第5話 [勇者] 完全/敗北

「私の―――“担当”?」

「そう、“担当”だ。 それに私がお前達限定とはいえここまで正体を晒したのだから説明いうまでもない事だろう、そうだ…この私こそが[英雄]ベレロフォンの補助役サポーター―――」

「一つ質問良いかな、ヴァヌス。」

「なあに。」

「お前がオレの補助役サポーターと言うのならそうなのだろう、だがならばなぜもっと早くに…それとどうして姿なんだ?」

「ずっと観察は続けていた、側近そばちかくにいなくともる事くらいならできる―――だがここ数年状況が変わってきたのだ、お前達には感応かんじないか?ここ近年この世界の魔獣とは違う魔獣ものの存在を。」

「(この世界?ここ近年…)それはもしかすると『守護のけだもの』が言っていた『オピニンクス』なる存在―――」

「やはり覗いていたみたいだな、行儀作法のなってない…」

「(な…)ちょっと待て、あの場には『守護のけだもの』が―――」

「そこは、もう、いい、薄ら勘付いているのだろう?この“私”『守護のけだもの』だと言う事に、だから私はお前の事が嫌いなんだ、勘付いているくせに気付かないをしている―――なんとさかしい事でしょう。」

「おい、ヴァヌス。」

「こう言った機会だからな、きっちりと言うべき事は言わせて頂くぞ、[勇者]フレニィカ、お前にはまだおのが[勇者]だと言う自覚が足らない、確かにお前が我等が主神たるヴァニティアヌスからの啓示によって[勇者]と成った事は認めてあげよう、素質も資質も十分に足りえる処がある…ただお前に足らないのは“経験”のみ、いずれを期待をしてはいたけれど、どうやらこの辺りが潮時みたいだな。」

「潮……時?」

「お前には『魔王ヘルマフロディトス』の討伐の試練が課されているのでしょう?」

「な、なぜその事を……」

「私は“縦”ではなく“横”で繋がっている―――近々お前自身の“担当”の口から魔王の所在が示されるだろう。」

「(!)ちょっと待ってくれ、確かに私は魔王所在の情報を収集していたが、その依頼はヘレネに……まさかなのだが彼女がそうなのか?」


ここ1年、[英雄]ベレロフォンに付きまとうようになった“魔族”の幼生体、その存在は自身が“少女”である事、人語を解さない“魔族”である―――と言うのをいい事に私達の前では不可解な“声”を発していたモノだった、けれどそれですら“騙りみせかけ”…魔族であるはずの幼生体は半分魔族である私と同様に人語を解する存在でもあったのだ、しかも紡ぎ出すその言語は実によどみなく滑らかなるものだった…その事自体を知った時には驚いたものだったが、この魔族の幼生体―――ヴァヌスが語り出した事情は更に私達を驚かせた。 そうこのヴァヌスこそが以前私が故郷であるエルフの里付近で見かけた『守護のけだもの』自身であり、女神の使徒なる存在―――しかも[英雄]ベレロフォンの補助役サポーターでもあるのだと、それに[英雄]に補助役サポーターが付いていると言うのなら無論[勇者]であるこの私にも……すると魔族の幼生体は目を細めながら満足気にこう言うのだ―――


「そう言う事だ、[勇者]フレニィカ。 所在が判ったのなら早速おもむくといい―――そして一度、完全なる敗北を味わうといいわ。」


         * * * * * * * * * *


未だに信じられなかった、酒場『ヘレネス』の女店主マダムヘレネが、私の…[勇者]の補助役サポーターだったなんて―――しかしそう言う事が判ったとて、ようやく私は[勇者]としての使命の一つを果たせるのだ、そう思い『ヘレネス』へと赴いて行った。

「あら、ようこそいらっしゃいませ―――[勇者]フレニィカ様。」

「挨拶はいい、それより聞こうか。」

「はいはい、全く…性急せっかちなんですから、私が仕入れた情報によりますとね―――」

「やはり、お前がそうなのか…」

「(…)はい?何の事でしょう。」 

「お前が、そうなのか!お前が私の補助役サポーター……」

「(……は、あ)全く―――どう言うつもりなのかしら。」

「答えてくれマダム・ヘレネ、お前は―――」

「『緊急事態エマージェンシー』―――とは言え、管轄を越えて手を貸してくれた事…それは感謝しましょう“シギル”、けれどあなたのした事は賢いとは言えないわね、本来の私達の役割は秘密裡に行うべきもの…それを何?己の正体を晒しただけではなく私の事まで吹聴ふいちょうさせるとは。」

