第6話 二人目の来客

 椅子に座るヒナギクさんの向かいに二人の来客が座っている。いつもの来客と対照的に痩せた眼鏡をかけた人が眼鏡を上げて言う。

「ご紹介して頂きました通り、ゴショガワラヒナギク様のカウンセラーを務めさせて頂く、ザイゼンと申します。今日は引継ということなので、前任のハセガワの仕事を見学したいと思います。よろしくお願いいたします。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「じゃあ、いつも通り始めるわね。まずは、体調の変化の確認から。夜はよく眠れてますか?」

「はい。」

一通りの業務を終えて、ヒナギクさんはいつものように紅茶を用意する。

「いつもありがとうね。」

「いえいえ。お世話になっていますから。もう会えなくなるのが寂しいです。」

「私も寂しいわ。そうだ。ヒナギクさんに渡したいものがあるの。」

ハセガワさんは、紙袋から包みを取り出してヒナギクさんに渡す。ヒナギクさんはそれを受け取って言う。

「わあ。開けていいですか?」

「開けてちょうだい。」

ヒナギクさんが包みを開けると、中から一体のロボットが出てくる。

「わあ。かっこいい。」

「ごめんなさいねえ。うちは子供が男の子だったから、こういうものをあげたくなっちゃうの。」

「私は物が動くのを想像するのが好きなんです。それぞれに名前を呼び合って生きていたらいいな、と思って名前を付けるんです。」

「それは良かったわ。この子はぜんまい式だから巻くと動くのよ。」

「じゃあ、この子は“ゼンマイ”と名付けます。」

「いいわねえ。ザイゼンさんもそう思うでしょ?」

「そうですね。」

その時、僕の脳裏に声が聞こえる。

(・・・ここは、どこだ?)

(あなたは、僕が見えますか?)

(・・・だれだ!?)

(僕は猫のぬいぐるみのソラです。)

(ソファーの上の君か。はじめまして。おらはゼンマイ。)

(よろしくお願いします。)

三人は椅子から立ち上がって、玄関に向かう。

「それじゃあ、ヒナギクさん、元気でね。」

「ハセガワさんもお元気で。お世話になりました。」

「また来るからね。ザイゼンさんが来るから心配ないわ。」

「はい。ザイゼンさんよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いいたします。では失礼します。」

ヒナギクさんは、ゼンマイさんに挨拶する。

「私はヒナギク。よろしくね。」

(なんて、綺麗な人だ・・・)

僕は、新しい出会いを嬉しく思った。

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