第6話 悪と正義が共存する方法
放課後、三人は最寄りのコンビニで待ち合わせをした。
あれから日光が地を照らすことは無いが、白い雲が日光を含んでいるため本を読むには不自由ない明るさであった。
これからセギーマンがある週刊マンガを買って一緒に読む。
「おせーよ、芳雄!」
和正が叫ぶ。
「悪い、お母さんに怒られてさ」
走ってきながら芳雄が言う。
「なんで怒られたの?」
と虎太郎が聞いた。
「実は俺が萌恵の髪引っ張って殴りかかったの、麻野がお母さんにチクったみたいでよー」
芳雄がしょんぼりしながら言った。
「はは、それは大変だったね。」
虎太郎が同情して言った。
「だろう?というかあれ、萌恵の態度も悪かったよな」
「確かに。普通に「ごめん、私の席使ってるから空けられない」って言えばよかったのにな」
和正も同情した。
「だよなー。まあ、そんなことより早く読もうぜ!」
芳雄を先頭に三人はコンビニに入った。そして週刊マンガをそれぞれ一冊ずつ買う。
コンビニを出ると雲行きは徐々に怪しくなっていて今にも雨が降りそうだった。
それでも本を読むには不自由ない明るさであった。
そのまま近くの公園に行き、そこで一緒に読んだ。
秘密結社のビルの前で幹部とセギーマンが攻防を繰り広げる。
「なあ、私に話してくれないか。いったい私たちがワールゾーの人々に何をしたっていうんだ!」
セギーマンがすかさずミラクルショットガンを撃つ。
幹部は手からのビームで弾をはじきながら答える。
「私たちは互いに腹を割って話し合おうとした。だがお前ら人間は私たちを頑なに拒絶した。「異世界からの移民なんて受け入れられない。もし受け入れれば我々の文明は消滅する」ってな!」
幹部は最後にセギーマンの心臓めがけてビームを放った。
「…くっ!」
セギーマンはすぐにバリアで防いだ。しかし力が強く後ろに押し返されてしまう。
体勢を崩したセギーマンは空中で踏ん張り何とか体勢を整えようとした。
しかし、身体は破壊されたビルの残骸に打ち付けられてしまう。
「「「頑張れセギーマン!」」」
三人は同時に叫んだ。
「お前ら人間はそうやって異世界の人間に厳しくする。受け入れてくれても何もしないと約束したのにだ!お前らが激しく抵抗するなら我らは…」
幹部は手の平に膨大なエネルギーを貯めて最大になったときこう言い放った。
「お前ら人類を滅ぼしてやる!」
ドゴオオオッという地鳴りと共にセギーマンが打ち付けられたビルの残骸が爆発した。
しばらく沈黙がそこに続いた。
「………ても……」
「ああ!?」
「……拒絶…されて、も…もっと……もっと…話し合おうって…言えばよかったじゃないか…!!!!」
セギーマンは間一髪助かった。
セギーマンはヒーロースーツから元の姿に戻っていた。しかし、胸の中心でエンブレムが光る。”それ”がセギーマンを守ってくれたのだ。
「お前は言ったのか!?…突然神に水に沈められたと…故郷が無くなってしまったと…故郷が戻るまでしばらくここにいさせてほしいと…理解してくれるまで何度も!…何っ度も訴えたか!?」
この時虎太郎は思い出した。
正義と悪に関して二人に疑問を投げかけた時。
例え共感してくれなくとも理解してほしいと何度も分かりやすく言葉を変えて訴えた。
セギーマンが言うように何度も正義と悪について二人に疑問を投げた。
もし、訴えていなかったらきっとこの二人はこの話を結末が分かるまでただの漫画として楽しんでいたかもしれない。
正義とは何か、悪とは何か。
こんなに長く考えながら読まなかったかもしれない。
三人がいるベンチの頭上の屋根に雨が打ち付け始めた。
それでも三人の耳には全く入らなかった。
セギーマンは続けた。
「いいか、ここには正義も悪も実在しない。我々は川と同じだ。我々は同じ方向に流れる水流同士が手を取り合ってできているんだ。そうすると世の中には流れる方向が違う川がいくつも存在することに気付く。その二つの川は永遠に交われないのか、いや交わることはできる!」
セギーマンは変身しながら幹部を睨み、そして続ける。
「互いが何度も川の源泉にある思いの原石をぶつけ、丸まった石を前に投げて水流を作る。そして納得のいく意見が出た時二つの川の合流地点で手を結ぶ。すると川の上空には虹がかかるんだ!」
そして徐々にスピードをあげて近付く。
「幹部、あなたがやっている行為は、少しの水しか交わしていないのに、互いの川が一つにならないからと、相手の川を埋め立てようとしているのと同じだぞ!」
そして、セギーマンは片足で空へ飛び体勢を整えた。
「川を埋め立て消すことは、すなわち相手の心を傷付け個性を奪うこと!
そんな乱暴がまかり通ることは私が決して許さない!」
セギーマンはミラクルショットガンとミラクルジャスティス剣、そして胸のエンブレムを空に掲げた。
「天よ、悪事の制裁を私に…!」
三種の神器は光に包まれやがて一つの弓矢へと変わった。
「奥義!ジャスティスレインボーアロー、シュート!」
セギーマンが放った虹色の矢が幹部に突き刺さった。
そして幹部は一人の好青年へと姿を変え力尽きる様に落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます