第3話 割られた仮面
「おっ、開いてたなあ…邪魔するよーーーて、お前…」
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⦅―――どう言うつもりなの?“シギル”…⦆
⦅こうした形での接触は、私も好ましく思ってはいない…だが“ハガル”―――少し問題が起きた⦆
⦅問題―――?一体何が…⦆
⦅『
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「あら、ベレさんお久しぶり―――と言うよりその子はどうしたの?」
「ん~~~?急に外へ出たいってせがむもんでなあーーーけど、昨日の今日だろう、あんまし目立ちたくはなかったんだがなあ。 それにしても、お堅い事で有名な[勇者]様が、陽も高い内から酒場―――に、ねえ…」
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⦅なるほど―――事情はよく判ったわ…それにしても関心はしないわね、こんな危険を伴う行動を…⦆
⦅言っておくけれど、私は報告をしに来たのじゃないわ、これは通告…かの
⦅―――了解。 判ったけれど、あまり目立ち過ぎちゃダメよ。⦆
⦅判っている。 それにこの私が対処するのだから他の端末にもよく言い聞かせておいて頂戴、呉々も巻き込まれないように―――と…⦆
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この会話は、丁度その場にいた[英雄]や[勇者]の耳には届いていない…いわば意識の外で交わされた言葉、そうその場にはヒューマンと魔族の幼生体しかいない…ながらも、高度な意思の疎通を交わせる者が少なくとも2人いる―――と、言う事実。
それに“シギル”と呼ばれた個体が“ハガル”と呼んだ個体に
夜半―――
* * * * * * * * * *
同じ頃、ベレロフォンは難しい顔をしていました。 なぜか―――? それは自分が保護をしていた対象―――魔族の幼生体であるヴァヌスがいない…
なぜ―――どうして―――?妙な胸騒ぎを覚えてヴァヌスの寝床を確認しにきてみれば
「(いや―――それは有り得ない…夜の世界がいかに危険なのかはヴァヌスも知っているはず……)」
彼は、心配しました―――まるで我が娘の様に、その安否を……
けれど見つからない―――
「ヴァヌス!今まで一体どこに!?」 「ガァ…グァ……ヴォ―――」
見てみれば足は泥だらけ、それに手も…有り得ていないことが起こり得てしまった、そう―――『外に』…けれどベレロフォンは怒鳴ったりはしませんでした、責めたりもしませんでした。 ただ―――優しく抱擁をしただけ…
「ああ…良かった、心配したもんだったぞ。」 「グゥオ…ヴォ……ヴォオオオ゛オ゛ーーー!」
思いがけずも心配をさせてしまったことに悪びれをしたものか魔族の
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⦅フッ―――フ・フ・フ・フ・フ…⦆
⦅何がおかしい。⦆
⦅別に?あなたにも意外に可愛らしい一面があったものだと感心しているのよ、“シギル”。⦆
⦅仕方がないでしょう、今までは帰ってくるまで起きなかった人が、目覚めてて私を探していたんですもの。⦆
⦅だからこそよ、私達の女神の権能の8割方を持つあなたが、声を上げて
⦅うるさい―――それよりそちらはどうなの?見ている限りでは進展はなさそうだけど。⦆
⦅そろそろよ、まあとは言っても“きっかけ”は欲しいわね、そこで相談なんだけど―――⦆
⦅私に協力を?高くつくわよ。⦆
⦅ありがとう―――それにしても可愛い寝顔ね♡⦆
⦅うるさいっ―――!⦆
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その一方で、奇妙なある噂が立ち上り始めたのもこの頃からでした。 なんでも冒険者達の言うのには……
「なあ知ってるか、ここんとこ夜の森が騒がしいって事を。」 「ああ耳にしたことはあるが―――森かあ…」 「だな、森と言やあ魔族のエルフだが、奴さん達もいよいよ―――って事なのかあ?」
あらぬところで立ち上り始めた“
するとその事で意外な反応を見せたのは……
―――何を―――考えている?!今エルフが蜂起したところで利はないはず…確かにヒューマンとエルフとの仲は良好とは言い難いが、だからと言って直接的な行動に出てどうしようと言うのだ!?―――
その反応こそ、『人類最後の希望』……[勇者]フレニィカのものでした。
それにしても不思議なものでした、ヒューマンの言語を
その疑問はフレニィカの
それよりも、彼女は彼女自身の疑問を払拭させるためにある行動に出ていました。 そう―――
