってしまった。 だから……私は―――

「そこへは私が行くわ…」

「はあ?正気なの?それ本気で言ってる?大体“自我”を失ってるあなたに―――」

「それより、どうしてそうしようと思ったのです、【崩壊】。」

「う、うん―――なんかその次元世界せかいの置かれている状況を聞く内に『間違ってる』なあ…そう思って。」

「なあに?まさかあなた情にほだされて感情移入かんじょういにゅうでもしちゃったの?信じられない…そんな者は不必要だと切り捨てたのはあなただったのに。」

「その前に、何が『間違ってる』、と。」

「“神”が『善』で“魔”が『悪』…と言う部分かな。」

「はああ~あのねえ―――」

「了解しました、ではこの件はに一任してみましょう。」

「ちょ、ちょっと【怪復】?どういうつもり…」

「いいではありませんか、【干渉】。 がどうした理由であれ、自主的に為そうとしているのです。 それに…―――」


私は、私が感じたままに発言をし、その次元世界せかいへと行くことにした。 すると、【干渉】からはれなく反発され…は、したものの、【怪復】からは同意は得られたものと―――そう感じた。


けれど【怪復】が同意したのはそれなりの腹案ふくあんがあったものとみえ―――


「ねえ、本当にどう言うつもりなの?あんな“自我”を失ってる人を…」

「このままではらちが開きません、ならばらちを開けるまで。 ではどうするのが一番か、もうなら判ったハズですが…」

「実戦に投入し、実際にいくら努力した処で―――窮地を救済すくう力に頼った処で滅びてしまう、そんな無常を目の当たりにして失われたモノが戻るとでも?」

「『夢見がち』ですか?ですが、何もしないで指をくわえているよりも、いくらかは建設的なハズ…」

「まあ『結果待ち』みたいにはなる様だけど、結果―――オーライになるならそれはそれで良しとしましょうか。」

「『結果』ではなく、『過程』を重視するが、『結果』を論ずるなんて珍しい事もあったものですね。 も、この事象じしょうの行く末に興味が湧いて来たと言うものです。」


“自我”を失っている【崩壊】の為にと同意してくれたわけではなかった…ただこの2人が望んでいたのは、ひとつの次元を崩壊させる権能を持った―――“私”なのだから…




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