第10話 『混沌』の意味するところ
「[大司祭]
「『何を』、『お考えで』…とは?」
「お
「あなた達は足らないと?教会の威光を示す為には秘蔵の神殿騎士団軍を大隊単位で派遣するのが筋―――と、そう仰りたいのですね。」
「ええその通りですとも!確かに[英雄][勇者]は個の戦力としては目を見張るところはありまするが、所詮彼らは“個”―――1人しかいないのです、故にこそ彼らの手が及ばない処は
その頃教会内部にては[大司祭]が並み居る[神官]達からの抗議に1人で対処していたのでした。 それに教会も隠然たる権力を振るいたかったものとみえ、自分達抜きで重要事項を決定した[大司祭]を責めたものだったのです。
しかしながら[大司祭]の策謀は既に発動済みだった…だからこそ―――
「
「な―――何を…今更そんな事を。」 「女神ヴァニティアヌス様はこの世界の創世神にして慈悲深き方…」 「私達とて幾度となくその奇蹟に触れてきた事か…」 「ああ、だからこそ我等が女神様は!」
「なあんだ、それではまあるで何も判っていないいのと同じじゃない。 あの子の本質を見抜けずにいてそれで奉られているなんて…なんて可哀想な子なのでしょう。」
「(な…)[大司祭]
「私は、正気ですよ。 寧ろあなた達の方がどうかしている―――あの子の事を知りもせずに自らの懐を温かくする手段としか捉えていないあなた達が…良いですか、あの子の―――女神ヴァニティアヌスの真実とは…『混沌に属し仕えるべき
「(な?)我等が女神様が―――…『混沌』の神?」 「バ…バカな信じられん!」
「そう思うのも無理らしからぬ処、それにこの
「……。」「~~~。」
「あらあら、誰も反論できなくなったみたいですね。 では私も行くとしましょう。」
「
「私が……いいえ、私“達”が
「ま―――まさか…あなた様は?!」
「
突如としてこの世界に
それに彼女達はただ見たかっただけだった―――知りたかっただけだった…自分達の仲間が目を付け、
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方―――ヴェルドラの単独撃破を目的とした私の闘いは佳境に入っていた。
私の小さな友人を―――少々こまっしゃくれていて小生意気な魔族の
それから紆余曲折があり
{ほう…視えるぞ―――キサマの
「今の私にその様な
{『
「(なに?)この
{フッフ―――どうやら余計な事を喋り過ぎたようだ、さあ[勇者]よ楽しもうではないか、闘争を!}
私の魔力を深く静かに通す事により次第に顕現されてくる私の鎧―――以前私が使用していたように頭部全体をすっぽりと覆い隠すフルフェイス
しかもこの
全力を、尽くした―――後の事はどうなろうと関係なく…こうした向こう見ずなを視られるとまた厳しい事を言ってくるのだろうな…だが私は全力を尽くした、それは一撃目でよく理解できたからだった、
「この私の一撃が受けられるか―――ヴリドラ!」
{ほほう…その意気やよし、しかしその決意は決して褒められたものではないがな。 賢い者ならば次の一手を考えるもの―――しかしそれでは勝ちの目は見えないと思った、だからこそ、その一手に己の総てを乗せた…
しかし―――私の一撃は不発に終わってしまった…
なぜなら有り得ないことが起こってしまったからだった、そう―――有り得ない…突如として私とヴェルドラとの間に、あの……
「いかがでしたか―――ヴリドラ…この娘の出来は。」
{どなたかと思いきや―――しかし感心しませんな、今ワレとあの者とは命を削り合う闘争の
「ええ―――判っていますとも、ヴリドラ…判っているからこそ邪魔をしに来たのです。 この
「(なっ)何者だ?あなたは…それにその衣服の意匠は聖ヴァニティアヌス教会の高位の聖職者のもの―――それに、ヴリドラを敗り走狗に仕立て上げたとは…あなたは一体?」
「いいじゃありませんか、そんな
「なんと傲慢な!一教会の一司祭が言っていい事では―――…」
「『傲慢』?この
私達の
{クスクスクス、
「『エレシュキガル』―――それが私を高みに引き上げた方…!」
{そしてお前は
成熟しつつも引き締まった身体のあり方、その全身には紅に彩られた“紋”が埋め尽くされ、美しい中にも危険な臭いを放つ女神が降臨されていた。
それに今まで謎だった名乗らじの女神の名も知れて来た、【冥界の女神】エレシュキガル―――現在は私の所有物と成っている
{ああ、それにしてもやはり溜まりません!不完全であるからこそ完全であろうとするその姿―――こんな事は『秩序』では考えられない話し、だからこそ神々は試そうとするのです、お前の様な眷属に試練を与えて。}
「私はあなた様が何を仰っているのかまるで分らない…それに『秩序』のどこが悪いと言うのだ?確かに私は不完全だ―――だからこそ完全であろうと努力をしている!それに私は未熟だと知られていても尚、[勇者]に任命をしてくれた女神ヴァニティアヌスの期待に応えようと―――」
