B・C・S(ブレイブ・チャンピオン・ストーリー)
はじかみ
第1話 [英雄]が悪堕(おち)た経緯
[勇者]―――[英雄]―――その“語り”としては様々あるものの、
しかし、ここに一人の[英雄]がいる、彼の名は『ベレロフォン』、一応“人類族”のヒューマンで[英雄]ではあるのだが…誰一人として彼の事を認めてはいない、何故なら―――彼こそは[英雄]でありながら“悪徳を好む者”【
何故彼は好き好んで悪徳を好むようになってしまったのか、何故本来ならば善行を行わなければならないのに悪行を―――悪業を行えるのか…
何故……彼は……人類族を救済する事から目を
ただ、その謎を解く鍵の一つとしてもう一つの『人類族の希望』―――そう、[勇者]である。 こちらの存在は
一体何故なのであろうか……?
しかしながら“彼女”は[勇者]としての本分を発揮していました、
この世界には様々なる“生きとし生けるもの”が存在をしていました、その中でも“人類族”―――ヒューマンや獣人、亜人の一方で、魔人やエルフ、
* * * * * * * * * *
―――ヤレヤレ…今日もまた、無駄な一日が始まりやがったか―――
このぼやきから彼の一日は始まる、それにしても何故彼は―――且つての[英雄]は何もかもを諦めたかのような言動から一日を始めなければならないのか、それはまた彼の過去にも起因していたと言わざるを得なかったでしょう。
彼は―――ベレロフォンは、その始まりから【
『ベレロフォン―――随分なご身分だな、この日の高い内から無頼を
「―――フン、どなたかと思いきや『フレニィカ』さんじゃございませんか、しかしまあ…よく真面目に働けるもんですなあ、まさにあんたこそヒューマンの
ある時、偶然にも[英雄]と[勇者]が鉢合わせとなってしまった、そしてそこで両者の皮肉が飛び交う―――[勇者]は[英雄]が放り投げた役割の尻拭いをさせられているそのことについて、その一方で[英雄]は[勇者]の事を
―――変わってしまったな、ベレロフォン…私の知っている且つてのお前は、
[勇者]は―――フレニィカは、過去のベレロフォンの生き様を知っていました。 今の自分の役割の総てを彼が一手に引き受けていた、違う種属ではありながらも自分の
そしてフレニィカが成人し、生まれ故郷を後にした時―――変わり、果ててしまった姿を見るにつけ…
―――な、なにが…何が彼の身に起きてしまったのだ?過去には私の事を…******である私の事を救ってくれた彼が、[英雄]としての役割を放棄してしまったのだ?―――
“彼女”にしてみれば―――フレニィカにしてみればとても信じ難い光景、且つては“人類”ではない自分を救ってくれた[英雄]が、何処かで消え逝く定めの“生きとし生けるもの”を救わなくなっていた―――その事実は余りにも衝撃的で成人に成って間もないフレニィカには相当
そうした事実を受け止められずに宿泊先の寝台で枕を濡らし寝付いてしまった時、“彼女”の夢枕に立った存在が………
* * * * * * * * * *
「あなたは…一体?」
{
「その神が―――私に何を?何…を……」
{フレニィカ―――
「何故―――何故私が?私は******…『人類族最後の希望』であり『人類族の良心』と言える存在が、どうして人類族ではない私なんかに?!」
{それは違いますよ、フレニィカ―――確かに
「私…が―――?判りません…何故そのような大役を―――」
{『判らない』…そう言っている
「そんな!私―――…」
{何故なら
その存在こそ、この世界を創造した『創世神』なる存在―――『女神』…その女神が私の事を眼下に見据え、有り得もしない事を
これから私は[勇者]としての役割を全うしなければならないと言う…それにしてもどうして―――?どうして私なんかが『人類族最後の希望』としての役割を、『人類族最後の良心』としての役割を、『人類族最強の防波堤』としての役割を……
“人類族”―――“人類族”―――“人類族”……どうして人類族ではない私が、その
