第10話 『混沌』の意味するところ

「[大司祭]猊下げいか!一体何をお考えでいらっしゃるのですか!」

「『何を』、『お考えで』…とは?」

「おとぼけになられるな!“暴風”の災厄と言い伝えられている【暴風の真竜ウィルム】ヴリドラの討伐の援助として[司祭]殿の派遣などと!」

「あなた達は足らないと?教会の威光を示す為には秘蔵の神殿騎士団軍を大隊単位で派遣するのが筋―――と、そう仰りたいのですね。」

「ええその通りですとも!確かに[英雄][勇者]は個の戦力としては目を見張るところはありまするが、所詮彼らは“個”―――1人しかいないのです、故にこそ彼らの手が及ばない処は教会我等が担っていた…だからこそ!」



その頃教会内部にては[大司祭]が並み居る[神官]達からの抗議に1人で対処していたのでした。 それに教会も隠然たる権力を振るいたかったものとみえ、自分達抜きで重要事項を決定した[大司祭]を責めたものだったのです。

しかしながら[大司祭]の策謀は既に発動済みだった…だからこそ―――



狼狽者うろたえもの―――少しお黙りなさい。 そもそもあなた方は自分が崇拝している女神様の事を知らないのですか?」

「な―――何を…今更そんな事を。」 「女神ヴァニティアヌス様はこの世界の創世神にして慈悲深き方…」 「私達とて幾度となくその奇蹟に触れてきた事か…」 「ああ、だからこそ我等が女神様は!」

「なあんだ、それではまあるで何も判っていないいのと同じじゃない。 の本質を見抜けずにいてそれで奉られているなんて…なんて可哀想な子なのでしょう。」

「(な…)[大司祭]猊下げいか―――?!」 「お気でも触れられたか?!」

「私は、正気ですよ。 寧ろあなた達の方がどうかしている―――あの子の事を知りもせずに自らの懐を温かくする手段としか捉えていないあなた達が…良いですか、あの子の―――女神ヴァニティアヌスの真実とは…『混沌に属し仕えるべき主神あるじに尽くす』。」

「(な?)我等が女神様が―――…『混沌』の神?」 「バ…バカな信じられん!」

「そう思うのも無理らしからぬ処、それにこの次元世界せかいは『混沌』に存在しているのだから『混沌』ではないそうだと思ってしまうのも無理らしからぬ話しなのです。 それに教会と言う場所は自らの事を正しいと―――自らが証明し続けなければならない…あなた達が信じた“正義”を、あなた達が貫かなくてどうすると言うの。」

「……。」「~~~。」

「あらあら、誰も反論できなくなったみたいですね。 では私も行くとしましょう。」

猊下げいか―――どこへ…」

「私が……いいえ、私“達”が降臨おりたったのは至極単純な理由―――この次元世界せかいの[勇者]をある女神が目を掛けた…そして私達が知るまでの間にきちんとした“形”に為し得、そして元の世界へと戻した。 気に、為りませんか?私も一部始終を知っているわけではありませんのでわざわざ“受肉”をし、この世界の権威のひとつである教会に現出したのです。」


「ま―――まさか…は?!」


狼狽者うろたえもの―――それをお前達が知っていい事ではない、だが邪魔立てはせぬよう泡沫うたかたの夢でも見ているがいい…」



としてこの世界に現出あらわれた聖ヴァニティアヌス教会の[司祭]と[大司祭]、しかしながらこの両者は己の持てる権能を駆使しあたかも以前から権力構造の中でも権威を振るう者として振舞っていたのです。 それに普通ただのヒューマン如きにはそんな耐性など持ち合わせていない―――神に抗うと言う技能は。

それにはただ見たかっただけだった―――知りたかっただけだった…自分達の仲間が目を付け、あまつさえ過ぎるモノを授けた者を。



        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一方―――ヴェルドラの単独撃破を目的とした私の闘いは佳境に入っていた。


