第4話 幸せを運ぶ花
(苦しい・・・)
僕は、物干し竿に洗濯ばさみで固定されている。お腹が押さえつけられて苦しい。見えるのは地面だけ。開いた窓から話し声が聞こえる。
「どれも美味しいわあ。」
「それは良かったです。」
「それにしても無事で良かった。」
「ご心配おかけして申し訳ありませんでした。」
「それはいいの。但し、一つだけいいかしら。無理はしないこと。これだけは守ってちょうだい。」
「わかりました。今後気をつけます。」
「それを聞いて安心したわ。じゃあ、残りを頂きましょう」
「どうぞ」
「本当に美味しいわあ。それにしてもあのぬいぐるみ、あなたが作ったの?」
「はい。ソラっていいます。」
「いい名前ね。今日の空は晴れてるからよく乾くわよ。」
「はい。太陽の光を浴びて気持ちいいと思います。」
「あなたも元気でいてね。あなたが元気でいたら私も元気になるんだから。この花、デイジーの花言葉は平和、それから希望でしょ。」
「ありがとうございます。」
僕の背中は、太陽の光が当たってじんわりと温かくなってきて、僕は寝そうなほど気持ちよくなっていた。その時、僕の脳裏に声が響いた。
(おうい、そこの猫、いや、猫のぬいぐるみや)
(・・・シッカリさん?)
(シッカリという名前ではない。わしは、ニュートンじゃ)
(ニュートン、難しい名前ですね。)
(まあ、のう。これは、昔、ヒナギクという子の祖母がわしに付けた名前じゃ。)
(ヒナギクさんのおばあちゃん・・・。)
(もう今ごろは空の上で守っておるはずじゃ。確かマフユと言ったか。わしはこの名前を気に入っておる。何せそのお陰でわしは命を持ったのじゃから。あんたにも名前があるのじゃろう?)
(はい。ソラっていいます。)
(いい名前じゃのう。大切にするといい。空からの太陽の光を浴びるのはわし、好きなんじゃ。何せわしリンゴの樹じゃから。)
(僕も好きです。)
(そうか。じゃあ、一緒に日向ぼっこといこう。)
僕は、喜びに満ち溢れていた。
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