第2話 半端者
⦅“シギル”より“ハガル”へ―――報告、予定通り対象に対し試練を負荷、試練のクリアを確認⦆
⦅あら―――これは珍しい、まさかあなたが直接私に報告など…⦆
⦅御託は、いい―――それより我等が主神に次第の報告を⦆
⦅はいはい―――判っているわよ、“シギル”…それよりまだ報告するのがあるのじゃなくて?⦆
⦅何を…言っている―――⦆
⦅私如きが意見する立場じゃないのだけれど…確かいたわよね、その同じ現場に不要な存在が⦆
⦅ああ…“彼女”の事?まさか同じ町にいたなんて―――監視部はなにをしていたんだか⦆
⦅彼らは彼らで、己の使命を全うしていたわよ?ええそれはもう……⦆
⦅だとしたらどうして!あの場に―――⦆
⦅けれど、そのお蔭で後の進行は滑らかになった…違わなくて?⦆
⦅(…)―――以上を
その場所は『意識の狭間』と呼ばれる場所―――そんな場所で人類族としての特徴を持たない
それにしても―――“試練”とは何だろうか、“負荷”とは…?
* * * * * * * * * *
そしてまた―――オレの一日が始まる…何の意味もない、無駄な一日が。
オレは―――[英雄]であるオレは、育ての親から[英雄]や[勇者]はこうあるべきだと教えられて育ってきた、それは本当に基本的な事で『他人の困るような事はしてはいけない』―――から、『困っている他人がいたら率先して手助けをしてやる』等々、そんな育ての親の教育を基にオレの[英雄]としての矜持の基盤は固められ、教え通りに困っている他人達を手助けしてきた事でオレの[英雄]としての名声は上がっていった。
…が―――ここの処オレを取り巻く世情とやらはオレの方には向いていない、その原因としては判っている―――そう、人類族ではない魔族の
―――{敢えての説明が必要ですか?
ああ言っていたのはこうなる事を見据えていたからなのか?
全く……ああ、全くだよ―――総て見透かされていたんだ、オレがまた未成熟者の様に甘えて来ることを、全く
「…ウーーー。 ア?アァ~~。」
「ははっ―――悪ぃ、起こしちまったな。 昨日は大変だったな、だからまだゆっくり寝てていいぞ。」
「アァ、ア? ウ~~アーーー。」
オレの傍らでぐっすり眠るヴァヌスだったが、オレの余計な所動作の所為で目覚めちまったみたいだ、だからオレがいくら言って聞かせた処で従う訳ではなく……
「ん~~~?どうした―――手伝いたいってのか?それじゃこいつを頼もうかな。」
「アァ!ウゥ~~~アァア!」
未だに、何を言っているのか判らない―――判らないが一緒に暮らす過程でなにがしたいかの意思は
「アア~~…ウッ、ウッ、ウオォォーーー!」
「ああ、失敗しちまったなあ。 まあ仕方ない、そう言う事もあるさ。」
こうした光景を見さされ―――ふと、女神ヴァニティアヌスと一緒に暮らしていた頃の事を思い出す、あの頃のオレもただ育ての親である
「あらら、私の食器を壊しちゃったのね。 でも大丈夫、あなたが責任を感じる事ではないわ、だって形あるモノはいつかは壊れる…それは生命ある者でも同じ事―――それが“自然”であろうとも“不自然”であろうとも誰しもが逃れ得ぬ
オレが失敗をした時も、あの
―――――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――――
⦅対象の“善行”値上昇―――と共に“混沌”値も上昇…以降の観察を続行する⦆
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この世界を説明する時に、私達の様な[勇者]や[英雄]―――だけではない、人類族に対しての最大の脅威にして不倶戴天の敵、魔族…その魔族には王たる者も、いる―――そう想像に
特徴としては―――菫紫の髪に銀の瞳…並の男性なら瞬間的に
私達の目下の目的が魔王ヘルマフロディトスを討伐し、世間の不安を排除する―――と言ったものなのだが、その存在性以外の情報が中々入手できない…しかし、出来ないからと言って手を
「あら…どなたかと思いましたら―――こんな陽も高い内から我が『ヘレネス』にようこそ、[勇者]フレニィカ様。」
彼女こそはこの町にある酒場―――『ヘレネス』の
「あらあら、ウフフフ……仕事熱心はなによりですけれども、ならばあなた様もわたくしにお仕事をさせて下さいませ。」
『おかしな事を―――あなたの仕事とは客に酒を提供するものなのだろう、それを私に…』
「ン・フフフ―――相も変わらずお堅いです事、ですけれどそんなあなた様のお蔭でわたくし達は平穏無事に暮らせている…その事は感謝しきりでございますよ。 さて―――とは言え、本題に入らさせて頂きますと…“ない”ものは“ない”のです、悪しからず。」
むう…やはり無駄足だったか―――しかもこれで7軒目…未だ魔王の存在性だけは確認されてはいても、その情報が全く入ってこないと言うのは……果てさてどうしたものか―――
「おっ、開いてたなあ…邪魔するよーーーて、お前…」
「あら、ベレさんお久しぶり―――と言うよりその子はどうしたの?」
「ん~~~?急に外へ出たいってせがむもんでなあーーーけど、昨日の今日だろう、あんまし目立ちたくはなかったんだがなあ。」
げ、ベレロフォン…今会いたくないヤツなのに、こういう時に限って―――って
「それにしても、お堅い事で有名な[勇者]様が、陽も高い内から酒場―――に、ねえ…」
『お前のその妄想をブチ壊す訳ではないが、何も私は飲酒目的でここを訪れたのではない。』
「はいはい―――そう言う事にしときましょうよ、それよりヘレネ、なにかこの子の口に見合うモノを作ってくれないか。」