私の小さな友人を―――少々こまっしゃくれていて小生意気な魔族の幼生体少女を傷付けた者…私は彼女の目から見たらあやうい存在だったのだろう、[勇者]の“弱”く―――だからこそ自信を持てない私の事が気がかりになっていたからついついいて出てくる言葉も厳しくなってくる。 [勇者]の本来の補助者サポーターは酒場ヘレネスの女主人マダムであるヘレネだ、それに彼女は私が打倒すべき宿敵でもある『[魔王]ヘルマフロディトス』でもあり、いにしえの[勇者]“ハガル”でもあると言う、そんなヘレネは[勇者]の宿敵と言うに相応しかった、一度は彼我ひがの実力差により敗北を喫してしまったが再戦で見事打倒することが出来た(とは言え…随分手加減をされてしまっていた事を知ったのは後の事なのだが…しかもそれを裏付けるかのように『魔王復活』してくるし―――それで『三度目の正直』と言う訳で三度目の対決をしている最中に名乗らじの女神によってさらわれたのだ)。

それから紆余曲折があり一回ひとまわりも成長してきた私を待ち受けていたのが―――【暴風の真竜ウィルム】と呼ばれているヴリドラだったのだ、私の小さな友人を傷付けた報いを受けさせるため、私は名乗らじの女神から授けられた武具に、深く静かに魔力を通すのだった……


{ほう…視えるぞ―――キサマの魔力チカラ…なるほどな、『持ち腐れ』とはよく言ったものだ。}


「今の私にその様なあざけりは通用しない!いざ覚悟せよ。」


{『あざけり』?あざけりではないぞ、寧ろ賞賛をしているのだ。 何しろその神装武具アーティファクト『美と愛と豊饒の女神の額冠ティアラ』をまで発現させたのはワレが知る上でキサマで2人目だからだ、まあそれもその額冠ティアラを元々所有しておられた女神の“姉”なる方から授けられた≪通力≫によって為せられているのは否めないが…な。}


「(なに?)この額冠ティアラの―――この額冠ティアラの元々の持ち主の事を知っていると言うのか?!それに……その女神様の“姉”だと!?」


{フッフ―――どうやら余計な事を喋り過ぎたようだ、さあ[勇者]よ楽しもうではないか、闘争を!}


私の魔力を深く静かに通す事により次第に顕現されてくる私の鎧―――以前私が使用していたように頭部全体をすっぽりと覆い隠すフルフェイスタイプの兜に、上腕までを保護する『ヴァンブレイス』、太腿や脛など脚全体を防御する『グリープ』に、あらゆる攻撃でも傷一つ付かない『フル・プレートアーマー』…それらを一つに集約させているのが名乗らじの女神から授けられた『美と愛と豊饒の女神の額冠ティアラ』だったのだ。

しかもこの額冠ティアラを元々所有していた女神の“姉”―――今まで判らないことだらけだった名乗らじの女神の事が少しだけ判ってきた気がしてきた、しかし今は対決の場、一瞬の気の迷いや気取られが命取りとなる―――だからこそ私は…


全力を、尽くした―――後の事はどうなろうと関係なく…こうした向こう見ずなを視られるとまた厳しい事を言ってくるのだろうな…だが私は全力を尽くした、それは一撃目でよく理解できたからだった、生半なまなかな攻撃ではとおらない―――それ程の防御結界…あれを先に崩さねば私に勝機はない、そう思ったからこそ私は次の一撃にも全力を込めたのだ。

「この私の一撃が受けられるか―――ヴリドラ!」

{ほほう…その意気やよし、しかしその決意は決して褒められたものではないがな。 賢い者ならば次の一手を考えるもの―――しかしそれでは勝ちの目は見えないと思った、だからこそ、その一手に己の総てを乗せた…いぞ、い覚悟だ!このヴリドラ当初は神の気紛れと思っておったが…聞き入れてみるのも中々に面白いものよ―――なあ?}


しかし―――私の一撃は


なぜなら有り得ないことが起こってしまったからだった、そう―――有り得ない…突如として私とヴェルドラとの間に、……


「いかがでしたか―――ヴリドラ…この娘の出来は。」


{どなたかと思いきや―――しかし感心しませんな、今ワレとあの者とは命を削り合う闘争の最中さなか…}

「ええ―――判っていますとも、ヴリドラ…判っているからこそ邪魔をしに来たのです。 このわたくし達に不様に敗れ、わたくし達の走狗に成り果てた可哀想で可愛い悪魔アースラ。」