―――これは……酷い!?しかし判らなくなってきた―――エルフは生来から森を愛する民だと位置づけられてきた…なのに、まるで森を破壊するかのような行動を取るとは!?―――
確かにその場所には何かがあったかの痕跡が確認されました。 大きく
―――そうだよな…“噂”―――単なる“噂”だ、エルフがここまでの事をする事はまずない、それに私が見立てた処、これは“狩り”だ―――それも大型魔獣同士の…その事を想定すればここまでの惨状は理解できる…―――
おかしな事と言えば、フレニィカは妙にエルフには理解力がありました。 人々が―――ヒューマン達が口を揃えて言っている『エルフの行動』とは全く別の方向からの見方、けれどもそれはそうでなければならない話し……しかしフレニィカはヒューマンの言語を…『人語』を
出来は―――したのですが…有り得ない事態にも遭遇してしまった…
フレニィカが
―――なんだ……これは!今まで経験した事のないような危険性?どうしてこんな場所で災害級の脅威が?!―――
『災害級の脅威』―――それは、ドラゴンやその他の大型魔獣のみが醸し出す雰囲気と同等な危険性を醸し出している化け物が近くにいる…と言う事の証明にもなり得ていました。
それにしても有り得なかった、未熟とは言え[勇者]である自分と[英雄]である彼が近くにいると言うのに…それにどれくらいの脅威であるのかを知っておく必要がある、知って“いる”と“いない”とではその対処の初動から違ってしまうのだから、だから今回は“視る”だけ―――悔しいが今の自分では対処しきれるかも疑わしい…そうした事を
しかしそこで視てしまったものとは―――
―――な―――何なんだ…あれは!美しいながらにも畏敬すら感じる…そう言えば私の父さまも言っていた事がある、森が騒がしくなる時分には神の力を宿せし獣が
フレニィカがその頭の中で思考を巡らせている時、動きがありました。 そう、警戒をしている『守護の
{フッーーーフフフ、探しましたよ『オピニンクス』、同胞を多く失ったがゆえの戦略的撤退―――見事な判断でしたが…このままではおちおち戻れもしませんからね、ええその事は判りますよ、お前のその首一つで収まる範疇ではなくなりましたから…だとて、我等が女神がお
“絶叫”をさせないためにもまずその
―――それにしてもよく似ている、あの現場と…それに気になる事も言っていた、あの魔獣…『守護の
そうした疑問で悩んでいる時―――彼の『守護の
―――はああ~~~取り敢えずは助かったか、それにしても似ていたな…あの表情…いかんな変な詮索に覗き見も、お蔭で寿命が縮まったものだ―――
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⦅フッフフ~~ン♪⦆
⦅なに―――⦆
⦅あなたも隅に置けないわねえ~?“シギル”⦆
⦅だから、なんなの。⦆
⦅“彼女”の事よ、覗き見してたの判っていたんでしょう。⦆
⦅仕方がないでしょう、だってあいつ、あの場にいたんだもの。⦆
⦅いたとしても、あなたならどうにでも出来たでしょう?⦆
⦅はあ…これだから“現場”を知らないお偉いさんは―――いい、あの現場の近くには何があるのか判っているのかしら?⦆
⦅エルフの里だけど―――なんか連れない言い草じやない、それに責任者を取り逃がしたのはどこの誰でしたかしらね。⦆
⦅“私”ですよ“私”!そこは謝るわ―――だけど[勇者]の管理はあなたでしょう!“ハガル”!⦆
⦅その辺にしておきたまえ“シギル”に“ハガル”。⦆
⦅ごめんなさい―――“ギエフス”⦆
⦅それより、自慢の娘さんの事なのだけれどね。⦆
⦅皮肉を言うにしてもそれくらいにしておいたらどうだ“ハガル”、確かにあれは私の身から出た錆だ―――若気の至りと言うヤツだ、しかしそれを知ってか我等が女神が認めてしまったのだ、私如きが意見した処でどうなる事もない。 それよりも、だ、“シギル”当たった感触としてはどうなのだ。⦆
⦅一応は、警告の意味くらいにはなったんじゃないかしら。 二度とバカな真似をしようとは思わないくらいまでにはね。⦆
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ここは再びの『意識の狭間』―――そこには
そう―――『エルフ』、この世界では“魔族”の一種属、そして“人類族”の敵対者、その三者三様が今回あった出来事について各々の自論を申し立てていました。
中でも“ハガル”はどこか“シギル”を
『身から出た錆』―――?『若気の至り』―――?いずれにしてもこの言葉自体がある存在の言及にもなっていたのです。
それにしても、この三者三様が会していたのは何の為に?