ただ、女神の言っていた事は的外れなどではなかった、そう…私は純粋な人類族ではないだけ―――だけどこの世界の歴史に於いて純粋な人類族ではない存在が[勇者]や[英雄]に成った前例はない、そうした事を踏まえた上で反論をしたものの女神からは無情な一言で宣下されてしまった。
まさに皮肉だった―――私は…私は、過去に
そして知る―――いつしか彼の傍らには一人の少女がいる事を…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この少女の事について少しばかり説明しなければならないだろう。 こいつの名は『ヴァヌス』、残念だが“人類族”ではない、もう少し突っ込んだ話しをするならヴァヌスは明確な“魔族”だ、そしてこう言っておかなければならないだろう…“魔族”はオレ達“人類族”に対しての不倶戴天の敵―――どうあっても
いや―――同居をしていると言うより保護をしている…と言った方が早いだろうか、『それにしてもどうして』―――と、お思いのヤツもいるだろうが、これはオレが[英雄]だからこその
それに……なんて言っていいのか―――言葉と言葉は通じ合わないから面倒事だと思ってはいたが、ヴァヌスは言葉が通じないなりに態度でぶつけてくる、そうオレに『生命を
オレの育ての親からは口酸っぱく言われたものだった、『“人類族”と“魔族”とは
オレの育ての親―――それこそ……
* * * * * * * * * *
オレは『
けれどオレは、オレが分別がつくようになるまで育ててもらった人が、この世界を創造した女神だとは露ほども知らずにいた。 オレを拾って育ててくれたこの
「あなたの
その一言がオレを真実を知るのに至らしめさせた―――オレを
そんな中、オレは一人の少女を―――“人類族”ではない『ヴァヌス』を、その生命を
オレが“人類族”ではない存在を救ったのはこれで二度目だ、ただ―――最初はギリギリ“人類族”だったからどうにか弁解は出来ていたが、それでもトラブルの火種になっていたことは否めなかった。 だが今回ばかりは事情が違う―――そう、“人類族”の要素が全くない…完全な“魔族”の
だが、残念な事にヴァヌスは“魔族”だ―――オレ達“人類族”と敵対をする不倶戴天の敵だ、それに
{そう―――ではやはり
「ああその通りだ。 だが聞いてくれ、あいつはオレ達と同じ様な人類族じゃない―――だとしたらこれから一体どうすれば…!」
{(…)悩む必要はありませんベレロフォン―――
「だが―――!」
{
オレはこの時の女神の一言により明確に判ってしまった…何故『女神ヴァニティアヌス』が『ヴァヌス』なる“魔族”の
{その考えは他の者達なら“アリ”ですが、
「(ッく!)バカな―――何故です!」
{その説明も、
「なあ、あんたはオレに何をどうさせたいと……」
{敢えての説明が必要ですか?
厳しい…方だ―――そう思うしかなかった。 オレがその衝動のままに救ってしまった存在…それこそオレ達“人類族”と敵対する“魔族”―――の、
このオレの目の前で―――[英雄]であるオレの目の前で
それが“衝動”―――それこそが“衝動”…
この事実が知られる前に、その場にいた“魔族”は
そこからだった、オレが
その本来の存在ならば憎しみ合うしかないと思われたオレ“達”だったが、
「……ゥ。 ……ウ? ウ~~~。」
「ほらほらどうした、何だこいつが欲しいのか―――ほらよ。」
ただ―――こんな日常は長く続かないと言うのは、世の
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その“きっかけ”としては、やはり……オレの不注意からだったろうか。
ある日、備蓄していた食糧やらが尽きかけていた事もあり、その買出しに町へと出掛けようとしていた処に。
「ウーーーウ・ゥ~~~…ウウーーー!」
「なんだ?どうした、オレがこのまま帰らないと思っちまったのか?」
「ウ…ウ・ゥ―――…」