「(なっ)何者だ?あなたは…それにその衣服の意匠は聖ヴァニティアヌス教会の高位の聖職者のもの―――それに、ヴリドラを敗り走狗に仕立て上げたとは…あなたは一体?」

「いいじゃありませんか、そんな些事こと。 わたくしが何者であろうがそんな些末さまつな事は気にする必要すらありません。 ただは観せるだけで良かったのです、あの者が授けた『美と愛と豊饒の女神の額冠ティアラ』を扱うのに相応しいのかどうか…それを見極める為、このわたくしが飼っている中ではそこそ強いヴリドラをあてがい―――お前の実力を見て差し上げたのです。」

「なんと傲慢な!一教会の一司祭が言っていい事では―――…」

「『傲慢』?このわたくしが? ええ―――えええ~そうでしょうとも!『傲慢』に振舞えるのはわたくしの特権、わたくし傲岸不遜に振舞えれる、ええ―――ええ―――そうでしょうとも。」

私達の次元世界せかい―――女神ヴァニティアヌスの次元世界せかいに在る聖ヴァニティアヌス教会の高位の聖職者…[司祭]、しかし彼女は耳を疑う様な事を次々と言い立てて来たのだ、その一つにヴリドラも言っていた事だったのだが、【暴風の真竜ウィルム】と称されるほどのヴリドラをしてどこか使い走りをさせている様な存在がいるのだと言う、そしてその事は一教会の一司祭の口からも証言された事だった。 第二に彼女の目的は私が名乗らじの女神から授かった『美と愛と豊饒の女神の額冠ティアラ』を正当に扱えるのかどうかを見極める為―――その目的の為だけに且つては敵対をしていたヴリドラを走狗に仕立て上げた…そして傲岸に、不遜に振舞えるのは―――!?「まさか―――は!?」


{クスクスクス、わたくしこそは【“死”と“破壊”、“復活”と“再生”の神の妻】…『パールヴァティ』と申し上げます。 お前はなんて幸運なのでしょう、同時期にわたくしの仲間とは言えどあの女神の目に止まったのですから…そう―――…【冥界の女神】である『エレシュキガル』の目に!}


「『エレシュキガル』―――それが私を高みに引き上げた方…!」


{そしてお前はわたくしに指し示して観せてくれた…『美と愛と豊饒の女神の額冠イシュタルのティアラ』をほぼ完全な形で再現をした者などわたくしはここ20000年ほど知り得ません。}


成熟しつつも引き締まった身体のあり方、その全身には紅に彩られた“紋”が埋め尽くされ、美しい中にも危険な臭いを放つ女神が降臨されていた。

それに今まで謎だった名乗らじの女神の名も知れて来た、【冥界の女神】エレシュキガル―――現在は私の所有物と成っている額冠ティアラの元の持ち主【美と愛と豊饒の女神】イシュタルの姉なる者…そして今、女神パールヴァティが証言したように私が正当にこの額冠ティアラを所有するのが相応しいかどうかをヴェルドラを介し知ろうとした―――ならば…?


{ああ、それにしてもやはり溜まりません!不完全であるからこそ完全であろうとするその姿―――こんな事は『秩序』では考えられない話し、だからこそ神々は試そうとするのです、お前の様な眷属に試練を与えて。}


「私はあなた様が何を仰っているのかまるで分らない…それに『秩序』のどこが悪いと言うのだ?確かに私は不完全だ―――だからこそ完全であろうと努力をしている!それに私は未熟だと知られていても尚、[勇者]に任命をしてくれた女神ヴァニティアヌスの期待に応えようと―――」


{だあーかあーらあーこそなのです。 『秩序』とは事物じぶつの正しい規則性、調和が保たれているという状態…それは言い換えれば保守性・保全性と言ってもいいでしょう、そして更には変革・変更は認められない…現状の維持ができませんものね、そしてそれは『農民の子は農民』『王侯貴族の子弟は王侯貴族』―――いわば『蛙の子は蛙』であるように、生まれの家そのものが子供の将来を左右する…『下剋上』―――なあんて夢物語は認められない、夢も希望もない世界なのです。 けれど『混沌』は違う…己の力量次第では一発逆転農民から王が見込める世界、そこでは日夜切磋琢磨をする冒険者の姿があります―――そう、お前達の事よ。 資本は『己自身』裸一貫で築き上げてきた名声に富を誰が批判することが出来るでしょう、『混沌』は夢に溢れている…希望に溢れている、皆が成長をする為にと神々わたくし達も『魔窟ダンジョン』なりとて造り、そこて可能性を見い出しているのです。 そしてお前は今回ある女神の目に留まった……}