『(!)え…いや、ちょっと待て!昨日私は見てしまったぞ―――その“少女”の外見を…なのに!?』
「その事情を話してやったところでお前には関係ない―――それにこれは警告だ…これ以上首を突っ込むな。」
『しかし―――お前は!』
「
『だが…それでは―――ッッ!』
「一つだけ言っとくぞ…フレニィカ、オレはなあ
一つの信念を
私を
私は―――“異端”だ…それは私の種属から見ても、“人類族”から見ても……だからそれ故迫害の対象にもなり得ていた、そうした私の
私は“魔族”でもなければ“人類族”でもない―――寧ろその両方……故にこそ、どちらの大人達からも目を付けられていた、つまりはそう…私がベレロフォンから救い出されたのはそうした大人達の
「ではギュエフス父さま、行って参ります。 そしてもう生きて二度とこの地には足を踏み入れる事はないでしょう。」
「フレニィカ―――
そして私はその種属的特徴を隠す為、頭部を覆い隠すフルフェイス・ヘルメット
だが―――10年の月日は私にとっては余りにも隔たりがあり、そして長いと言わざるを得なかった、私の種属は10年の月日なんて経つか経たないかくらいの感覚でしかないのに、私にとっては10年は余りにも長過ぎた…私が彼に
私の所為で…そんな不釣合いな―――不名誉な
私の醜さ故に―――私ではなく“魔族”の
* * * * * * * * * *
「女神ヴァニティアヌスよ…お一つお教え願いたい、何故私如きが[勇者]の役割を…」
{(…)[英雄]である“カレ”にはある役割を担ってもらっています。 これから“カレ”には様々な試練が待ち受けている事でしょう、苦難が待ち受けている事でしょう、ですがその事自体が
「ならば尚の事判らない!だって私は……」
{だからこそ、です―――フレニィカ。 だからこそ
無情にして冷淡なる
{あの子ならば、必ずや成し遂げてくれる事でしょう…この
けれどそれだけではまだ足らない―――だからこそ故、更なる試練を与えたのです。 そして
「(!)で―――では、あの“魔族”の
{フレニィカ―――成ったばかりの
『魔王ヘルマフロディトス』、私も武を鍛えてきて10年来その名くらいは聞き及んでいる―――そんな存在…未だはっきりとした存在性は確認はされないまでも、存在している確認だけは取れていると言う不明瞭な存在、そんな存在を討伐しろと女神ヴァニティアヌスは
―――――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――〈・〉―――――
{聞こえていましたね、“ハガル”。}
「ええお近くで…それにしてもあなた様も酷い事を仰せになられる。」
{何がですか。}
「ここ数千年来、最初の試練すら突破しえた[勇者]は居りませんでした…それを“魔族”と“人類族”の―――」
{“ハガル”―――}
「これは失礼を…別にあなた様の選定眼を疑ったワケではないのですが、これまでの試練の失敗の教訓を生かし、純粋なるヒューマンでは
{あらゆる世界の―――あらゆる文献には、そうした者こそが相応しかろう…と、その一念でこれまではそうしてきましたが、
「言われるまでも…そして必ずや主神であるあなた様のご期待に沿える働きをご覧に入れましょう。」
この程[勇者]となったフレニィカが去った後、その場には啓示を与えたヴァニティアヌスと、彼女の使徒である“ハガル”が意思を
それにしても『“ハガル”』―――このお話しの冒頭部分で登場してきた存在…とは、どこか違う様な?それもそのはず―――このお話しの冒頭部分ではどこかしら女性的な感じのする話し方をしていたのに、先ほど女神ヴァニティアヌスと話し込んでいたのはどことなく男性的な……?
そして女神は使徒に
そして説明しておかなければならないのは、この世界は女神ヴァニティアヌスの手によって創造された……ものの、その大きな流れとしては
* * * * * * * * * *
「お帰りなさい“ハガル”、その様子だと女神からの
「ああ、正直頭の痛い話しだが、私一人がお諫めしたところでどうにもならん、それよりも“シギル”お前の方はどうなのだ。」
「ここ最近接触したばかりなのよ、感触の方を聞かれても―――ね。」
「それでも判ることくらいはあるだろう、お前が配下の“
「最初の接触は、良好―――噂に
「中々に―――
「なんて事を……私達“魔族”と“人類族”とは決して
「そうした希望的観測は最早言うべきではない、起こり得るものが起こり得てしまったのだ、喩えそれが女神の思し召しであろうが、あるまいが…な。」
「な―――バカな!では女神は…」
「だが、もう賽は振られてしまったのだ、結果としての
「―――了解した…今一つ気が乗らない部分があるけれど主命には従うわ。」
「ならばこれより統括としての指令を申し渡す。 “ギエフ”よお前は[英雄]の監視と動向を探り斯くあるべき導きを行うよう、そして逐次の報告を怠るな。」
ここは、いわゆるところの『
それこそがこのお話しの冒頭にも出てきた『ヒューマンの特徴を持たない肌の質感と色…頭部には有り得もしない角…一部だけ発達した牙…人類のモノではない魔族特有の瞳を有した存在』と『菫紫の髪に銀の瞳…女性的な特徴を持ち合わせながらも男性的な特徴を持ち合わせる存在』だった、だけど彼らは言う―――『女神』と…そう、彼らこそは女神ヴァニティアヌスの使徒である“シギル”と“ハガル”だったのです。
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