第5話 書クヲ妬ム

 ネット小説の世界では『他の書き手』との交流が大事となってくる。それは自主企画の数の多さ、需要の多さが物語っている。いわゆる「読み合い」というものだ。どんなにいい作品を書こうと誰かに読んでもらわないとその作品はいわゆる「埋もれた名作」となるわけで。名作かどうかは別としてもなにかしらきっかけがないと確実に「埋もれる」。だから他の多くの書き手さんはSNSで宣伝をする。そしてSNSでも人付き合いが大事になってくる。自分の書いた作品をSNSで宣伝する。ツイッターの固定ツイに張り付けておく。影響力のある人と仲良くなってRTしてもらう。もっと仲良くなって作品を読んでもらって、〇〇さんのこの作品を応援しました、とツイートしてもらう。でもそういうのって意味あるの?とたまに思う。何故なら僕はそういうツイートをしないから。アクティビティを見れば分かるから。エンゲージメント0、詳細のクリック0、新しいフォロワー0、プロフィールへのアクセス0(たまに1)。人間心理で、どこの馬の骨とも分からない奴の作品なんか読んでやるか、となるのが簡単に想像できる。だって僕が同じように考えるから。読み専が圧倒的に多い、僕が一か月半で破門になったネット小説投稿サイトを利用している人たちが、読み専が多いにも関わらずツイッターで宣伝しているのを見ては、そんなことしなくても君たちは読んでもらえるだろ、とか思ってしまう。迎合したくない僕は創作アカウントを持ってない。そもそも創作アカウントってなんだ?そしてネット小説の世界で見る『書き手の性別』だ。今はペンネームに書き手の誰もが凝った名前を使っており。僕もだけど。パッと見で読めないペンネームも多いけど性別が分からないペンネームも多いと思う。でもネット小説の世界でもSNSの世界でも『女性』は『男性』にちやほやされてると思う。


 とても美しい書き出しですね。続きが気になります


 この物語が今の季節にお勧めです。是非読んでみましょう


 『女性』の書き手が、おはようございます、と呟くとたくさんの「いいね」がついて、たくさんのファンらしき書き手が、おはようございます、とリプを送る。


 ファン?読み専?書き手?


 星を送る。レビューを送る。PVをつける。応援する。


 でも僕が気になっているその人は明らかに『女性』だけど星も送られてない。レビューも送られてない。PVもほとんどついてない。応援コメントもほとんど書かれてない。僕には分かる。ていうか他の人でも分かると思う。その人は誰にも媚びることをしなかったのだ。少なくとも僕も迎合したくないとの主張を態度で示してきた。自分のルールで決めてある。他人の作品と出会うのはトップページを開いて目に入ったタイトルを見て気になったものだけ、と。そして僕がトップページを開くのは自分の作品を更新して、新着にちゃんと掲載されているかどうかを確認する時だけ、と。そこで気になった作品は一話を読んでみる。自分の中で興味がわけばその作品をフォローする。そして僕は文字が読めない。本が読めない。そんな僕が時間を掛けてでも読んでみようと思ってフォローした作品の中でページをめくらされたら。それはもう僕の中で立派な名作だと思う。読み進めて、いいな、と少しでも感じたら星を送る。星のみの評価はしない。レビューを必ず書く。人の作品にレビューを書くことはとても緊張する。何故ならばその人の素晴らしい作品を自分のレビューなんかで汚したくないからであり。応援のコメントも読んでいる作品には送るようにしている。その人の作品に僕は星を送った。当然である。文字が読めない僕に、本が読めない僕に、作品を手に取らせ、そして読ませたのだからだ。そしてしばらくしてから気付く。その人から評価を返されたり、あなたの作品も読みました、とか、応援コメントも一つも来ていない。


 僕はそのことでその人のことをさらに一目置くようになった。読んでくれた『から』、評価してくれた『から』、応援してくれた『から』。そういうのが一切ない。書き手とはそうあるべきだと思っているから。媚びずに迎合しない。僕の姿勢にその人は似ている。だから他の人には読んでもらえないのだと思う。でもその人の書く文章、物語はすごい。僕に返すようなことはこれからもして欲しくないし、それをした時に僕はその人にがっかりすると思う。キャッチコピーに溢れる言葉。


 〇〇万PV感謝


 祝書籍化


 祝コミカライズ


 その人がそんな安売りをするようなら僕は最初から気にも留めていなかったと思う。

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