「それが―――エレシュキガル様にあなた様…」


{合格です、及第点を差し上げましょう[勇者]フレニィカ、そのご褒美にわたくしからはを授けて差し上げましょう。}


「(…)有り難くはあるのですが、女神様達からこんなにも授かり物を―――」


{好い物を観せてもらったお礼です。 まあ―――わたくしの由来とは関係はありませんがね。}


今の女神様の証言によってまた一つある事が判って来た。 私達の女神―――ヴァニティアヌスの属性アライメントは『混沌』…信じられないが今の証言によって[勇者]や[英雄あいつ]、更には冒険者が活躍するこの次元世界せかいは『混沌』だと言う事が判ったのだ。 それに…感謝の言葉が見つからない―――余りに唐突と言う事もあるけれども、どうもここ最近の私は神やあいつや小さき友人達に甘えてばかりではないだろうか、と。 それは今、女神パールヴァティ様から授けられた褒美にも表れていた、所有者をあらゆる障害―――呪いや状態異常、更には不可視の攻撃すら無効化してしまうと言う『天盾てんじゅん』、その気になれば神ですら傷付け殺せると言う『魔剣』…確かに知れば女神パールヴァティ様の由来とはどこか違う様な気がしたが、額冠ティアラに次いでこの2つも神装武具アーティファクトじゃないかあ~?な―――なんだか一生分の“運”を使い切ってしまった感覚だなあ…


          * * * * * * * * * *


そんな呆気ほうけている私を余所に、またも―――


「あら、もう終わっていたみたいね。」

{ウフフフ、ざあーんねえんでしたお姉サマあ~?中々の見物みものでしたわよお~?}


「(ほへ?)『お姉サマ』?この、どこからどう見ても教会のお偉方の一人の様なこの女性が…パールヴァティあなた様の~?」


{そうですわよ、それにしてもお姉サマ…今頃ご到着とは、あの様な有象無象相手に苦戦を強いられるとは―――}

「何を言っているの、ああ言った手合いの者達は何も上層だけではない―――教会と言う組織に所属する末端の者まで隅々と調べる身にもなってみなさい。」

{それでえ~?―――?}

「怪しい者すら見つけられなかった―――つまり教会はクリアシロね、まあもっともあの子…ヴァニティアヌスをご神体として崇める組織がはずもないのでしょうけれどね。」

いつの間にか―――そう、私の隣りには美女がまた一人…この私の身長(178)よりも長身(190)と見られる―――色白で白金プラティナ・ブロンドの長髪をなびかせ、深い藍の瞳を持ち、[司祭]よりも更なる高位の聖職者服に身を包む美女がいたのだ。

そんな莫迦な―――そんな莫迦な事があってたまるか!?私は[勇者]だ…今は女神パールヴァティ様によってヴェルドラとの対決に水を差された形にはなってはいるが、先刻までは気を張り詰めさせていたのだぞ?!そんな―――そんな私の警戒網を掻い潜り…私の側近くにいると言う事は……

{それよりお姉サマ、趣味悪い―――この娘も先程まではバッチバチにヴリドラちゃんとしのぎを削り合っていたというのに、網の目…蚊も通さぬ程のこまかき目を張り巡らせていたものを、それをあたかかのように側近そばちかくにいるなんて、お蔭でその娘の誇りプライドとやらはズタズタですわよお~?}

「それは、悪かったわね。 それよりあなたの方はどうなの、パールヴァティ。」

{一応は、さき触れとして教会の[司祭]と[大司祭]がお目見えをする段取りは整えていますわ。}

「そう、では早速その場所に行きましょう。」


「(あ、あのパールヴァティ様。)」

{なに、どうしたの。}

「(あの女性は一体?あなた様の事を迷う事無くパールヴァティ様と仰っていた辺り、やはりあの女性も…)」

{ウップス、やっちまいましたね…つい、いつもの慣習クセでいつものように呼んでしまいましたわ、まあここで言ってもいいのですけれども愉しみが半減してしまいますので―――}

なんだか…判った様な判らない様な理屈を述べられ私の疑問としていた事は私が活動の拠点とている町まで持ち越されたのだった。


          * * * * * * * * * *


けれど私のその疑問もすぐに払拭されてしまった、それというのも傷を負っていたヴァヌスが目覚め、私の帰りを待っているかの如く起き上がっていたのだ。 そして開口一番―――