「―――ッハハハ!心配するなお前を置いてどこか遠くに行っちまうことなんてありゃしないよ。 ただ、ちょっと買い物に出かけて来るだけさ。」
けれどもそうは言っても『置いてけ堀』を喰わされそうなのが判ってか、妙にせがむ眼差して見つめてきやがる、このオレも育ての親から独り立ちしてからと言うものは魔獣や魔物、或いはゴブリン等の敵性亜人等を討伐をしてきたがこんなのには滅法弱い事が判って来た、それを判ってなのか最近ヴァヌスのヤツはその手を使ってくる。
そんな“情”に“
ただ―――これが後から考えると痛恨事だった…そう思うしかなかった。
その前に少しオレの経験を話すとしよう、まあこれはそん所そこらにいる子息や餓鬼と全く変わらない処ではあるのだが―――そう、子供はいつだってそうだ、親から『してはいけない』と言う事を平気で破る、オレも聞き分けのない餓鬼の時分には育ての
オレとヴァヌスが近くのヒューマンの町に出かけた時、あるトラブルに見舞われた。 その現場をオレは直接的に見たわけではなかったが、オレが視てしまった現場―――と言うのが…
「お、おい―――ありゃ一体何だ…?」 「い、いや―――お前…ありゃどう見ても“魔族”だろ?」 「そ、それよりも何だって“魔族”の幼生体がこの町に?」
“人類族”の―――ヒューマンの特徴を持たない肌の質感と色…頭部には有り得もしない角…一部だけ発達した牙…人類のモノではない魔族特有の瞳、どこからどう見てもの“魔族”の
ただ―――真相は判らない…オレも、オレの用を足す為に
自分が何かで責め立てられている事を肌身で感じているのだろう、ヴァヌスはしきりに何かを話しているかのようにも見えた―――けれども、この町中ではオレですらヴァヌスが何を言っているのか判らない…判らない―――が、オレにはヴァヌスが
『アタシ、シテイナイ、コノコニ キケンセマッテタカラ、スクッテアゲタ…アタシノ、ベレロフォンノヨウニ……』
と、言っている様な気がした。
だからこそ―――
「お、おいベレロフォン、お前どう言うつもりだ?!」 「お前…判っているのか?!そいつはオレ達“人類族”じゃないんだぞ!」 「それだけじゃない、そいつは“魔族”だぞ?オレ達“人類族”と敵対をしている―――」
「ちいぃ…面倒臭ぇ事を言いやがる、だが―――そうだなあ…オレがこう言ったらお前らはどうする?『こいつはオレの娘だ、たった今からそうすることにした』って言ったら?」
『ふざけるな』―――確かどいつかが言っていたような気がする、だがオレは、オレが吐いた言葉の全部が“そうだ”と思うようにした。
そいつは一種の
『何を言っているベレロフォン、お前正気なのか?』
折角オレが決断したってのに、なんでお前はいつもそう―――…「ああ正気も正気だよフレニィカさんよ。 オレは[英雄]だ、『
* * * * * * * * * *
その日私は偶然にも同じ町にいた、そして
恐らく荷台の縄が切れてしまったのだろう―――散乱する木箱の破片に、中身の果物の破片、そして切れた縄が確認された、ただそれだけではなく、そこにはヒューマンの子供と種属的特徴を露わにさせてしまった“魔族”の…あれはいつしかベレロフォンと一緒にいるようになった“魔族”の
その
『アタシ、ナニモヤッテナイ―――アタシガミタトキ、チョウドコノコガヨリカカッテタ クルマノヒモガ キレカカッテルノヲミテ…ソレデアタシ―――アタシヲスクッテクレタ ベレロフォンノヨウニ コノコノコトヲスクイタカッタダケ…ネエ、シンジテ―――シンジテヨ!』
悲痛なまでに訴えかける
「ちいぃ…面倒臭ぇ事を言いやがる。 だが―――そうだなあ…オレがこう言ったらお前らはどうする?『こいつはオレの娘だ、たった今からそうすることにした』って言ったら?」
半端者の私では言えそうもない事を、軽々と言ってのけれる―――そう言えば、お前は元からその様な存在だったよな…あの時私を
この時[勇者]が出てきて[英雄]を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます