第3話 <参考> カリスマ・リーダーと、実力派リーダー

「B級映画の社会学 韓国映画の激情 V.2.1」

 「第4話 ザ・メニュー(2022年製作/米)」の主人公2人。

  https://kakuyomu.jp/works/16817330655182699315

「ザ・メニュー」というこの映画には、2人のリーダーが登場します。

〇 カリスマ・シェフ

この島、このレストランの天皇的存在です。

映画では、具体的に彼の何が優れているのか、という説明は一切ありません。

登場した時から既にカリスマ(天皇)なのです。

「アダムが耕し、イブが紡いだ時、誰が領主だったのか」

  「王侯諸侯、なんぞ種あらん」

  「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」

  という近代民主主義精神には一切答えていません。

  とにかく彼は「カリスマ」なので、誰も彼に逆らうことはできない、という物語の設定になっています。

権威(肩書きや偽の名声)によって人々をリードするという、良くないリーダーの一つのタイプです。

〇 売春婦

  聞こえの良くない呼称ですが、要は「自分の身体を使って汗水流して現実を見ることができる人間」の象徴です。

  その意味では、トラックのドライバーでも、肉体労働者でも、或いは大学の教授だって、自分の学歴という権威に頼らず、刻苦勉励・生涯学習して自分を磨き、現実の知性と指導法で己の存在感をしっかりと作り上げている人間も、その範疇に入ります。

「リーダーとはなにか 中国編」「第4話 滴水之恩 湧泉相報」における、トラック・ドライバー謝さんのような「自分が自分のリーダーとなることができる人」。

自分で真の自分を引っ張り上げて、自分本来の生き方ができる人。

自分が正しく生きているから、周りの人間がついてくる・慕ってくる。大学日本拳法ブログにおいて、自己の存在を明確にしてきた人たちです。

  人間という生き物が、見栄や体裁、偽善や虚飾に塗れて生きる者がほとんど(99%)である中、欲望を剥き出しにした性世界の中で、人々の赤裸裸な生態(まさに、裸の人間たち)を見てきたこの女性だけが、冷静な目で現実を見、自分の頭で物事を考え・行動できる人間( → リーダー)であった、ということなのです。

〇 カリスマ(偽のリーダーに)支配される島と、そこにあるレストラン

 この映画では、孤島にあるカリスマ・シェフが経営する、世界的に有名なレストランに11名のセレブ・有名映画俳優・大金持ちの投資家たちが招待されます。

  彼らは一人を除き、全員がカリスマ・シェフ(権威)を尊崇し、次々と出される様々な「恐怖という料理」によって、平常心を失わされ自分を見失い、シェフ対する(狂気染みた)服従の度合いは、どんどんエスカレートしていきます。

シェフの権威とは、常識から考えればとんでもないことを強要させる「権威」なのですが、「恐怖」という強力な料理によって、「茹で蛙(鍋の水温を少しずつ上げていくと、抵抗なく茹で上がる)」の如く、全員がこの権威に盲従し、深みに嵌っていく。

100年前、「天皇の軍隊」による中国侵略から始まった「大東亜戦争」と同じです。


〇 カリスマ・リーダーと実力派リーダーの対決

この映画の最後で、カリスマ・リーダーと「自分を見失わずに行動できる・自分で自分をリードできる」女性が対決し、カリスマ・リーダーの化けの皮が剥がされます。カリスマとは具体的な能力ではなく、宗教染みた幻影に過ぎない、ということが実証されるのです。

この女性は、気取った顔をした大企業の経営者や政治家・医者といった上級国民から様々な変態プレーを依頼されるという生活を通じて、人間の本性・浅ましさを熟知しています。

だから、そんじょそこらの「カリスマ」だの「専門家」だの「天皇」が何を言おうと、世界的に権威あるレストランのしきたりがどうであろうと、自分の内なるリーダー性という強い信念に引っ張られた自分という正しい人間の価値観に合わなければ、ハッキリと外部の似非(偽物)権威を拒否し、カリスマを無視することができる。

その結果、この孤島で繰り広げられる仮想現実(狂気)に惑わされ・巻き込まれることなく、現実の惨事から救われることになるのです。

招待客へのフルコースの始まりから、シェフが「パン !」と両手で打ち鳴らすたびに、「ドキッ !」とさせられていたお客たち。

  しかし、最後に「パン !」と打ち鳴らしたのは、この女性でした。

そして、仮想現実のドツボに嵌まって夢遊病患者のように自分を見失っているシェフや料理人・お客全員の注目の中で、彼女は「ふざけんじゃねえよ、あたいの食べたいのは高級クイジーンではなくて、チーズバーガーなんだよ!」と啖呵を切ります。

それまでのシェフの「パン!」は脅しでしたが、彼女の「パン !」は覚醒でした。シェフを含め、その場の全ての人間の魂を目覚めさせたのです。

しかし、残念ながら他のお客たちは「パン!」の一瞬だけ目を開きましたが、そのまま永久に目覚めることはありませんでした。

これは、現代社会に於ける恐ろしい暗示でもあるのです。

私たちは政府や警察から、耳にたこができるほど「覚醒剤禁止」なんて言葉を聞かされていますが、それはこの映画の趣旨からすると、全く逆の意味を持っているのです。

政府や警察は、大衆・国民に覚醒して欲しくない。

  「覚醒剤禁止」の真の意味は「国民の覚醒禁止」なのです。

政府や警察の脅し(〇〇が危険、××を警戒しろ、怪しい人に注意、〇〇詐欺に騙される、等々)に心を脅かされ、国民は夢遊病患者のようにして、永久に彼らの言う通りに生き、彼らの決めた時に死ななければならない。

〇 この映画が示唆する重要な意味

2023年4月現在、世界中がこのレストランのような状況(一部の支配階級とその手先の警察を中心とした公務員たちによって、精神的に押し潰され隷属化していく。

  「手を消毒しろ」「マスクをしろ」「人と距離を開けろ」「話すな」といった、コロナのフルコース料理。

  さらには、「地球温暖化」「食糧危機」「台湾海峡危機」「第三次世界大戦の危機」といった「恐怖の料理」が、際限の無いかのようにして繰り出されてくる。


  そんな「ネズミの集団自殺」化世界ではありますが、一部の国々では「シェフ一味」に対する抵抗運動が始まりつつあります。特に、フランスのように自分たちで王侯・貴族を倒して民主主義を手に入れた国では、この映画に於ける「女性」のように、現実を見て自分をコントロールできる(覚醒した)人間が増えているようです。

しかし、世界でたった一人(国)だけ、シェフという天皇(ハーメルンの笛吹き)に従って消え去ろうとしている民族(国家)がある。

    そう、この映画における「孤島のレストラン」とは、国民を誤った道へ導く偽リーダーの存在という問題以上に、国民一人一人が自分をコントロールするリーダー性を失うという超大問題を抱えて迷走する日本列島のことなのです。

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