第7話 切磋琢磨ヲ知ル。懺悔ノ値打チモナイ世界
ここで少し振り返ってみる。僕はネット小説の世界で素晴らしい書き手との出会いをしてきた。そんなに多くはいないけど。最初に僕のことを見つけてくれた暮れさん。あの人はすごい。自分の作品を毎日更新しながら他の人の作品も片っ端から読む。そして褒める。絶賛する。僕は暮れさんが商業の世界からお声が掛からないことが不思議でならなかった。書くことのスランプも知らない、人気もすごい、異世界ファンタジーがメインだけど純文っぽいものも書く。エロ要素も含んでいるけど。他にもたかされさん。天才だと思った。最初に何故か手にしたたかされさんの作品。読んだときに衝撃を受けた。バーナードショーがふざけたような文章を書く。バーナードショーは文豪だ。でもたかされさんは自分の作品をすぐに非公開にしてしまう。作品のPVが自分にしか見えない方のネット小説投稿サイトではアンチによく絡まれていて。たかされは書けないくせに言うことだけは一人前。そんなクソ絡みを目にしては、凡人にはたかされさんの文才は分からないよ、と、冷めた気持ちで凡人たちを眺めてみたり。たかされさんは僕の作品によくアドバイスをくれたりする。何度も校正したつもりで上げた作品にもたかされさんの誤字脱字報告はくる。それはよく作品を読んでくれている証であり。そんなたかされさんも自分の現状にもがいていて。暗中模索。光が見えない。そんなたかされさんの口癖は、小説書くのやめる、と、低賃金、と、へい!であり。他にも独特の書き方をされるじゅんなまさんとか。ついでにトイレも済ませておこう。センス。理由のない必然。ハンドルも文章も遊びの部分が本当に大事であり。くじらさんは丁寧に綴る文章が芸術的であり。こう書いていると僕がすごいと思う書き手って男性の方が多い。女性は本当に他にパッと頭に浮かんでこない。ここに上げた書き手の人たちは共通して文字の読めない、本の読めない僕に作品を読ませることが出来ていて。それだけでものすごいことだと思っている。どんなに読書が苦手な人だろうとその人たちの作品は読んでもらえるとも思う。だって先が気になるから僕は読んだのだから。しっかりと物語を書けているのだ。ここでも言っておく。僕はその書き手の人たちを性別で見たことはない。いいな、と思ったら男性だった。それだけ。食わず嫌いなのかもしれないけれど。だったらその人みたいに今風じゃない重い扉をこじ開けるような作品を書いてみればいい。あの国生さゆりさんだってネット小説投稿サイトに自分の作品を発表し。感想欄で性別とか、国生さゆりという名前とか、元アイドルってフィルターを通して評価されていて。僕は意地悪だから、だったらその有名な名前を隠して活動を始めるべきなのでは?と思ったり。僕はそういう裏口入学的なのが嫌いであり。芸人が書いた、とか、アイドルが書いた、とか、ミュージシャンが書いた、とか。紙の応募で千以上の作品が送られてきて。大賞を選んで本人と連絡を取ったら人気のある俳優だったとか。素性を伏せて実力で受賞を勝ち取ったとか。でも大賞の賞金はいらないとか。そういうのが一体どれだけの書き手の筆を折ってきたのだろうとか。その人の作品に半年ぐらいおきにコメントを送る。読むのは短編限定。長編は読むのに時間がかかるから。自分が書く時間を考えるといくらその人の作品だろうと長編は読めない。僕がもっとスラスラと文字が、本が読めたらまた違っていたのだろう。でもそうだと僕はこんなに書けないと思う。バランスが大事であり。なにかを得るとなにかを失う。そういうもんだと思っていて。僕が長年かけて培ってきた書き手としてのバランス。それは文字が、本が読めないことで保たれているのかもしれないから。僕は文章を書く時に難しい漢字を使わない。そして中学生なら読める、を意識している。だから難しい慣用句も使わない。読んでいる途中で辞書をひかせたり、グーグル先生に聞かせたりしないようにを心掛ける。それをさせるのは書き手のエゴだと思っている。言葉って本当に面白いものであり。難しい漢字を使わなくてもものすごい輝きを放たせることは出来る。これは本当に一部の人だけが知っていることだと思う。そしてその人はそういう言葉の輝かせ方を知っていて。だから僕のアンテナがその人を感知したんだと思う。
本は、その扉が開かれていない時、どうしていると思う?
これがその人の書く物語。この言葉は他の人には絶対に書けないと思う。だから僕はその人が気になるのだ。
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