第9話 良く晴れた日は結婚日和

「うっ……はぁぁぁぁっ」


 妙な声出る原因は、必要のないコルセットを装着しているせいです。


「少し、我慢してくださいね」

「必要がないくらい細いですけれど」

「お式には必要ですので」


「ふっ……はぁい……」


 分かっています、分かっています。


 皆様も笑いをこらえてらっしゃる以上、私もコルセットごとき我慢すべきですよね。


 でも声が出ちゃう。骨に響くんだもの。


「お姉さま、頑張って~」

「綺麗になるのには我慢も必要よ」


 ロザリーとお母さまの無責任な応援を受けながら、頑張ってウエディングドレスを着る私。


 これも経験。


 作家としての取材の一環よぉ~、と、思わねばやっていられない。


 白い結婚なんだからさぁ。サクッとサインだけ済ませて終わろうよォ、サクッとさぁ~。


 と、いうのが本音である。 


 だが、そうは問屋が卸さなかったのです。


 くそバカ大男の言い分によると、


『契約結婚だから。契約の中に結婚式への参加は、含まれているから』


 とのことです。


 が。がががっ。


 侯爵家の結婚式が、こんなに大変だと思わなかったんだよー。


 こちとら由緒正しき貧乏伯爵家の令嬢なんだよぉ~。


 私なんて、イマドキ珍しい勤労令嬢なんだよぉ~。


 こんなに金をかけて盛大にやるのが普通とか、その前提がなかったんだよぉぉぉっ。


『えっ? 結婚式はするでしょ? 社交上、必要だよね?』


 とか言って誤魔化すんじゃないっ。


 くそバカ大男のトーマス・ニコルソン侯爵令息さまを何度か殴ってみたが、


『ちょっと……やめて……くすぐったい……』


 とか言われましたよ。


 マッチョにとっては、私如きの繰り出すへなちょこパンチなど、くすぐってるのと同じなようです。


 ……かぁぁぁっ、ムカつくー!


 そんな怒りのパワーを力に変えて、なんとか結婚式の難局を乗り切ってみたいと思います。

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