「そこは、ごめんなさい―――私、あなたみたいに賢く創造されなかったものだから。」

「言ってなさいよ…それより、魔王の所在はここより北東の方角にある『未開の地』―――そこにふるい時代に栄えて滅んだ主都の古城があるわ、そしてそこは今はこう呼ばれている…『魔王城』と、行ってらしゃい[勇者]フレニィカ、なにより魔王討伐の一報心待ちにしていますわ。」

信じられないながらも心にわだかまっていた部分を吐露してみた、するとヘレネは少々呆れた感じで私に随伴ついてきたヴァヌスに対して辛目の皮肉をいたのだ、そしてこれまで『知らぬ』『存ぜぬ』だったヘレネの口から魔王が所在する地がつまびらかにされた。

この世界に存在したと思われる、歴史の中だけでの存在―――『ベルトシュメルツ王国』、今現在ではヘレネが示してくれた北東にある『未開の地』こそが、その王国の名残りだと言う、それに冒険者達も言っていた、何でもその地は冒険者組合ギルドが設定している難度ランクの中でも最高難度ランクに属するものだと、その語り草となっているのが10年前、ある最高等級ランクの冒険者の徒党PTが彼の地へと赴いたっきり全員が戻ってこなかった…それを契機にその徒党PTが属していた集団クランは衰退し、やがて消滅したと言う…そんな地にそびえ建つ、かつての栄光の語り部こそが[勇者]が討伐しなければならないと言う『[魔王]ヘルマフロディトス』の居城…現在では『魔王城』と呼ばれている。


私は―――[勇者]だ、[勇者]だからこそ一人で何でも出来る。 それは戦闘や冒険での生活など、ありとあらゆる面で器用にこなせる能力スキルが備わっているのだ、それにそう言った事は[英雄]でもある“彼”も同じ事―――私よりも20年も早く[英雄]として立身し、数多くの困難を収め、か弱き生命いのち救済すくってきた、そして私はそんな彼に救済すくわれた経験を持つ。

どうしてか憧憬こがれを抱かない理由があるだろうか、目標としない理由があるだろうか……けれど私が10年後の彼を見た時、彼を取り巻く環境や状況が一変している事に気が付いた。

彼にはいつの間にか【悪堕おちた英雄】と言う悪評レッテルが貼られ、いつしかその傍らには“半人半魔ハーフ”ではない純粋な“魔族”の幼生体がいた、その様子を見るなり私のなかで湧く“沸々フツフツ”とした感情……これは“憎しみ”か?それとも“ねたみ”か―――いずれにしてもそんな感情は[勇者]と成ってしまった今となっては不要なもの…と、そう割り切り、彼に対しては連れない態度を取り続けていた。

その結果がこの“ザマ”である、正体が判明わかった今となっては[英雄]ベレロフォンの補助役サポーターだと言う魔族の幼生体であるヴァヌスから示唆しさされた通り[勇者]の補助役サポーターだと言う酒場『ヘレネス』の女店主マダムヘレネからの情報に従い『魔王城』へとおもむいた……


そう言えば―――気になる事を魔族の幼生体ヴァヌスは言っていた…『そして一度、完全なる敗北を味わうといいわ』と、その一言は私の心に大きく響いていた、そうまるで敗北するのが前提であるかのような……?

確かに私は魔族の幼生体であるヴァヌスの事は嫌っている、なにしろ私が慕っていた彼を独占した様なものなのだから、しかしヴァヌス自身が自身の事をつまびらかにした時、私の溜飲が少しだけ下がった、なにも彼女はベレロフォンを独占する意味で傍らにいるのではない事が判った……が、私は本当の意味でヴァヌスが私に対して発した言葉を理解していなかった。


         * * * * * * * * * *


私は単身ソロで魔王城へと突入をした。 各階層毎に配置されてある魔王の手下達を撃破し、また各階層に張り巡らされている様々な罠を潜り抜け、残すところはあと一人―――[魔王]ヘルマフロディトスを於いて他にはいない……