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⦅随分と話し合わなければならない議題とは離れてしまったけれど、状況の進捗としてはどうなのかしら。⦆
⦅概ね予定通りと言う処よ、多少の邪魔は入って来たけれどね。⦆
⦅“ベイダー”…何処の手の者だったのだ。⦆
⦅正直に話すと、『判らない』…混在していたからね。⦆
⦅それほどまでにこの世界を我がモノにする―――と言う
⦅おい“ハガル”⦆
⦅だってそうでしょう、この世界を我がモノに―――その
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重要な事が、そこでは話されました。 まず一つ目がこの世界を“我がモノ”―――侵略しようと
そしてこの“ハガル”こそが、[勇者]フレニィカが討伐さねばならないと言う『魔王ヘルマフロディトス』……“破壊”や“崩壊”を意味すると言う―――
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そしてこの頃より世界に異変が蔓延しだしたのでした。
その顕著な例が『オーク』や『オーガ』と言った凶悪な魔族や『ゴブリン』や『コボルト』などの敵性亜人が各地で蜂起、“人類族”の町や村を襲うと言う事例が頻発してきたのです。
これまでも、そうした事例が『なかった』―――とまでは言いませんが、ここ連日で頻発するような事態ではなかった。
これまでは、『あった』としても日を置いて―――でしたが、それがここ連日は毎日のように…そう、毎日―――今日襲われている村があったとしても明日はどこかの町でも
ただ、この世界での『ヒューマンの希望』としての一翼である[英雄]は、動きませんでした。
なぜ―――?どうして―――?それは明確にして明瞭、[英雄]ベレロフォンが自己の裁量・判断により救った生命が『ヒューマンではない』そのたった一つの事で救うべきヒューマン《存在》から唾棄され、
自分を育ててくれた
[英雄]は、語らじとも既に行動に移している―――とすれば、その責務はもう一つに寄せられるのも無理のない話し。
* * * * * * * * * *
こうした事を受けて[勇者]フレニィカはある村を訪れていました、悪しき者達が襲って来なければ、恵まれた水源に土地―――豊饒を約束された森がある村…そこを悪しき者達―――『オーク』や『オーガ』、『ゴブリン』や『コボルト』が襲い来る、
故にこそ、
その襲撃によってほとんどの村人達の生命が散らされて逝きました。 そしてこうした時に…絶望が蔓延した時に、
その、祈りが天に通じたか
『私が来たからには安心を、そして悪しき者共よ覚悟するがいい!』
満を持して現れたのは[勇者]フレニィカでした。 彼女自身は自分こそが救済の
しかし―――哀しいかな…彼女は紛う事なき[勇者]ではありました、が…いかんせん経験不足、彼女の事を悪しざまに言うつもりはありませんが、彼女が今まで相手にしてきたのは…彼女より
それに、落ち度としてはフレニィカの方にもありました。 確かに彼女は強かった、並の冒険者と比べても劣らぬ
しかし―――フレニィカにはそう言った傾向は今までの一度すらありませんでした。 何故か、
『[勇者]様はお強いから、脆弱な自分達とは組めない―――例え組んだとしても足手まといになるからと、思っていなさるに違いない……』
けれど、真相はそうではない―――彼女は怖かった…ただ、ただ怖かった。 純粋なヒューマンではない自分が、夢枕とは言え女神からの啓示を受けて成ったなどと、口が割けようとも言ってはならない…自分の正体が
ただ無常なのは、彼女の“想い”がどうであろうとも、割られてしまうものは割られてしまう―――フレニィカは善戦をしましたが、それだけ…無情にも彼女が装備していたミスリル合金のフルフェイス・ヘルメット
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