第2話 二人目の友達

 名前を与えられたことで僕は誕生した。同じように名前を与えられて命を持つ者が誕生した。

「毎日働いてくれてありがとう。しっかり仕事をこなしてくれて助かるわ。君にも名前をつけてあげる。そうだなぁ…しっかり者だから“シッカリ”さんね。ちょっとそのまま過ぎたかな?」

ヒナギクさんは、少し笑いながら、洗濯機のスイッチを押す。洗濯機は、いつものように力強く仕事を開始する。

「よし。ちょっと買い物に行ってくるから留守番よろしくね、ミィちゃん」

ヒナギクさんは、買い物袋を持って出かけて行った。僕は、ソファーに座りながら、洗濯機が回る動きを眺める。僕はのんびりしながら、何か動くものを眺めるのが好きだ。その時、僕の脳裏に声が聞こえる。気のせいかと思って気にしないふりをする。別にふりをしてもしなくても同じことだけれど。

(おい。そこの猫。いや、猫のぬいぐるみか。聞こえたら返事をしろ。)

(・・・)

(おい。聞こえてるだろ。お前も俺と同じで命を持つ者じゃないのか?)

(・・・そうですが。あなたは、僕が見えてますか?)

(ああ。だから、話しかけてる。)

(どうして僕が命を持つ者だと分かったんですか?)

(さっき、彼女が呼びかけてただろ。)

(それは、ヒナギクさんの飼い猫です。)

(あれ?そうなのか。俺の位置だと彼女がお前を見て名前を呼んだように見えたからよ。)

(そうでしたか。)

(お前、名前は?)

(ソラです。どこまでも澄んでいる目だからそう名付けてくれたんです。)

(そりゃ良かった。はは)

(何で笑うんですか?)

(いや、嬉しそうに言うからよ。俺はシッカリ。よろしくな。)

(こちらこそよろしくお願いします。)

(おう。それより、ソラ、こっち見過ぎだぞ。)

(動けないんで仕方ないです。)

(あ、そう)

ヒナギクさんが帰ってくるまでしばらく気まずい時間が流れた。でも、僕は友達が出来た事を嬉しく思った。

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