              だ       が


「ようこそ、魔王城へ。 数々の苦難・困難を乗り越え、この[魔王]ヘルマフロディトスの前に立った事―――それ自体は褒めてつかわそう…[勇者]よ。」


「(……)そんな―――バカな…なぜ、なぜお前がそこにいる?ヘレネ…」


「この、が[魔王]ヘルマフロディトス―――その事実以外の何が必要なのだ、[勇者]よ。」


「だって―――だってお前は……」


「フッ…[魔王]の所在など、私自身が情報の操作を行えば足りる事―――この説明だけでは不足だったかしら?」


私の目の前に立ちはだかっていた―――[勇者]が討伐すべき存在…『[魔王]ヘルマフロディトス』こそが、日々冒険で疲れた心身を癒す為の憩いの場となっていた酒場『ヘレネス』の女店主マダム……だ、と?

私はその事実にあたり、言葉を失っていた―――言葉を失うどころか[勇者]本来の目的すら見失っていた。


「“真実”とは―――時に想定の範疇すら軽く超える事もある。 噛み締めるがいい不都合な“真実”を…そして昨今の伝奇にも記されている事を我もしてみよう。

『我がモノとなれ、[勇者]よ…さすれば世界の半分をお前に与えてやろう―――』」


「[勇者]…が、[魔王お前]のモノに?…断る―――[勇者]には相応しくない私だとしても、その分別くらいは判っている!」


「上出来だよ、[勇者]フレニィカ。 それに特段として気にする必要はない、は…あの文言こそは最早“伝統”的な一戦の前に交わされる言わば定型文テンプレート―――気を揉んだものだよ、有り得べからざる“真実”を前に心が折れ、肯定するものじゃないのかとね。」


「(?)何故だ?何故そうまでして……」


「お前サンが[勇者]で、私が[魔王]―――だからだろうね。 魔王と勇者とは少らからぬ、浅からぬ因縁で結ばれている様なもの…それにそれはこの世界に限っての事じゃない、他の世界でも魔王と勇者とは相容れぬ存在なのさ。」


また更に有り得ぬ事実を突き付けられた時、私は完全に戦意と言うものを失っていた。 ただ、[魔王]ヘルマフロディトスはそんな私に対しても、なんら一切容赦する事はなかった…そして思い起こされる、あの魔族の幼生体の一言―――結局私は、敗北やぶれるべくをしてやぶったと言うべきだったのだ。


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「(う…)ここ―――は…?」


「おや、目覚めたようだな。 硝子ガラスの様な繊細な心の持ち主であるお前が、このままずっと眠りに就いていれは良かったのに。」

「ヴァヌス―――お前、人語で喋る様になってからは容赦がないよな。」

「お褒め預かり光栄だよ、それよりお前、以前よりは“らしく”なってきたじゃないか。」

「おい―――…」

はね、“定番”なのよ。 [勇者]は何処どこかしらで敗北を味わう機会タイミングが到来する、そして一度敗北を味わった[勇者]はその屈辱を糧に奮起をする……おめでとうフレニィカ、これでお前も立派な[勇者]の仲間入りだ。」

「ヤレヤレ…褒めるんだったらもう少しちゃんと褒めてやれよ。」

「私はな、この子の事が嫌いだったんだ。 過去にお前にあやうきを救済すくわれた―――それで憧憬あこがれや慕情を感じたのは善しとしておこう…けれど―――この子の性根にはいつか自分が窮地に陥った時、救済すくいに訪れる存在を願っていた…“甘え”―――とでも言うのだろうな、それを感じた時、私は『あやうい』と思った。 彼には彼の為すべき事がある、私も彼を補助サポートする立場上他の事に気を取られたくはなんだ。」

「だったらなんであの時お前は―――」

「(…)これ以上時間を掛けられない、折角ここまではぐくんできたのに、?そんな事をするくらいなら例えから『お節介焼き』だと皮肉られても介入はさせてもらう。」

「(フッ…)だ、そうだ―――どうやらこいつはお前の事が可愛くて仕方ないらしい、すまんな愛情表現が下手過ぎて。」

「(な゛っ!)バッ、バカな事を言うんじゃないっ!どうして私があいつの担当であるこの子なんかに……」

「へえーーー照れるとそんな風になるんだ、可愛いもんだな。」

「ん゛もうっ―――バガッ!知らないッ!」


気が付くと私は、ベレロフォンの住居の寝床ベッドに寝かされていた、どうやらあの後むべもなく敗北を喫してしまったらしい…そんな私を覗き込むように魔族の幼生体―――ヴァヌスが辛口の皮肉を申し立ててきた。

