第11話 説明出来タラ恋ジャナイ

 その人が僕の感想を読んでから呟いたことは、とても丁寧な感想を貰えた、と嬉しい気持ちを伝える内容のものであり。その人は絵文字を交えてそう呟いていた。そういえば。その人にはこれまで活動が同じサイト、最初に出会ったサイトの方では何度か感想の返事を貰っていて。その人は綺麗で上手な文章を書くわりにはそういったコメント欄では絵文字を毎回使っていて。僕が感じていたこと。ああ、絵文字で返すんだ…、という感情。初めて意識する。この絵文字の意味はあるのだろうか、あるならその意味はなんだろうか、と。ツイッターでも絵文字をよく使っていることに気付く。そういう人なのかなあ。その人を異性として意識し始めてからはそのことが気になった。後は自分の気持ちにも。まずはその人の絵文字のこと。その人のツイッターの方を見るようになってもう一つのことに気付く。え?とか、おい、とか。その人は自分の気持ちを呟いた後にお決まりのツッコミを自分に入れるクセがある。その人の本音っぽい呟きには必ず最後に自分へのツッコミの言葉が。そうすることで呟きを軽いものにしているのだろうか。でも呟きたいから呟く。そして照れ隠しにツッコミ。文章という舞台では決してそういう顔を見せないくせに。そうなんだよなあ、なんだかんだいっても女の人だもん。小説家になりたいと強く思い続けてきたのだろうが、その夢に何度裏切られてきたのだろうが、その人は一人の女性なのだ。そう呟くってことはリアルではその愚痴に似た気持ちとか、誰かに聞いて欲しいこととか、ツイッターで呟くしかないのだろう。そして僕の気持ちの変化。とにかく自問自答の日々が続く。自分を客観的に見られない迷い。常識ってなんだろう?僕はその人の顔も知らない。名前も知らない。いや、名前なんかどうだっていい。恋をするって、相手の内面に惚れるとか、見た目に惚れるとかあるけど。まずは大前提として、相手の外見を知っている、があって。それが当たり前であって。一目惚れって言葉があるように。まだ見ぬ相手に恋をするっておかしくない?じゃあそんなに相手のことが気になってさあ、実際に会いましょうってなってさあ、見た目が気に入らなかったらどうなの?当たり前、常識が僕を問い詰める。僕は書き手だからそういった、キレイゴトを抜かす奴の心にある汚い部分を見抜くことが好きで。人間は結局金であり、見た目であり、若さとか、学歴がいいとか。優しさだとか安心するだとか、心の問題は後から付いてくるものであり。ロマンスの神様は、顔も知らない、綺麗で上手な文章を書く人に、帰りは送らせてと言うのだろうか。現実は、性格良ければいいは大嘘であり。でも、でも。大きな玉ねぎの下で会うと約束した二人はペンフレンドだろ。顔は…、写真を送って貰ったのかあ。定期入れに入れてるもんなあ。でも、送られてきた写真が友達の写真だって可能性もあるはずで。そしてそれも男の方は織り込み済みであって。きっと写真とは違う人が武道館に現れたとして。そんなの問題じゃないとその人の手を強く握ったと思う。そんなことを考えては自分の気持ちを擁護したりして。自分で自分がおかしいと思うようになり。そんな時、僕はこんな言葉を使う。


 説明出来たら恋じゃない


 これは僕の言葉ではないと思う。僕の気持ちが導いた表現だけど。ネットで検索してみる。誰かが言ったことだろう、と思いながら。でもヒットしない。嘘。そうなの?ツイッターでエゴサもしてみる。ツイッターって言葉を調べる時にとても便利であって。思いついた下らないギャグとか、いい表現とか、エゴサすれば大体分かる。多くの人がそれを呟いていたらそれは誰でも思いつくありきたりなことであって。僕は今の気持ちを表したその言葉をエゴサしてみる。これまた信じられないけれど、そう呟いている人はいない。恋って単純に言えばそういうもんじゃないのかなあ。そしてエゴサについて。とうとう、僕は、その人のツイッターのアカウントを、日々見ることだけではなく、過去にどんなことを呟いているのかエゴサをするようになってしまい。この頃の僕には自分を正当化する、擁護してくれる自分の存在はいなくなってしまい。やってることはもはやストーカーと同じだろ、と後ろめたい気持ちでいっぱいの僕の心。かろうじて自分の中で自分の行為を納得させること。それは、別に鍵のかかっていないアカウントのツイートを見る分にはいいんじゃないの?と、とぼけたりして。それでももう一つの本能が僕の中に一つのルールを作る、それを守らせる。


 あの人のDMを汚したくはない


 その人は物語を書く仕事を募集するためにDMを開放していて。僕の気持ちを誰にも気付かれずにその人へ送ることは簡単であり。でも、それはやっちゃいけないと思う。その人は一途な気持ち、書く仕事がしたい、自分の小説が世に出て欲しい、その一心でDMを開放しているわけであり。変な出会いの言葉が飛び交うツイッターのDM機能のためにそうしているはずがなくて。いやいや、僕はこれだけその人のことを思っているんだと考える自分に対して、お前は何様だ、と呆れたりして。でも、そういう意味でその人のDMを汚したくないと思ったのは正直な僕の気持ちであり。本当に今の僕は中学生のような恋をしていると思う。そういえば昔の僕は学生時代、中学の時も、高校の時も、一人の女性のことを思い続けた。拗らせるのが得意なんだろう。

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