第17話 謁見3

「数年後に世界がリセットされるだって……?」



 ナイジェルの口から語られた未来は、衝撃的なものだった。



 まさかこんなにも早く、リセットの危機が迫っているとは……



「ラルフ君の心を読んで納得したよ。僕の見た世界が消滅する未来は、神によるリセットが原因だったんだってね」



 ナイジェルは神妙な面持ちで語った。



 しかしリセットの原因はなんだ……?



 やはりゲネシス教が絡んでいるのか……?



「ナイジェル、リセットの原因はなんだと思う?俺が神から直接聞いたのは、人間が戦争や環境破壊などを行なって進化のルートから外れたらリセットをしているという内容だったんだが……」



「それならやっぱり、戦争や環境破壊が大きな原因だと思うよ。実を言うと『千里眼〈サイトビジョン〉』では、他にも帝国による侵略戦争だったり、各国の文明の発展による環境破壊などの未来も見えていたんだ」



 帝国の侵略に各国の環境破壊か……



「ちなみに、ゲネシス教も原因の一つに含まれると思うか?」



「うん、というか原因の大元だね。帝国の侵略も、環境破壊もゲネシス教が絡んでいるのは間違いない。それに、この王城にもゲネシス教の人間が潜んでいる確率は高いと僕は思っているよ」



 やはりここでゲネシス教が繋がってくるか……



 それにしても、ナイジェルがゲネシス教についてここまで把握しているとは。



 さすがは第二王子といったところか。



 ついでにここらで、ナイジェルとゲネシス教の繋がりについても探りを入れてみるか。



「ところで、なんでゲネシス教についてそこまで把握しているんだ?」



「ゲネシス教については王都でも話題になっているからね。それにここ最近、王国内でゲネシス教によるものと思われる事件が更に多発しているよね?僕はそれが奴らの策略だとしか思えないんだ。大衆の目をそちらに向けている間に、何かを企んでいるんじゃないかってね」



 その考えはなかったな……



 事件の多くが撹乱目的なのだとしたら、奴らの狙いはなんなんだ……?



「事実として、王都の兵士達が各地の対応に見舞われているんだよ。結果として、王城の警備はかなり手薄になっているんだ」



「つまり奴らの狙いは王城にあるって事か……?」



「うん、というか狙いは恐らく僕だね」



「なんだって?」



 ゲネシス教がナイジェルを狙っている?



 一体なんのために……



「ご存知の通り、僕は使徒であり『千里眼〈サイトビジョン〉』のスキルを持っている。奴らの目的のために、この力が必要もしくは邪魔なんだと思うよ」



「なるほど、だとしたら超ピンチだな」



「うん、そんな時に君が来たって訳だ」



 ナイジェルの表情が神妙な面持ちから少しほぐれる。



 そして少し微笑みながら、ナイジェルは続けた。

 


「ラルフ君、君の目的に協力するよ。世界の仕組みを知ってしまった以上、僕も黙ってはいられない。それにどうせ一緒に戦うなら、面白い方と組みたいからね」



「ナイジェル……ありがとう」



 ナイジェルは、ゲネシス教と繋がっていなかった。



 俺はホッと胸を撫で下ろす。

 


「まぁ、精一杯僕をゲネシス教から守ってくれよなっ」



「なっ!お前も一緒に戦え!」



 こうして俺とナイジェルは、神を殺すという目的を果たすための仲間となった。



「よし、それじゃあ今後の動きを確認しよう」



 俺とナイジェルは早速、今後の動きを話し合う事にした。



「当面の間は、引き続きリセットの原因を一つずつ排除する事を優先しよう。そして同時に他の使徒への接触も続けていく、これでどうだ?」



「うん、当面はそれでいいと思うよ」



「よし、決まりだな」



 俺たちは立ち上がり、手を取り合う。



「これからよろしく頼む」



「うん、こちらこそ」



 ナイジェルとの謁見も無事終わり、自分の目的とスティーブンスからの依頼も果たした。



 全てが上手くいった俺は、上機嫌でニア達の元へ戻ろうと思っていた。



 だがその時だった。



「大変です!王城に侵入者です!」



 突如、一人の兵士がボロボロの姿でナイジェルの部屋ヘ飛び込んできた。



「なに!?今の状況は!?」



 突然のことに驚きながらも、ナイジェルは状況を兵士に確認する。



「敵の数は二名!侵入経路は不明!すでに王城の警備兵が数名殺されています!」



「なんだと……」



 ナイジェルは、苦虫を潰したように顔を歪める。



 だが、俺は何かがおかしいと感じていた。



「なぁ、お前さっきの門番の兵士だよな?なんで門番のお前が、わざわざここまで報告に来たんだ?」



 俺は疑問に思った事を兵士に問いかける。



「それは自分以外の兵が全滅したからだ!自分が報告に行かなくてはナイジェル殿下が危険だろう!」



「だがそれなら普通、第二王子ではなくまず王に報告しないか?」



 ナイジェルは、確かにといった様子で兵士を見つめだした。



「それにお前の鎧、とても生き残れるような傷の付き方じゃない。その血の量も不自然だ」



 その門番の兵士の鎧には、全身を何か鋭利な刃物で何度も切り刻まれたような跡がついていて、千切れかけている部分もあった。



 それに千切れかけた鎧の部分からは、かなりの量の血が垂れている。

 


「なんとか運良くここまで報告に来れたんだ!さっきから何なんだお前は!?一大事なんだぞ!?」



 門番の兵士は、この一大事にふざけるなと大声をあげた。



「ナイジェル、千里眼〈サイトビジョン〉を使ってこいつの心を読んでみろ」



「もう使ってるよ、ラルフ君」



 ナイジェルは既に『千里眼〈サイトビジョン〉』を使って門番の兵士の心を読んでいた。



 そして、その結果を俺に告げた。



「ラルフ君、侵入者は彼だ」

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