何と言うか…その、敗北と言う決して浅くはない傷を負った私に対してなんと辛辣な言葉をぶつけてくるものだろうか…とは言え仕方がないか、私とて初見はヴァヌスに対してあまりいい印象は持てなかったからな、そこをヴァヌスはひしと感じ取っていたのだろう…これでお相子と言うヤツか。

それにヴァヌスが私の事を嫌う理由が判って来た、ああそうだな…確かにそうした思いはあった、私の兜が割られて正体が白日の下に晒された時でも、どこか心の片隅でベレロフォンが私の為に駆け付けてくれることを願ったものだ、そして事実として―――暴かれた私の正体の前に紛糾する者達の前に“彼”は現れた……救済すくうべきヒューマンからの悪評があろうとも、それに臆面する事無くかばってくれた…“彼”は別に悪堕おちた訳ではない、ただ救済すくうべき対象の間口を広げただけなのだ、そう…『ヒューマン』から『総ての生きとし生ける者』へと。


しかし……だ、例えそうだとしても思う処は私にもある。 先程から私に対しては痛烈に『(ベレロフォンに)甘えている』と仰られている存在が―――「あの、少しいいだろうか…先程から私に対しての評価が痛烈なようだが、ならばそんな事を言っているはどうなのだ。」

「(ン?)それは私に対して言っているのか。」

「ああそうだとも、先程から大人しく聞いていれば私がベレロフォンに甘えているだと?た、確かにその事自体は否定し難いが…ならばヴァヌスはどうなのだ、私の事を痛烈に批判してくれている傍らでベレロフォンに“抱っこ”をされているでわないかあーーーッ!」

「あら、だって私、外見上みてくれのうえでも“幼生体少女”なんだもん―――甘えるのは少女の特権みたいなものでしょう?」

「納得が行くかあーーーッ!大体どこの世界にはっきりとした発言をする少女がいるのだと…」

「いるじゃなあーい、。」

「怪我人に対して煽るのは感心しないな、ヴァヌス。 それより…フレニィカ、お前ヴァヌスが羨ましいのか、そう言えばお前―――何歳になるんだっけか?」

「今年で18だ―――です…」

「オレもエルフに関してはそう詳しくないから判らんのだが、お前外見上みかけのうえでも“成人”だよな?」

「あ…あのぅ―――そ、それはあ~~~」

「(はあ~あ)それに関しては説明をしておく必要がありそうだな、ベレロフォン―――“彼女”が何者なのかは判るか?」

「うん?確か“ヒューマン”と“エルフ”の混血ハーフ―――」

「そう…だから『ハーフ・エルフ』、ただこうした存在は何もフレニィカに限っての事じゃない、“彼ら”は違う種属の遺伝を引き継ぐ者―――フレニィカの場合は『ヒューマン』と『エルフ』と言う事になるけれどな、そしてご存知の様にエルフは永遠にも近い時間を紡ぐ者…1000歳や2000歳を生きるのはにいる、そしてもう少し言ってしまうと生育は恐ろしく遅い……例えて言うなら、そう―――フレニィカの年の頃合なら丁度今の私と同じと言った具合だな。」

「(『』―――?!)で…では私は―――…」

「そう、お前はエルフの姿はしていても彼らとは一緒に生きられない、お前の父親であるギュエフスよりも短命で終わるでしょう。 、お前は父親からの愛情を失ってしまった―――例えそれが我等が主神の思し召しであったとしてもだ。」

「(ン?)それはどう言う事だ、今のオレにはフレニィカは意図して創造つくられたと―――」

「その通りだ…ベレロフォン、この子はある意図をしてヒューマンとエルフを掛け合わせて産ませた結果なのさ。」

少し私がヴァヌスに対しての嫉妬や羨望を露わにさせた処で思いもよらない意趣返しがあった、そうだ―――私は『ハーフ・エルフ』、『ヒューマン』と『エルフ』の特徴を持ち合わせる者…けれど今のヴァヌスからの説明にもあったように、どうも私はエルフの容姿を持ち合わせながらも中身は殆どヒューマンと変わらないのだと言う。 それで納得が行くような気がした、私の父はエルフで名を『ギュエフス』と言う、その父からは何度となく失意とあざけりとさげすみの視線を投げかけられた事がある、そうした事は幼心おさなごころであったとしても敏感に感じてはいた、『ああ私は父からは愛されていないのだ』と…だからなのだろうか―――?私がヒューマンとエルフの両方から排斥されようとしていても救済すくいの手を差し伸べなかったのは。

しかしそれであったとしても妙に思う部分があった、そうヴァヌスの発言がそうなのだとすれば……

「なあ、ヴァヌス一つ聞いていいか。」

「なあに。」

「先程お前は―――『ただこうした存在は何もフレニィカに限っての事じゃない。』と言っていたな、と言う事はあれか?フレニィカ以外にも…」

「フ・フ―――その事に気が付いたようだな、そう…フレニィカは単なる“モデルケース”の一つでしかない、ようく考えてみるがいい、種属ごとの“優性”を抜きん出し、と言う事を。」

「それで私が?だがどうして……」

「エルフの優性は“敏捷さ”“賢明・聡明さ”“保有魔力量”そして“永遠に近い時を紡げる”…そしてヒューマンは現存する種の中では能力的に劣りがちだけれど、にはない“想像力”と言うものがある―――そこを見込んでお前の父親とヒューマンの女性を掛け合わせたのだけれど…無情な事を言うようだけれど時間と言うのは無限ではないんだよ。」

「そう言えば先程もそんな事をほのめかしていたな、どうしてそんなに急ぐ必要があるんだ。」

「フレニィカにはそこの処は心当たりがあるのじゃないのか、なにしろ私の役目を覗き見していたんだから。」

「(あ…)そう言えば、『守護のけだもの』―――」

「そう…私の役目―――あの時私が対峙していたのは、この世界のどこを探しても見つかりはしない未知の存在…の間では『侵略者インベイダー』とも呼んでいる。」

「(う、ん?)『侵略』?それに『この世界のどこを探しても見つからない』だと?それって……」

「(フ)そう、この世界は有史よりも以前から侵略をされていた、女神ヴァニティアヌスがお創造つくり給うたユニットが余りにも優秀すぎたが為に。」

「『ユニット』?それはどう言う事だ、それではまるで―――」

、私が説明いってあげられる事はここまでだな。 それよりフレニィカお前はこんな事にこだわっている暇はないんじゃないのか、無敗であるはずの[勇者]様が、一度たりとて魔王に敗北を喫してしまったのだからな。」

「そ……それは判っているぅ~それよりもだな、私が討伐をしなくてはならないのがヘレネだったなんて……」

「おや、なんてお優しい[勇者]様もいたものでしょう。 いいかフレニィカ、例えお前がに引け目を感じていたとしてもこれだけは最低限やっておかなければならない事なんだ、それにこのままずるずると引け目だけを感じて事態を引き延ばすようならば…最悪処分を検討しないといけないかもな。」

「“処分”て―――お前なあ…」

「仕方がないだろう、不良品を出すくらいならまた“一”からの見直しも考えないと、それにどの道フレニィカがこの程度の使命も果たせられないのなら女神ヴァニティアヌス様の評価も下がる事だろうからな。」

厳しい事を言われてしまった。 所詮私なんぞはヴァヌスからしてみればただの“甘ったれ”なのだろう、今回私が[魔王]ヘルマフロディトスに敗北を喫してしまった所為せいと言うのも、[魔王]の正体が既知でもあるヘレネだったからに他ならない、だとしても―――私が[勇者]でヘレネが[魔王]だったというだけの話しで、私がそこで躊躇ちゅうちょするいわれもないのだ。

魔族の幼生体ヴァヌス、彼女はよく観察みていた…私と言う人物像を、負けず嫌いな処がありなからもどこか甘ったれてもいる、そこを彼女は皮肉るのだろう『覚悟が足らない』と…確かにそうだ、勇者と魔王との一戦は最早“伝統的”とさえ言われている、悪しき魔族の代表である魔王を、正義の味方である勇者が討伐する―――その事実だけで何本もの物語が描かれてきただろうか、私も[勇者][魔王]ヘルマフロディトスを討伐しなければならない、しかしその正体が知り合いだったからだとて躊躇ちゅうちょ―――いや後悔を覚えてはならない。


それに…“私”が[勇者]である限り、『[魔王]討伐』は避けてはいられない宿命のようなものでもあるのだ。





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