{だあーかあーらあーこそなのです。 『秩序』とは
「それが―――エレシュキガル様にあなた様…」
{合格です、及第点を差し上げましょう[勇者]フレニィカ、そのご褒美に
「(…)有り難くはあるのですが、女神様達からこんなにも授かり物を―――」
{好い物を観せてもらったお礼です。 まあ―――
今の女神様の証言によってまた一つある事が判って来た。 私達の女神―――ヴァニティアヌスの
* * * * * * * * * *
そんな
「あら、もう終わっていたみたいね。」
{ウフフフ、ざあーんねえんでしたお姉サマあ~?中々の
「(ほへ?)『お姉サマ』?この、どこからどう見ても教会のお偉方の一人の様なこの女性が…
{そうですわよ、それにしてもお姉サマ…今頃ご到着とは、あの様な有象無象相手に苦戦を強いられるとは―――}
「何を言っているの、ああ言った手合いの者達は何も上層だけではない―――教会と言う組織に所属する末端の者まで隅々と調べる身にもなってみなさい。」
{それでえ~?いましたの―――?}
「怪しい者すら見つけられなかった―――つまり教会は
いつの間にか―――そういつの間にか、私の隣りには美女がまた一人…この私の身長(178)よりも長身(190)と見られる―――色白で
そんな莫迦な―――そんな莫迦な事があってたまるか!?私は[勇者]だ…今は女神パールヴァティ様によってヴェルドラとの対決に水を差された形にはなってはいるが、先刻までは気を張り詰めさせていたのだぞ?!そんな―――そんな私の警戒網を掻い潜り…私の側近くにいると言う事は……
{それよりお姉サマ、趣味悪い―――この娘も先程まではバッチバチにヴリドラちゃんと
「それは、悪かったわね。 それよりあなたの方はどうなの、パールヴァティ。」
{一応は、
「そう、では早速その場所に行きましょう。」
「(あ、あのパールヴァティ様。)」
{なに、どうしたの。}
「(あの女性は一体?あなた様の事を迷う事無くパールヴァティ様と仰っていた辺り、やはりあの女性も…)」
{ウップス、やっちまいましたね…つい、いつもの
なんだか…判った様な判らない様な理屈を述べられ私の疑問としていた事は私が活動の拠点とている町まで持ち越されたのだった。
* * * * * * * * * *
けれど私のその疑問もすぐに払拭されてしまった、それというのも傷を負っていたヴァヌスが目覚め、私の帰りを待っているかの如く起き上がっていたのだ。 そして開口一番―――
「あのーーーパールヴァティ様?どして
「(えっ?)
「ええ、あんたの背後に立っているのが【
「ええっ…と、あのお~~ーーー」
{あらあら悪い子ね、これからじいっくりと―――炙った烏賊のように浸透させていく計画だったのに…}
{お酒の時間にはまだ早いですわよ―――}
{なにか、言いました?}
{いいえ~~
な…なん……なんだ、この状況?【冥界の女神】エレシュキガル様に始まり【“死”と“破壊”、“復活”と“再生”の神の正妻】パールヴァティ様、更には【
私を取り巻く状況に環境はどうなっているのだと思っていた処にまた別の思いが頭を
「な…なあ―――ヴァヌス、気になったことがあるから一つ聞いていいか。」
「なあに?」
「先程お前は【暴風の
「(…)ごめんなさい、記憶にないわ。」
「たった今言っていたばかりじゃないか!よくもそれで『記憶にない』等と!」
「変な処で耳聡いもんだな…ええそうです、その通りです、ヴリドラくんとは旧知の
「は、い?その傷…お前自身が傷付けた―――と言うのか?」
「そうよ、とは言えあまり力を抜いては軽めの傷程度しか付けられない…これってね案外力加減が難しいのよ。」
「だ…だが、ヘレネが―――そう言えばヘレネはどこへ行った?」
「夜の酒の仕込みがあるからと出て行ったけど?」
『
本当は怨み言のひとつやふたつは言ってやりたい処なのだが、女神様達が(なぜか)[
そしてこの後、女神様達がなぜ私達の世界に集結しているのか、知らされるのだった。
{それよりも、思いの外時間に余裕がありましたね、私の想定では
{お姉サマは常にギリギリで読みますからね、もう少し余裕を見られては―――と思うのですが…}
{“分”単位や“秒”単位で設定しておいた方が逆に余裕を見て行動が出来る―――現に今がそうなっているでしょう?}
{まあ確かに、とは言えそれも結局は結果論ありき…ですけれどね。}
「あの…失礼ですが先程から何の話しを?」
{ここからが本番―――と言う事ですよ、[勇者]フレニィカ。 [英雄]ベレロフォンの方は既に決まっていますがあなたの事を値踏みしている連中は多い…それに値踏みするだけなら良いのですが、値踏みにすら参加せず
『ここから』―――?とは…中々に予断を許さない状況にはなりつつあるようだった、それになぜ私だけに『過ぎる
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