「あのーーーパールヴァティ様?どして伊弉冉イザナミ様までいるんでしょう?私がヴリドラくんから聞いた話しでは随分後―――と、そう解釈していたのですが?」


「(えっ?)伊弉冉イザナミ……様?」

「ええ、あんたの背後に立っているのが【黄泉国よみのくにを支配する女王】と呼ばれている伊弉冉イザナミ様よ。」

「ええっ…と、あのお~~ーーー」


{あらあら悪い子ね、これからじいっくりと―――炙った烏賊のように浸透させていく計画だったのに…}

{お酒の時間にはまだ早いですわよ―――}

{なにか、言いました?}

{いいえ~~空耳きのせいでえーすわあ?}

な…なん……なんだ、この状況?【冥界の女神】エレシュキガル様に始まり【“死”と“破壊”、“復活”と“再生”の神の正妻】パールヴァティ様、更には【黄泉国よみのくにを支配する女王】伊弉冉イザナミ様までえ~?

私を取り巻く状況に環境はどうなっているのだと思っていた処にまた別の思いが頭をよぎってしまった―――そう、傷を負い安静にしていたヴァヌスの開口一番にそれは現れていたのだから。

「な…なあ―――ヴァヌス、気になったことがあるから一つ聞いていいか。」 

「なあに?」

「先程お前は【暴風の真竜ウィルム】ヴリドラの事を“くん”付けで呼んだよな―――随分と親密な関係のようだが?」 

「(…)ごめんなさい、記憶にないわ。」

「たった今言っていたばかりじゃないか!よくもそれで『記憶にない』等と!」 

「変な処で耳聡いもんだな…ええそうです、その通りです、ヴリドラくんとは旧知のあいだ、本来は滅多と顔合わせしないものなのに久々に会ったことでつい話しに花が咲いちゃってね、それに今回の事情を聞けばパールヴァティ様が伊弉冉イザナミ様とあんたの事を観に来るというじゃないの、それに何かのきっかけでもなければあんたは本気を出せない―――だから私は私自身で傷付けたのよ。」

「は、い?その傷…お前自身が傷付けた―――と言うのか?」 

「そうよ、とは言えあまり力を抜いては軽めの傷程度しか付けられない…これってね案外力加減が難しいのよ。」

「だ…だが、ヘレネが―――そう言えばヘレネはどこへ行った?」 

「夜の酒の仕込みがあるからと出て行ったけど?」

してやられてしまった騙された』―――そう思うしかなかった、私達の世界の最強2人の演技によって私はまんまと女神様達の遊興あそびに付き合わされた形となってしまっていたのだ。

本当は怨み言のひとつやふたつは言ってやりたい処なのだが、女神様達が(なぜか)[勇者]に興味を持ってくれたお蔭で私には過ぎた神装武具モノを与えて下された、そこは感謝してもしきれないものなのだろう。


そしてこの後、女神様達がなぜ私達の世界に集結しているのか、知らされるのだった。

{それよりも、思いの外時間に余裕がありましたね、私の想定では際々キワキワだったのですが。}

{お姉サマは常にギリギリで読みますからね、もう少し余裕を見られては―――と思うのですが…}

{“分”単位や“秒”単位で設定しておいた方が逆に余裕を見て行動が出来る―――現に今がなっているでしょう?}

{まあ確かに、とは言えそれも結局は結果論ありき…ですけれどね。}


「あの…失礼ですが先程から何の話しを?」

が本番―――と言う事ですよ、[勇者]フレニィカ。 [英雄]ベレロフォンの方は既に決まっていますがあなたの事を値踏みしている連中は多い…それに値踏みするだけなら良いのですが、値踏みにすら参加せず無料タダさらおうとする不心得者もいるのです。 はその事をヴァニティアヌスから相談を受けましてね、そこでが策を廻らせたのです、幸いヴァニティアヌスの主神はの知り合いでもあるエレキシュガル…彼女にも話しを通し、とパールヴァティで[勇者あなた]を使ようにする―――まあ、[勇者あなた]自身『過ぎた褒美モノ』と思っているようですがを考慮に入れた時必要不可欠なくてはならない代物でもあるのよ。}

』―――?とは…中々に予断を許さない状況にはなりつつあるようだった、それになぜ私だけに『過ぎる褒美モノ』を与えられていた感覚にはなっていたものだったが、やはり何か裏があるようだった―――それを私は 実感していくのだった。





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