第3話 悪も正義も
授業中疑問を整理した虎太郎はもう一度芳雄たちに聞いてみることにした。
今度は三人でジャングルジムにもたれた。虎太郎が話を切り出す。
「ねえ、あのさ。セギーマンの話だけど───」
虎太郎は整理した通りに順序立てて話した。
それでも芳雄たちはあまりまともに取り合ってはくれなかった。
「なあ、虎太郎。大人である作者がセギーマンは正義のヒーロー、ワールゾーが悪って決めてるんだから、子供の俺らが悪も正義も考える必要なんてないじゃないか。マンガは純粋に楽しんで読もうぜ」
「そこだよ」
「「は?」」
虎太郎はもう信じてくれなくてもよくなってきた。確かに作者が決めた世界を、読者の、ましてや学生の自分たちが突っ込む必要なんてない。自分たちはただ与えられた世界観を純粋に楽しむべきなのかもしれないと思い始めていた。
だが自分が芳雄たちの言い分を理解したように、また自分の言い分も理解してほしいと思った。
「確かに芳雄が言うように僕たちは設定された世界を楽しむべきだと思う。その設定に突っ込んではいけないと思う。でもさ、ワールゾーの人たちは安全な世界で元の生活がしたかっただけなんだよ。これのどこに悪い要素があるのさ。僕はワールゾーの人たちは悪くないと思うんだ。ただ、僕たちが」
すると突然虎太郎の後頭部に何かがぶつかって、次の瞬間目の前には地面が迫っていた。
「あ、わぁりい。ぶつかっちまったわ」
三人は同時に何かが飛んできた方へ目をやる。
そこには体格の大きな見慣れない顔の男子が三人いた。
「おい、人にボール当てておいて謝罪もないのかよ」
芳雄は眉を吊り上げ怒鳴った。
「だからわりいっつっただろ?」
「もっと申し訳ないんだけど、そこどいてくんね?
というか中休みの最初、そこ取ってたんだけど」
芳雄は態度で瞬時に察した。
この様子は恐らく───”先輩”だと。
その瞬間怯みそうになったがぐっとこらえて負けじと答えた。
「いいえ、俺たち中休みの初めからずっとここにいましたけど”先輩”の顔は見てません。」
芳雄の返答で和正と虎太郎も理解した。
「まあどうでもいいけど、”先輩”がそこ使いたいって言ってるんだから”後輩”は早くどっか行ってくんないかなあ?」
さすがの二人もカチンと来た。
虎太郎は立ち上がって言った。
「このジャングルジムはみんなの物ですよ。使いたいのなら”先輩””後輩”関係なく「僕たちも使っていいですか」って聞くべきじゃないですか?」
すると”先輩”三人は先ほど虎太郎に投げたと思われるボールを真ん中にいた芳雄の頭上めがけて投げつけた。
「ガタガタうるっせえなあ!さっさと退けって言ってんだよ!」
三人はこれ以上取り合っても無駄だと思った。
悔しいが黙ってその場を離れるしかなかった。
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